「可愛い」とは何なのか? スズキ『アルトラパン』CMFデザイナーが語る「可愛いの多様化」に応える色とデザイン

スズキ商品企画本部四輪デザイン部エクステリア課の長嶋みのりさん
  • スズキ商品企画本部四輪デザイン部エクステリア課の長嶋みのりさん
  • スズキ アルトラパン(左)とアルトラパンLC(右)
  • スズキ アルトラパン
  • スズキ アルトラパン
  • スズキ アルトラパン
  • スズキ アルトラパン
  • スズキ アルトラパン
  • スズキ アルトラパンLC

スズキは『アルトラパン(以下ラパン)』と『アルトラパンLC(以下LC)』をマイナーチェンジした。パワートレインの刷新や安全装備の充実など、変更は多岐に渡るが、最も特徴的なのはデザインの変更だ。

CMF(カラー・マテリアル・フィニッシュ)担当デザイナーにこだわりのポイントについて語ってもらった。キーワードはストレートに「可愛い」だという。

◆エフォートレスエモとハンサムトラッドスタイル

ラパン、LCのどちらもこだわりを持つユーザーが購入しているが、その思いが強いのはLCだ。さらに「可愛い」というワードがより強く意識されているという。今回のマイナーチェンジでそれぞれどういうテーマでデザインされたのか。スズキ商品企画本部四輪デザイン部エクステリア課の長嶋みのりさんによると、「ラパンは“エフォートレスエモ”というテーマでデザインしています。肩肘張らないという意味と、エモーショナルな雰囲気を掛け合わせてデザインコーディネートしています。ちょっとキラッとしたような、日常にきらめきを与えられるようなデザインを目指しました」という。

一方のLCは、「ハンサムトラッドスタイルというテーマです。最近女性が男性のジャケットを身に着けるなど、ジェンダーレスな雰囲気が“可愛い”と思われています。そういったちょっとこだわりを持ったお客様に向けてデザインしました」と説明する。

◆「可愛い」とは何なのか

そのデザインコンセプトに至る前に、開発責任者からはどのようなオーダーがあったのか。長嶋さんは、「いまの若い人たちが思う可愛いとは何なのか、そういうことを調査してデザインしてほしいというオーダーでした。今回は私も含めて若い男女のデザイナーが多かったので、割と自由にデザインすることができました」とのこと。

そして、「可愛いというキーワードは、ここ10年くらいで多様化してきています。格好良いものも可愛いということが増えてきているんですね。そこでいまの人たちが可愛いと思うものが何なのかから調査をスタートしました。SNSはもちろん、実際に東京のアパレルショップを回ったり、化粧品のパッケージを見たりして、そういったファッションテイストなところからデザインのインスピレーションを得てデザインしています」と話す。

長嶋さん自らが思う可愛いとは、「心がときめくようなものが可愛いなのかなと私は考えています」と述べ、「その思いをこのクルマ達に込めました」と語る。実は長嶋さんもLCのオーナーで、「このクルマを見た瞬間に、すごく可愛いと心が動きました。ですからお客様にもそう思ってもらえるデザインができたら良いなという思いで、今回も開発に臨みました」と述べる。

また長嶋さんは、多岐にわたる可愛いの解釈について、「昔の可愛いは多分人からどう思われたいかを意識したもの、モテファッションとかラブリーなものが軸だったんですね。そこから多様性の時代になって、一人一人の可愛いと感じるものが変わってきていることを考えると、人からどう思われるかよりも、自分がどうしたら心地よく可愛いく過ごせるかに軸が移り、そこが大切になっているのでしょう」と分析した。

◆心が動くカラー

ではその可愛いを具体的にどうデザインに落とし込んだのか。ひとつはボディカラーだ。

「ルーセントベージュパールメタリックというカラーを新色で入れました。先代ではフォーンベージュメタリックという近いカラーがありすごく人気でしたが、発売から10年経っていることから、この人気色をアップデートしたものです。今回はぐっと明度を落とすことで、男女問わず選べるようにし、光を当てたときに光の粒がキラキラと輝くような質感にしました。マイカの量などを調整して、白く、綺麗に輝くようなベージュになっています。そういったところもいまの人たちの心が動くような可愛いが表現できているでしょう」

また、新たにフォギーブルーパールメタリックを採用。スズキには、「オフブルーメタリックというカラーがありますが、それに比べるとぐっと明度が落ちて、大人っぽい印象を与えています。ちょっと色気のあるような雰囲気を意識して開発しましたので、LCのコンセプト、ハンサムトラッドにも合う車体色です。光が当たった時にちょっと黄みの粒子がふわっと見えるようなカラーです」と話す。

2トーンのボディーカラーでは、LCはソフトベージュルーフとアーバンブラウンルーフの2種類のルーフ色を、ラパンはソフトベージュルーフのみをラインナップ。長嶋さんは、「(LCは)ソフトベージュで合わせると少し甘い雰囲気になる一方で、アーバンブラウンと合わせるとちょっとビターで渋くて、おしゃれな雰囲気になりますのでルーフカラーの遊び心を感じてもらえれば」とのこと。

そしてもうひとつ、LCでは、「バックドアのエンブレムがワインレッドからキャメル色に変更しているんですが、そのカラーがホーンパッドの加飾とお揃いになっているんです」と内外でのコーディネートにもこだわったそうだ。

長嶋さん個人としてのお勧めカラーは、ラパンLCは「ルーセントベージュとアーバンブラウンルーフ」、ラパンは「フォギーブルーメタリックとソフトベージュルーフ」の組み合わせだという。

「自分でLCを買うときもアーバンブラウンルーフにすごく惹かれましたし、このルーフカラーはLCにしかありません。そしてルーセントベージュは光の粒がキラキラと輝くようなすごく綺麗なベージュです。ラパンは、オフブルーもすごくラパンに似合うカラーで素敵でしたが、もう少し落ち着いたカラーの方が私は好きで可愛いなと思うので、この組み合わせがお勧めですね」と語った。


《内田俊一》

内田俊一

内田俊一(うちだしゅんいち) 日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かしデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。また、クラシックカーの分野も得意としている。保有車は車検切れのルノー25バカラとルノー10。

+ 続きを読む

特集