新型コロナウイルス感染拡大の影響を大きく受け、厳しい状況が続いていたエアライン業界。しかしながら2月2日、日本航空(JAL)ならびに全日本空輸(ANA)を傘下に持つANAホールディングスが発表した2022年4~12月期連結決算では、いずれも最終利益が3年ぶりの黒字となった。
昨年秋に新型コロナウイルスの水際対策が大幅に緩和され、日本にやってくる外国人や国外に渡航する日本人が一気に増えたことが理由だろう。とりわけ前者については記録的な円安も追い風になったはずだ。
◆「ANA SMART TRAVEL」と「ユニバーサルMaaS」
黒字転換となったことで、機材の更新をはじめとする設備投資が進んでいくことが期待されるが、そんな中ANAは、羽田空港第2ターミナルの保安検査場入口上部に掲げている大型デジタルサイネージを2月9日に撤去すると発表した。さらにANAでは、空港に設置している国内線用の自動チェックイン機についても、2023年度に廃止するという。
いずれも今後はスマートフォンアプリの「ANAアプリ」での情報提供や搭乗手続きに移行していくとのことで、オンラインでチェックインできない人向けに有人カウンターは残し、アプリかカウンターかという二択体制に集約していくようだ。これらの変更は2022年5月に発表した、搭乗準備から機内までをスマートフォンなどの携帯端末で完結する新サービスモデル「ANA SMART TRAVEL」の一環である。
このサービスモデルでは、旅行の計画・予約段階では、スマートフォンなどで航空券の予約・購入だけでなく、渡航書類の登録、機内食・機内販売の事前予約などが可能。さらに出発24時間前よりオンラインチェックイン、座席選択・変更、搭乗券発行が簡単に行える。さらに当日は「空港アクセスナビ」が搭乗便までを案内する。
機内ではANAアプリから機内Wi-Fiインターネット接続サービスにアクセス。機内誌や雑誌・新聞も読むことができる。さらに国内線ではニュースやスポーツ番組がリアルタイムで視聴できるコンテンツも用意している。欠航や遅延などの運航情報をタイムリーにスマートフォンに通知する機能もあり、出発時刻や搭乗口の変更など急な変更が生じた際は、ショートメールなどで伝達する。2023年度には、遅延や欠航によるANAからの補償手続きもスマートフォンで可能になる予定だという。
ただしこれらのサービスは2022年になって一斉に始まったものではない。筆者自身、以前からスマートフォンでオンラインチェックインなどは行っており、ショートメールによる搭乗口変更も受け取ったことがある。
MaaSの概念に近い空港アクセスナビについても、2020年3月に導入している。出発地から空港まで、空港から目的地までの経路情報を案内するもので、購入するとマイルが貯まる東京モノレールや京浜急行電鉄の往復チケットをはじめ、空港アクセスの鉄道・バス・タクシー・カーシェアリングのお得なチケットを用意するほか、東京の地下鉄全線乗り放題チケットなどの購入もできる。
これ以外にANAでは、2019年に社内の新サービス提案事業を発展させる形で立ち上げた「ユニバーサルMaaS」もある。