世界のメーカーが苦悩するEVのフロアの高さ
これまで市販されたEVを何台か試乗してきたが、フロアの高さにはいつも違和感を抱いていた。エンジン車やハイブリッド車ではあまり気にしたことがなかったのだが、EVになると急にフロアが高くなっていたからだ。そして、フロアが高いことによるデメリットも感じた。座面の高さが不足して乗車姿勢が崩れ、疲れやすくなることや、乗車時の足の出し入れも、高齢者や子供などにとってはストレスになり得る。
特にリアシートは厳しい。足を前に伸ばすことができないので、酷い車両だと太ももの裏側が座面から浮いてしまい、膝を抱えるような姿勢を強いられる。こうなると、体重がお尻に集中し腰骨が後傾する。ちょっとした横揺れで体を支えることができず、30分も乗れば我慢の限界というクルマもあった。
ということで、上海モーターショー取材にあたっての個人的なテーマとして、各社の展示車両のリアシートに片っ端から座って、フロアの高さを体感してみようと考えていた。その結果をここで報告したい。
なぜフロアが高くなるのか
報告の前に、なぜフロアが高くなるのかと言うと、もちろんフロア下にバッテリーケースを抱えているからだ。その影響で、フロアから座面までの高さを確保できず、ヒップポイントが低く乗車姿勢が崩れてしまう。
フロアが上がった分車高を上げると、前面投影面積が大きくなって空気抵抗が増え、EVの弱点である高速電費が悪化し、航続距離が減ってしまう。
ということで、低いヒップポイントに合わせて寝そべらせる姿勢にしているのだが、全長を長く取るためにある程度のボディサイズが必要だし、そもそも寝そべった姿勢はあまり快適とは言えない。本来は、フロアと座面とシートバックにきちんと体重を分散させたアップライトな乗車姿勢が疲れにくく快適だ。
驚くほどフロアが低いBYD『シーガル』
ということで、コンパクトカーであればあるほどEVのパッケージは難しくなっていくので、BYD『シーガル』のリアシートはさぞ辛かろうと予想しながら乗り込んだのだが、まずフロアが望外に低いことに驚き、そして乗車姿勢の自然なこと、足元のゆとり、このパッケージを形にできることにBYDの強さを感じた。