ポルシェエンジニアリング、AIで電動車のパワートランジスタ損失を大幅改善

電気自動車のインバーターにおける損失は、トランジスタのインテリジェントな駆動によって大幅に低減可能
  • 電気自動車のインバーターにおける損失は、トランジスタのインテリジェントな駆動によって大幅に低減可能

ポルシェエンジニアリングは、AI支援によるインテリジェントなソフトスイッチングにより、パワートランジスタのスイッチング損失を最大95%削減することに成功したと発表した。シミュレーションでこの新手法を検証中だ。

電気自動車で重要な要素の一つは走行距離であり、駆動系の効率向上策は欠かせない。特にインバータはパワートランジスタのスイッチング時に生じる損失が無視できず、これを低減する技術が求められている。インバータで発生する損失には物理特性によるライン損失と、トランジスタのオン・オフ切り替え時のスイッチング損失がある。後者は電圧と電流が重なる瞬間のエネルギー損失であり、走行距離を減少させる要因となっている。

ポルシェエンジニアリングのソフトウェア機能・開発担当シニアマネージャー、フォルカー・レーバー氏は「スイッチング回数が多いほど損失が増えるが、高いスイッチング周波数は交流の品質向上に寄与する」と説明し、これらを両立させるため「軟スイッチング」技術が活用されていることを示した。

軟スイッチングにはゼロ電流スイッチング(ZCS)とゼロ電圧スイッチング(ZVS)があり、ポルシェエンジニアリングは特にZVSを用いている。ZVSは負荷が誘導性の電動機に適し、シリコンカーバイドや窒化ガリウムトランジスタでの損失低減、電磁干渉低減、高周波数時の効率向上に優れている。

同社スペシャリストエンジニアのソハイブ・トアティ氏によると、パワートランジスタ周辺にトランジスタ、コイル、コンデンサから成る補助共振切換極(ARCP)回路を配置し、AIを活用してこのARCPの最適な制御をリアルタイムで実行している。

従来、軟スイッチングは変動する運転条件下での適用が困難だったが、AIが負荷、トルク、温度などの複数の測定値から最適な切り替えタイミングを予測し、損失を最小化した制御を可能にした。これにより70~95%ものスイッチング損失削減を達成し、走行距離を一ケタ台後半で伸ばせる。

加えて熱発生が減るため冷却負荷が軽減され、部品の小型化や基板レイアウトの簡素化にもつながっている。インバータの容積は20~50%減少する見込みだ。さらに、硬スイッチングによるトランジスタへの負荷も低減され、耐用寿命の向上も期待される。

ポルシェエンジニアリングはこのAI制御軟スイッチングのソフトウェア開発を進めており、完成後はOEMやティア1サプライヤー向けにプラグイン感覚で既存コントロールユニットに組み込めるソリューションとして提供予定。ハードウェア改変のコストも抑えられ、モデル更新や新規開発時の採用が見込まれている。

《森脇稔》

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