【BYD ATTO 3】装備が充実、補助金の適用額を検証

BYD ATTO 3
  • BYD ATTO 3
  • BYDオートジャパン 東福寺厚樹社長
  • ブレードバッテリー
  • e-Platform 3.0
  • VtoL、VtoHに対応
  • BYD ATTO 3 諸元表
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BYDオートジャパンは12月5日、BYD『ATTO 3(アットスリー)』の価格を440万円 (税込) とし、2023年1月31日より販売開始すると発表した。

果たしてこの440万円という価格は高いのか安いのか。ATTO 3の詳細な性能や機能・装備を見ながら、そして補助金の適用額も予想しながら、徹底的に検証してみよう。

◆気になる衝突安全性能は★5つ

まず、気になる衝突安全性能については、ユーロNCAPで5スター(最高評価)を取得したことが明らかになった。これまで中国国内の基準であるC-NCAPの評価結果はあったものの、今回のユーロNCAPの結果であれば、ある程度定量的に評価できるので、安心感はかなり違うだろう。

次にEVとしての性能を見ていこう。ATTO 3は、BYD独自のブレードバッテリーを搭載したEV専用プラットフォーム「e-Platform 3.0」を採用し、フラットで低い床面を実現したとされる。

この“フロアが低い”ということが、ことのほか重要であることを最近痛感している。筆者が最近試乗したEVはどれもフロアが高く、それによって座面とフロアの適切な高さを得ることができず、膝を抱えるように座らされたり、あるいは足を投げ出す格好を強いられた。

適切な乗車姿勢をとることができず、長時間は乗りたくないと感じるEVがいかに多いことか。そして、EVで床面を低くすることがいかに難しいことなのか、今さらながらに感じている次第だ。(ちなみにフロアが低くて快適だったEVは、日産『サクラ』とテスラ『モデルY』)

その点ATTO 3は、前席・後席ともに違和感のない乗車姿勢を実現している。これはコンパクトで天地の短いブレードバッテリーによるもの、だそうだ。耐久性や信頼性はこれから市場で検証されていくことになるが、ひとまずは適切なフロア高さを実現していることは好ましい点だ。

バッテリー容量は58.56kW、航続距離は485km(WLTC値自社調べ)とのことで、これも額面通りであれば十分な航続距離と電費性能を持っていることになる。

そして充電性能については、急速充電はチャデモ対応で85kWと十分な水準であり、そして普通充電もきっちり6kWに対応している。

BYD ATTO 3(オーストラリア仕様)BYD ATTO 3(オーストラリア仕様)

◆取り回しやすいサイズと最小回転半径

ATTO 3は扱いやすいサイズであることも魅力のひとつだろう。全長は4.5メートルを下回る4455mm、全幅は1875mm、そして最小回転半径もかなり小さい5.35mに収まっている。アラウンドビューモニターも標準装備なので、ショッピングモールの狭い駐車場でも取り回しに困ることはないだろう。

ホイールベースも2720mmと十分な広さを確保しており、フラットなフロアとパノラマサンルーフ(標準装備)のおかげで、特にリアシートの居心地は快適。ドライブではリアが特等席になりそうだ。

同じ価格帯のライバルと比べても、この低いフロアと広い室内の快適さは、ほとんどのライバルを凌駕するはずだ。また少し価格は高いが、VW『ID.4』あたりはライバルになりそうだが、リアシート含めた室内の居住性を実際に座ってみて比較することをおすすめする。

BYD ATTO 3(オーストラリア仕様)BYD ATTO 3(オーストラリア仕様)

◆運転支援機能はフル装備

今回ワングレード展開と言うことで、運転支援機能はこの価格帯のモデルとしては異例なほど充実している。アダプティブクルーズコントロール(ACC)、レーンキープアシスト(LKA)、自動緊急ブレーキ(AEB)の“ADAS三種の神器“は当然として、緊急時車線維持支援(ELK)、BYD E-CALL(事故自動緊急通報装置)、車線変更アシスト(LCA)、リアクロストラフィックブレーキ(RCTB)、ドアオープンワーニング(DOW)、インテリジェントスピードリミットコントロール(ISLC)などなど、他メーカーでは高額なオプション設定になりそうな機能が全部標準装備となる。

これらの機能の実際の性能はまだ試す機会がないが、説明通りに実現されていれば、これは文句なしにありがたい。

また、日常使いで役に立つアラウンドビューモニターやブラインドスポットインフォメーション(斜め後ろの接近車両を検知する機能)も標準装備となる。

BYD ATTO 3(オーストラリア仕様)BYD ATTO 3(オーストラリア仕様)

◆快適装備も十分な内容

エアコンについては、EVの常識になりつつあるヒートポンプエアコンを搭載。シートヒーターは前席のみとなり、ベンチレーションなしというのは少々残念なところだが、これだけの充実装備なら文句は言えないだろう。

室内はLEDのマルチカラーアンビエントライトを標準装備。そしてCarPlay/Android Autoも装備されている。一度使うと手放せない便利な機能だ。

◆補助金の適用額は

ATTO 3は車両から電気を取り出すV2LとV2Hに対応しているため、国の補助金(経済産業省のCEV補助金)が来年も同じ条件で継続されれば、満額の85万円になる見込みであることが明かされた。ATTO 3の納車は来年3月ごろから始まる計画とのことで、適用されるのは令和5年度の補助金となる。詳細については来年度の補助金制度の発表を待ちたい。

そして、地域によって各自治体の補助金が上乗せになる。東京都であればさらに45万円の補助金が支給されるので、合計で130万円戻ってくることになる。つまり、440万円―130万円=310万円(+諸費用)で買える計算だ。

440万円という価格を最初に見た時は、高くはないが安くもない、インパクトに欠ける価格設定だと感じたが、この内容を考えれば十分に競争力はあるというのが本稿の結論だ。

《佐藤耕一》

日本自動車ジャーナリスト協会会員 佐藤耕一

自動車メディアの副編集長として活動したのち、IT企業にて自動車メーカー・サプライヤー向けのビジネス開発を経験し、のち独立。EV・電動車やCASE領域を中心に活動中。日本自動車ジャーナリスト協会会員

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