オリジナルスプリングやサスペンションを自社で開発&製造し、提供している「TANABE(タナベ)」。新たな提案としてSUV専用ローダウンスプリング「SUSTEC X-LIMIT SPRING(サステック クロスリミット スプリング)」がラインアップされた。
車高を下げるとクルマとしてのカッコよさは増すが、そこには乗り心地が悪化するという問題がつきまとう。その相反する条件を如何に掛け合わせ、ハイレベルな性能を持たせるかを追求し、限界まで攻めたローダウンスタイルに乗り心地をクロスさせるという、難解な”クロス”に挑んだのがこのSUSTEC X-LIMIT SPRINGなのだ。
アゲもサゲもラインナップするタナベだからこその提案

SUVのカスタムというと車高を上げることが多いが、下げるのもまたアリだとタナベでは提案する。「SUVの車高をガッツリと下げてもらうと、カタマリ感のあるカッコよさが得られます。そこでターゲットとするダウン量は20~30mmではなく40~50mm下げるように設計しました」とタナベの林さん。
そこまで下げるとストローク量が減ることによる乗り心地の悪化という問題があるが、ダンパーのストローク幅を制限するバンプストッパーを見直すことで、これを解消。最適な硬さを手に入れるためにショートバンプラバーまで開発したという気合の入れようだ。車種ごとに細かく検証されており、専用ショートバンプあるいは純正バンプカットにより、十分な乗り心地を確保している。

今回はSUSTEC X-LIMIT SPRINGを装着したデモカー(タイヤ:235/55 R19)とノーマル車(タイヤ:225/65 R17)のトヨタ『RAV4』で、ストリート&ワインディングで比較試乗を行った。ちなみにラインアップとしてはRAV4のほか、トヨタ『カローラクロス』、トヨタ『ハリアー』、トヨタ『ライズ』、ダイハツ『ロッキー』、三菱『デリカD:5』などを揃えている。
純正で感じたフラフラ感が抑えられ、ノーマル以上の快適性を実現!

約40mm車高が下がっているということで、ドア開けてシートに座るところからグッと低く感じる。走り出すと重心が下がった安定感があり、全く違和感がない。「これが純正サスです」と言われても疑う余地はない。しなやかに路面を捉えつつ、適度にロールやピッチングは抑えてくれる。
今回の試乗車は19インチのタイヤ&ホイールを装着。比較車両は同じRAV4だが、17インチのタイヤ&ホイールを装着。タイヤの扁平率による差もあるが、適度にSUSTEC X-LIMIT SPRINGによって引き締められたことで、無駄な動きが少なくなったことを実感。

ハンドリングとしてはすごく素直でステアリングに対する反応が良くなっている。ステアリング操作による荷重の変化を素早くスプリングが支えてくれるので、クルマが曲がり始めるまでのレスポンスが良い。
自動車メーカーでは「クルマの乗りやすさ=操作に対するタイムラグの短さ」と定義しているという。ステアリングを切ってワンテンポ遅れるバスやトラックのような車両はなんとも操作しにくい。スポーツカーが人馬一体に感じられるのは、操作に対するレスポンスに優れているから。

今回SUSTEC X-LIMIT SPRINGにすることで操作に対して反応するスピードが早くなる。それはバネレートが高くなり、硬くなるからキビキビ動くのとはまた別のイメージ。バネが沈んでから反発するのが早いから、クルマが俊敏に反応してくれるのだ。これにはそのバネが持つ固有振動数の特性が関係している。
これはバネレートとはまた別の要素で、スプリングの材料や設計によって変わる。バネが沈み込んでから元の長さに戻ろうとする時間は固有振動数によって変わり、沈んでからすぐに反発するスプリングもあれば、ゆったりと反発するスプリングもある。SUSTEC X-LIMIT SPRINGではカドの無い乗り心地でしなやかに動き、それでありながら操作にレスポンスよく反応するスプリングに仕上げてあるのだ。
バンプラバーにこだわるタナベのダウンサスだからこそ得られる“快適性”

ローダウンで問題になるのが大きめの段差を超えた時。車高が下がったことでサスペンションの底付きが起きやすくなる。サスペンションがこれ以上沈み込めないところまでストロークしてしまい、大きな衝撃が車内に伝わってしまうのだ。
タナベのSUSTEC X-LIMIT SPRINGではその対策として、オリジナルのショートバンプラバーをパッケージしている(一部車種は純正バンプラバーをカットして使用)。
バンプラバーは大きくストロークしたときに、それ以上ストロークしないように規制するためのウレタン製のクッション。純正サスペンションにももちろん装着されているが、車高を下げてノーマルよりも深くストロークするようになると、純正バンプラバーは長いのですぐに当たりやすくなる。段差でサスペンションがストロークして、バンプラバーに当たると「底付き」となり、車内にドカンという地面からの不快な衝撃が伝わるのだ。

SUSTEC X-LIMIT SPRINGでは指定値でカットして使う場合もあるが、基本的には車種ごとに専用設計のバンプラバーが付属。専用バンプラバーはショート化されて設計されているが、さらに沈み方の特性をコントロールするためにプラスティック製のバンドを巻いて制御。潰れる時には横方向に膨らむが、それを適度に抑えることで最適な硬さになるようにセッティングが施される。
こうしたきめ細かい開発努力によって、大きめの段差に乗った時にも「ドカン」とは衝撃が来ない。ある程度クルマに詳しい人なら「底付きした?」と思うかもしれないが、一般の方にはいつそこまでストロークしたかわからないレベルまで、その衝撃がコントロールされていることに筆者も驚いた。

今後は車種ラインアップの拡充を行っていくが、SUV専用としてX-LIMITシリーズの車高調の開発も進行中とのことで、さらなる低さや走行性能を実現し、細かなセッティングにも対応できるようになるという。
タナベでは自社開発自社製造で、鋼材も国内調達のものにこだわる。品質や性能が安定した選びぬいた材質の鋼材を冷間成形で巻く。スプリングを高温にせず、常温で巻き上げることで高強度でヘタリに強く、初期反発は穏やかなのに踏ん張りが効くという自動車用スプリングに最適な性能を得ることができる。

それを厳しい検査体制でチェックしながら製造し、表面にはサビや塗装剥がれに強い特殊塗装を行っている。リン酸亜鉛皮膜化成とカチオン電着塗装で下地を作り、さらに塗膜の厚い粉体塗装を重ねることで、融雪剤による塩害にも負けない耐久性の高い塗装に仕上げられている。タナベのスプリングの品質への自信は、5mm以上のヘタリが見られた場合の “永久保証”にも表れている。
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オシャレは足元から。ホイールカスタムで一段上のドレスアップスタイルを実現

足回りパーツが有名なタナベだが、じつはアルミホイールの”SSR”も展開しており、ローダウンスタイルとホイールカスタマイズを提案出来る、日本唯一のメーカーである。新作の「REINER M10R/M10S」はメカニカルなメッシュデザインと光沢のあるリムを組み合わせた2ピース構造。ディスクはスポーティーな造形とコンケイブがもたらす陰影が特徴で、ステップリムの「M10S」はより立体感が強調されるハイブリッドなデザイン。
段差のないフルリバースリムの「M10R」は細いスポークをギリギリまで伸ばすことにより、脚長感が増し、コンケイブ感をさらにアピールする。サイズはM10Rが18/19インチ、M10Sが19/20インチの設定。つまり19インチであれば、RもSも選ぶことができるのだ。さらにディスクのフェイスは落差:13mmのスタンダードと、落差:39.5mmのスーパーコンケイブをラインアップしている。

SSRの2ピースモデルは1mm単位でインセットの指定が可能。最適なインセットでオーダーしたものが国内工場で丁寧に製造されるのだが、最短納期は約1週間、受注生産のオプションメニューでも約2ヵ月と嬉しいところ。
SUVのリフトアップがトレンドの中、“敢えて下げる”スタイルのかっこよさも追求するタナベ。ローダウンのノウハウが充実したメーカーだからこそ、スプリングの交換だけでこれほどのダウン量を実現できたのだろう。ドレスアップの第一歩として、胸を張っておすすめできるアイテムだと断言できる。
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