大基金と出口戦略が奏功…中国半導体政策にみる自動車産業の市場動向と課題

中国のカーボンニュートラル戦略「総循環」

デカップリング政策が影を落とす

半導体技術の出口戦略となるNEV市場

SiCパワー半導体と設計・装置産業の育成に注力

中国半導体産業政策は2014年から

ニーズが期待できる28nm以下の国内製造を強化

中国半導体市場およびそれを支えるNEV市場分析(「第24回 半導体・センサ パッケージング展」)
  • 中国半導体市場およびそれを支えるNEV市場分析(「第24回 半導体・センサ パッケージング展」)
  • 北京富士キメラ総研 姚穎(Yao Ying)氏

成長を続ける半導体産業。各国の支援政策や技術開発の現状など、その動向は様々な業界から関心を集めている。

オートモーティブワールド2023と併催された「第24回 半導体・センサ パッケージング展」において、北京富士キメラ総研 姚穎(Yao Ying)氏による「中国政府における半導体産業への支援および車載向けSiCの搭載動向」と題する講演が行われた。

内容は、中国カーボンニュートラル政策の概要と現状、産業育成の中での半導体への施策について供給面と需要面の整理、中国半導体産業の現状解説など。供給面ではサプライサイドであるファブレス、IDM、ファウンドリに対する支援戦略の違い、需要面ではエネルギー・自動車産業など使う側の支援、出口戦略が語られた。

中国のカーボンニュートラル戦略「総循環」

カーボンニュートラルや脱炭素について、穎氏は「中国政府はグローバルと足並みをそろえる立場をとっている。『総循環』というスローガンのもとエネルギーの非化石燃料シフト、風力・太陽光など再エネの強化、植林活動などを展開している」という。2025年までには再生可能エネルギーの発電コストを化石燃料発電よりも下げるという目標が掲げられている。総循環とは、経済最優先ではなくグリーン化社会、環境配慮型社会経済に産業構造を変えていくことで経済発展および投資チャンスの拡大を図るというもの。

ただし、欧米との違いはカーボンニュートラルへのロードマップだ。「欧米諸国は2030年、2050年をマイルストーンにカーボンニュートラル、温暖化を+2度以内に収めることを目指している。中国はカーボンニュートラルは2060年までとしている」(穎氏)

国内経済の発展はまだ途上という考えから2030年まではCO2排出は上昇させていく。そこをピークとして2030年以降はさまざまな施策効果により急速に脱炭素を進める。

このロードマップを達成するために注力する分野は、まずエネルギーだ。現在の中国CO2排出量の40%を占める発電のグリーン化(太陽光・風力)を進める。次に37%ほどを占める工業用エネルギーの脱炭素化(スマート工場、ゼロエミッション工場)、最後に10%を占めるとされる交通・輸送分野だ。

CAGR20%を超えるがデカップリング政策が影を落とす

中国半導体産業は、世界シェアで16~17%を占めており、ここ数年の間、年22%前後の成長(CAGR)を続けている。2022年は日本円にしておよそ13兆円規模の市場になる。コロナパンデミックの中でも高い成長率を見せているのも特徴だ。ただ、半導体市場は世界的にみても拡大傾向があり、世界の半導体市場のCAGRも20%程度を維持している。

半導体産業は世界中のあらゆる産業が注目し成長している分野だが、穎氏は、2022年までの動向を次のように分析する。

「2022年10月にアメリカ政府が中国市場に大きなインパクトを与えた。バイデン政権による中国デカップリング政策として、中国への輸出規制や米国籍を持つ人や企業による中国支援が規制(ERA:輸出管理規制)された。また中国企業36社が名指しで規制対象に追加された。それ以前も米中では貿易制裁や経済制裁は行われてきたが、今回の規制ではTSMCが米国投資を拡大するなど、半導体市場に直接の影響が出ている」

中国政府はWTOに提訴しながら国内産業保護のため5年間で1兆元規模の半導体支援策を発表(2022年12月)している。

中国半導体産業政策は2014年から

ここ10年、中国半導体産業は5か年計画の中でも重要なポジションにある。政策の源流は2014年6月、国務院による国家集成電路産業発展推進綱要からだ(穎氏)という。当時の国内半導体産業が、技術と市場ニーズが一致しておらず輸入依存等の課題があった。これを解決するためファブレス、IDM、パッケージ、材料など各分野の発展戦略を考えた。これが同年9月の「ビッグファンド(大基金)」につながったとする。


《中尾真二》

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