EVはボトル入りケチャップ? 納期は?…メルセデス・ベンツ日本社長

メルセデスベンツ EQB
  • メルセデスベンツ EQB
  • メルセデス AMG One 市販型プロトタイプ(スクープ写真)
  • メルセデス・ベンツ日本代表取締役社長兼CEOの上野金太郎氏

メルセデス・ベンツ日本はメルセデスベンツ『EQB』を発表するにあたり一部メディアに対し質疑応答を実施。そこでは、メルセデスベンツの日本に対する電動化戦略や、現在の納期問題まで幅広く語られた。

◆いまハイパーカーをつくるのは自動車屋魂があるから

----:電気自動車、EQBの発表会ですが、2017年にコンセプトカーとして発表されたメルセデス『AMG ONE』について伺います。長い年月をかけてようやく実車走行にまでこぎつけましたが、電動化推進の中にあって、AMG ONEのようなハイパーカーは、ブランドにとってどのような貢献や役割があると思われますか。

メルセデス AMG One 市販型プロトタイプ(スクープ写真)メルセデス AMG One 市販型プロトタイプ(スクープ写真)

メルセデス・ベンツ日本代表取締役社長兼CEOの上野金太郎氏(以下敬称略):いま、一般的には内燃機関が主流です。130年以上前にいわゆる自動車の1号車ができてからその歴史は様々な道を通ってきた中で、2017年、私どものF1の技術の粋をAMG ONEというプロジェクトに傾けて、色々紆余曲折ありながら進めてまいりました。最善か無かという会社の“クリード(信条)”に基づいてしっかりとしたオンゴーイングハイパーカー、ロードのハイパーカーを作りたいがために、ちょっと時間がかかってしまいましたが、やっと生産も開始することになりました。

やはりクルマには夢がなくてはいけません。電気で走ればいいとか、速ければいい、安全であればいいとかだけではなく、お客様の心を踊らせるようなクルマ作りをしていかねばなりません。そういった中で、EQBのような電気自動車とともに、“自動車屋魂”として、私どもの培ったノウハウ、技術の粋を集めたクルマ、AMG ONEのようなハイパーカーとしても、自慢できる1台に仕上げて、限定的ではありますがお届けしたいのです。こういったクルマはブランドイメージをけん引する役割や、私どものテクノロジーの証しでもあるのではないかと思っています。

◆EVはケチャップのボトルからいきなりこぼれるように

----:今回のEQBを含めて年内にさらに2車種のEV(『EQS』と『EQE』)を出していくと発表がありました。これは国内外の他のメーカーと比べてもかなり精力的な戦略だと思います。一方で日本のEVの普及率は1%程度です。これだけ精力的にEVを出していく狙い、もしくは日本のEV市場が今後どのように変化していくと考えていますか。

上野:現在日本は1%というEVのシェアですが、特に欧米などでは電気自動車の普及率はとても加速しています。日本は確かに諸外国から比べると遅れてると受け取れるかもしれませんが、これは我慢比べみたいなもの。ケチャップの瓶を振っているとなかなか出ないんですけど、あるときバッと出ることがありますよね。このケチャップボトルエフェクトがあり得るのではないかとヨーロッパでは結構話されています。

日本特有の充電方式や、ボルテージの規制などが足枷になってると私は思っています。ただ、カーボンニュートラルのためには電気自動車という方向性は1つの方法ですので、各社これらに対応しながら、充電設備も増やし進めていくことが大事です。航続を言い訳に買わない、マンションだから買わないなど色々と買わない理由を挙げていても、既に400km、500kmの航続距離が獲得できていますので、買わない言い訳がどんどん消されていっているのが現状です。これに国としてインフラを整備することで、官民一体になってその方向を追求していく。あとはデューデート、その期日がいつかということですが、これは国によって違いますが、若干メーカーが思っているタイミングと、国が思っているタイミングがちょっと前後しているように感じています。この辺が調整できればある日突然、ケチャップボトルから中身がこぼれるようにドバっといくと思います。

◆もうしばらくは続きそうな納期問題

----:納期影響についてお伺いします。現在半導体等々の影響で大変苦しい状況かと思いますが、具体的に現状はどのような感じなのでしょうか。

上野:大変難しい質問ですけども、現在世界情勢不安ということで、例えばウクライナには契約している部品工場などもありますし、さらにロシアによる問題で原材料が入荷できない。さらにそれに起因する様々なコスト高騰というのが続いております。また、中国にしかないレアメタルなどの輸出ができないなど、はっきりいってこんなに多くのファクターが一度にやってきたのは想定外でした。しかし、半導体に関しては徐々にではありますが解消しつつありますが、そのほかの新しい問題が出てきている関係上、半導体以外の例えばゴムのマテリアルをはじめ、多くの部品自体が間に合ってない状況です。

そういったことから通常期であれば1か月半、2か月ぐらいは保てるであろう在庫で進めていましたが、そこを1か月を切る在庫を全国の販売店と在庫を共有しながら、1台1台を大事に販売させていただいている状況です。私どもにとっても1日でも早く解決したいのですが世界情勢や他工場の供給が安定しない限りはまだ当分続くのではないかと思っております。ただ、どうにか輸入車としてで88か月ナンバーワンの座を、大変苦しいですけれど守ることができています。お客様には大変ご迷惑をおかけしてますが、ある程度の納期も含めて説明をしながらお待ちいただいているのが実情です。

メルセデス・ベンツ日本代表取締役社長兼CEOの上野金太郎氏メルセデス・ベンツ日本代表取締役社長兼CEOの上野金太郎氏

《内田俊一》

内田俊一

内田俊一(うちだしゅんいち) 日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かしデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。また、クラシックカーの分野も得意としている。保有車は車検切れのルノー25バカラとルノー10。

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