この記事で解決することは、油温・水温を適温に保ちエンジンを壊さない温度管理だ。結論は冷やし過ぎず指定温度で安定させること。サーキットと冬場の注意点も解説する。
◆エンジンを壊さない温度管理の基本
クルマを壊さないために気をつけるべき重要なこととして、エンジンオイルとエンジン冷却水の温度管理がある。オーバーヒートはエンジンに多大なダメージを与え、最悪の場合は致命的なトラブルにつながる。
一方で寒い時期は逆にオーバークールになりやすい。エンジンオイルの温度もクーラントの温度も高すぎてはダメだが、低すぎてもエンジンにダメージを与えかねない。つまり「温度を下げる」より「適温を維持する」ことが目的になる。
◆サーキット走行で注意すべきオーバーヒート
サーキット走行などで特に気をつけたいのはオーバーヒートだ。サーキット走行で高回転を多用すると多大な熱が発生し、クーラントやエンジンオイルが熱くなりすぎる。するとエンジンが熱を持ちすぎて、エンジンシリンダーが歪むなど致命的なダメージを負うことがある。
そのためサーキットを走る場合は、オイルクーラーを取り付けたり大容量ラジエーターを装着したりして温度管理を行うケースが多い。ただし、冷やせば良いというものでもない。重要なのは「適温で安定しているか」だ。
◆適温の目安とクルマ世代の違い
現代のクルマであれば、概ね最適な水温は90~100度の間、エンジンオイルの温度は90~110度位が目安になる。20年以上前のクルマとなると、概ねそのどちらも10度低く設計されていることが多く、水温は80~90度の間、油温も80~100度の間が適温とされる傾向がある。
ここで起きがちなのが、現代のクルマにひと昔前の常識を持ち込んでしまうことだ。
◆ローテンプサーモが逆効果になる理由
現在のクルマであれば、水温が90度くらいで安定するのが一般的だが、その水温を80度で安定させようとして大容量ラジエーターとローテンプサーモを取り付ける人もいる。
ローテンプサーモ(サーモスタット)は、冷却水がある程度の温度になったときにラジエーターへ流すための切り替えバルブで、動作温度を低くしたチューニングパーツのこと。一般的には90度前後でサーモスタットが開き、水温はその付近で上下しながら安定する。
ラジエーター容量が十分である場合、水温はサーモスタットの開く温度で安定する。そこでローテンプサーモスタットを導入すると、その低い温度で水温が安定する。
ただし近年のクルマは、90度前後で水温を安定させようとエンジンコンピュータ側で補正が入ることがある。意図的に水温が上がるように燃料噴射量や点火タイミングなどがコントロールされ、具体的にはパワーが絞られたり燃費が悪くなったりする。良かれと思ってローテンプサーモスタットを導入し安定水温を下げてしまうと、常に低水温補正が入り、クルマのパフォーマンスを低下させることがあるのだ。
◆油温を下げすぎると乳化が進む
エンジンオイルの場合、現代のクルマであれば100度を超えても特に問題はないとされる。むしろエンジン内部は温度が上がったり下がったりする過程で水分が発生し、その水分がエンジンオイルに混ざって撹拌されると乳化しやすい。
このとき定期的に油温が100度を超えれば水分は蒸発し、その水分は気体になり抜けていく。ところが良かれと思ってオイルクーラー装着などで油温を下げすぎると、油温が上がりにくくなり、含まれた水分とオイルが混ざって乳化してしまい、エンジンを十分に保護できなくなることがある。
この「油温が上がらない状態」は、自動車メーカーが定めるシビアコンディションにも含まれることが多い。項目のひとつに短時間の走行を繰り返すといった条件があるのは、油温が上がらず乳化しやすく、エンジンにダメージを与える可能性があるため、早めのオイル交換を促す狙いがある。実際、1日5分程度の通勤を繰り返している車両では、数千kmでオイルが乳化し、そのたびに交換しているという事例もある。
◆失敗しないチェックポイント
エンジンオイルもクーラントも適温を保つことが大切だ。どちらもサーモスタットが装備されていることが多く、この開弁温度がポイントになる。ここを理解せずに冷却系を変更すると、逆にエンジンにダメージを与えたりパフォーマンスを低下させたりすることがある。
・まずは「その車種の標準の狙い温度」を把握する(世代で適温が違う)
・サーキット対策は「冷却強化」だけでなく「適温で安定するか」を見る
・冬場や短距離メインでは「冷えすぎ」に注意し、油温が上がる運用も意識する
・ローテンプサーモやオイルクーラーは“効く条件”と“逆効果の条件”を分けて考える




