試乗車は新型『ゴルフ』の「TDI R-Line」。カタログには“スポーツマインドあふれる多彩な専用装備を施した”とあり、1.5リットルのガソリンターボ(150ps/25.5kgm)にも同一グレードが設定される。
◆歴代ゴルフが守ってきた信念
サイドミラー下の“R”のバッジは、乗車時に横目でニンマリとしながら眺めるためのものだろうが、ドアを開けると目に飛び込んでくるのがヤル気満々の(?)デザインのバケットシート(=オプション設定のレザータイプ)が目に入る。ただし着座感は決して身体が強く拘束されるものではなく、普通に座り、電動で調整を効かせれば、リラックスした姿勢で適切なポジションがとれる。

また新しい12.9インチの大型タッチスクリーンは、これまでの10インチに対して大型化した上、画面上下に各種機能の操作ボタンが配置され、シートヒーターなどがここで調整可能と使いやすい。確かに画面サイズは大きいものの、上端は視界を妨げないギリギリの高さに抑えられている。
一方で後席は、スポーツマインドあふれるクルマといいながらも、そこはゴルフ、実用性を1mmも損なっていない風。着座してみると、やや高めの座面にシートバックが起こされた、歴代ゴルフが守ってきた信念のように完璧な姿勢、ポジションが保たれている。ヒザ前、頭上の空間も十分だ。

十分といえば床板の高さが2段階に変えられるラゲッジスペース(容量は381~1237リットル)も、スッキリとしたトリム形状なので使いやすい。
◆スピードを上げるほどにフラットに
150ps(110kW)/36.7kgm(360Nm)の性能を発揮する2リットルの4気筒インタークーラー付きターボディーゼルは、7速DSGとの組み合わせで、ジワリとも軽やかにもクルマを走らせる。限定的な場面でキャビン側で立つメカ音があるものの、走行中の静粛性は高く、動力性能もソツなく十分なもの。

エコ/コンフォート/スポーツ/カスタムに走行モードが切り換えることも可能だが、モードごとのマナーが極端に変わらず、運転に神経を使わない。XDS(電子制御式ディファレンシャルロック)を備えるため、コーナリングでも安定した姿勢を保ってくれる。
R-Lineはサスペンションも専用設定とのことだが、スピードを上げるほどにフラットな乗り味になり、同乗の我が家のシュンも、まるで乗り慣れた自分の家のクルマのように安心した表情でいた。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★★
島崎七生人|AJAJ会員/モータージャーナリスト
1958年・東京生まれ。大学卒業後、編集制作会社に9年余勤務。雑誌・単行本の編集/執筆/撮影を経験後、1991年よりフリーランスとして活動を開始。以来自動車専門誌ほか、ウェブなどで執筆活動を展開、現在に至る。便宜上ジャーナリストを名乗るも、一般ユーザーの視点でクルマと接し、レポートするスタンスをとっている。