ステアリングを握るときには必ず音楽を聴いているという音楽好きなドライバーに向けて、その音楽をより良い音で聴くための「イン・カー・リスニング学」をレクチャーしている当連載。今回は、「インナーバッフル」について説明していく。
ドアスピーカーを取り付けるには「インナーバッフル」が絶対的に必要!
さて、前回の記事にて解説したとおり、カー用のスピーカーはクルマに取り付けて初めてスピーカーとして完成する。つまり、取り付け作業はすなわち「スピーカーを作る作業」だと言って良い。
それを踏まえて今回からは、「スピーカーを作る作業」ではどのようなことが行われるのかを説明していく。
まずドアスピーカーを取り付ける際には基本的に、「インナーバッフル」と呼ばれるパーツが別途必要となる。さて、これは何なのかというと…。
結論から入ろう。これはつまり、ドアスピーカーの土台となるパーツだ。ちなみに廉価なスピーカーの中にはドアスピーカーの土台となる「スペーサー」を同梱しているものもあるが、そうであっても別途「インナーバッフル」を用意した方が良い。
では、これが必要となる理由を1つ1つ説明していこう。まず1つ目の理由は、「ドアに開けられているネジ穴の位置が合わない場合が多いから」だ。

「インナーバッフル」を用いれば、さまざまなスピーカーの取り付けが可能に!
というのも、クルマのドア内部の鉄板には純正スピーカーを取り付けるためのネジ穴が開けられているが、その穴の位置は車体メーカーによってさまざまだ。そしてスピーカーのフレームに開けられているネジ穴の位置も製品によってさまざまだ。
結果、ドア内部の鉄板に開けられているネジ穴の位置とスピーカーのフレームに開けられているネジ穴の位置はまず合わない。となると、鉄板にネジ穴を新規に開けなければならなくなる。
でも、ドア内部の鉄板に開けられているネジ穴の位置に合う「インナーバッフル」を用意してこれを装着すれば、「インナーバッフル」の表面のどこででもネジを受けられるようになるのでさまざまなスピーカーを取り付けられる。
そしてこれが必要となる2つ目の理由は、「ドアスピーカーを立ち上げたいから」だ。もしもドアスピーカーを鉄板に直付けするとスピーカーが奥側に位置することとなるので、上から降りて来る窓ガラスとスピーカーが干渉してしまう。しかし「インナーバッフル」を用いれば、その厚みの分スピーカーが手前側に出てくるので窓ガラスとの干渉を避けられる。

「インナーバッフル」を使うとスピーカーの足場が固まり、音が良くなる!
続いてこれが必要となる3つ目の理由を説明しよう。それは、「スピーカーの足場を固められるから」だ。クルマのドア内部の鉄板は金属でできているとはいえ薄いので、ドアスピーカーの磁気回路で発生された動力を振動板に伝えようとするときに足場が緩いがゆえに踏ん張りが効かず、パワーをロスする。結果、情報量の欠落が起こり得る。
しかし「インナーバッフル」を使えば足場が固まり踏ん張りが効き、動力のロスが減るので音が良くなる。
そして4つ目の理由は、「鉄板の共振を抑えられるから」だ。鉄板は薄いがゆえに簡単に共振する。共振すると異音を発しスピーカーの前面から放たれる音を濁す。
でも「インナーバッフル」を用いればある程度共振を抑制できるので、異音の発生が減り音がすっきりするのだ。
今回は以上だ。次回は「インナーバッフル」のいろいろについて解説する。お楽しみに。