2000馬力のハイパワーEVを思い描く、ヤマハの『エレクトリックエンジン』開発…名古屋オートモーティブワールド2021

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ヤマハ発動機のハイパーEV向け電動モーターユニット「αlive EE」のイメージ。4基を搭載することで2000馬力の出力が可能となる。
  • ヤマハ発動機のハイパーEV向け電動モーターユニット「αlive EE」のイメージ。4基を搭載することで2000馬力の出力が可能となる。
  • ヤマハ発動機のハイパーEV向け電動モーター(最大出力350kWクラス)の試作品
  • ヤマハ発動機のハイパーEV向け電動モーター(最大出力350kWクラス)の試作品
  • ヤマハ発動機のハイパーEV向け電動モーター(最大出力350kWクラス)の試作品
  • ヤマハ発動機 技術・研究本部 AM開発統括部 AM第2技術部長の原隆氏
  • サウンドデバイス「αlive AD」
  • サウンドデバイス「αlive AD」のシステム構成図
  • 小型モビリティ向けの電動モーター(最大出力50kWクラス)

ヤマハ発動機は電動モーターユニットやパフォーマンスダンパーなど四輪車向け製品や技術を新たに『αlive(アライブ)』ブランドとして立ち上げた。

アライブブランドには現在、電動モーターユニットやパフォーマンスダンパーに加えて、サウンドデバイスなどもラインアップされている。アライブブランドの商材や技術の開発に携わるヤマハ発動機技術・研究本部 AM開発統括部 AM第2技術部長の原隆氏は「モーターを開発している部隊は、ほぼエンジンの設計や開発から切り替わって対応しており、そうした技術を応用している」と明かす。

ヤマハ発動機がエンジンをはじめ車両の開発に携わったトヨタ 2000GTヤマハ発動機がエンジンをはじめ車両の開発に携わったトヨタ 2000GT
ヤマハの四輪車向け事業の歴史は長く、1964年のトヨタ自動車との『2000GT』の共同開発から始まる。以来、トヨタを始め、フォードやボルボなどへエンジン納入の実績があるほか、エンジンサプライヤーとしてF1にも参戦を果たしている。

こうしたこれまでのエンジン開発や生産で培ってきた技術やノウハウが電動モーターに生かされているというわけだ。

小さく、少量生産でスペシャルなモーター

小型モビリティ向けの電動モーター(最大出力50kWクラス)小型モビリティ向けの電動モーター(最大出力50kWクラス)
その具体的な事例について原氏は「まず最大出力50kWの電動モーターの冷却はウォータージャケット構造を持つケースを使っている。エンジンに使われているウォータージャケット構造は、ものすごく複雑な形状のシリンダーブロックやシリンダーヘッドに対して、熱をしっかりと伝えて冷やさなければいけないという機能を果たすために、かなり高いレベルでの実験技術や解析技術が求められる。そうしたノウハウを応用したいというところからケースの造り込みでエンジン技術を最大限使った」と解説する。

当然のことながら二輪のノウハウも生かされている。「我々のモーターの特徴はやはり小さく仕上げるということ。二輪の場合は(四輪と比べ)さらに搭載枠が厳しくなるので、やはり小ささというのは最大のポイントだと思っている。そこにこだわるために鋳造で冷却の経路を複雑にしつつ、それを薄肉で仕上げるという造り方をしている」と原氏は語る。

小型モビリティ向けの電動モーター(最大出力50kWクラス)小型モビリティ向けの電動モーター(最大出力50kWクラス)
またヤマハのモーターならではの特徴として、「生産数量が少なくても、お客様の要望に応じてカスタマイズできるということ」を挙げる。「エンジン開発でもスペシャルなものをこれまでもご提供している。例えば『レクサスLFA』のように限定500台向けのハイパフォーマンスエンジンをトヨタと共同開発して生産もしている。そういうスペシャルで少量のものを得意としているし、もともとヤマハのメイン製品である二輪は多品種少量生産で、そうしたノウハウも生かしている」とも。

エンジン開発の活用に話を戻すと、「最大出力350kWの電動モーターでは油冷を採用した。油冷は非常に冷却能力が高いが、使うのが結構難しい。まんべんなく油をかけて、かけた油はしっかりと回収もしないといけない。そうしたところもエンジン技術にかなり通じるところがあって、そこの部分でもこだわった」とのことだ。

音を聞かせる『エレクトリックエンジン』

ヤマハ発動機のハイパーEV向け電動モーター(最大出力350kWクラス)の試作品ヤマハ発動機のハイパーEV向け電動モーター(最大出力350kWクラス)の試作品
その最大出力350kWの電動モーターユニットは、クルマに4基搭載して各駆動輪を自在に操り2000馬力を発生するハイパワーEV(電気自動車)をイメージして造り上げているという。しかも原氏は「ハイパフォーマンスの領域でも馬力だけ、速さだけといったところは、どのメーカーでもできると思う。ただそこに音を加えて、しっかりと今までと同じ水準のスポーツカーとして認知されるものに仕上げることにヤマハらしさが出せる」と強調する。

というのも「エンジン開発の頃から、パワートレインと音は非常に重要な関係だと考えてきた。エンジンの音造りは『レクサスLFA』からトヨタと一緒にやらせてもらっており、それを発展させたサウンドデバイスを「αlive AD」として今回、アライブブランドに加えた。もちろん単純に音を出すというのではなく、それをいかに気持ち良く自然に聞かせるかというところにも、今までの積み上げの部分が生かされると思っている」からだ。

サウンドデバイス「αlive AD」サウンドデバイス「αlive AD」
また原氏は「車両運動制御、EVならではのドリフトコントロールができないかといった開発もしている。限界性能を追求するというのももちろんあるが、運転して楽しくなる部分をEVでも引き出せないか取り組んでいる」とも。

ヤマハでは、アライブブランドの電動モーターユニットを『エレクトリックエンジン』(αlive EE)と名付けている。原氏は「これは一番こだわった部分」とした上で、「一部、ヨーロッパの国でも電動モーターユニットにエンジンという表現を使っている。やはりモーターというと無機質な感じがする。我々が造り込んできたエンジンから醸し出す世界観みたいなところをモーターでも表現したいので、あえてエンジンという名前を選んだ」と語っていた。

第4回[名古屋]オートモーティブワールドで講演

ヤマハ発動機 技術・研究本部 AM開発統括部 AM第2技術部長の原隆氏ヤマハ発動機 技術・研究本部 AM開発統括部 AM第2技術部長の原隆氏
その原氏は10月27日からポートメッセなごやで開催される第4回名古屋オートモーティブワールドの最終日、10月29日に行われるEV・HV・FCVフォーラム(3)に「エモーショナルパワーユニットの開発」をテーマに登壇する。

原氏は「ヤマハのEVとして表現できることをお話ししたいと思う。また当日はサウンドデバイスのサンプル音や、運動制御の実際の動画も見て頂こうと考えている」と明かした。

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■第4回 [名古屋]オートモーティブワールド
自動運転、EV/HEV、カーエレクトロニクス、コネクティッド・カー、軽量化など、自動車業界における先端テーマの最新技術が一堂に出展する。「展示会はいかなる場合でも予定通り開催することが大原則である」という主催社の考えのもと、徹底したコロナウイルス対策をおこない出展社、来場者の安全を確保し予定通り開催される。

会期:2021年10月27日(水)~29日(金)10:00~18:00 (最終日のみ17:00まで)
会場:ポートメッセなごや
主催:RX Japan株式会社(旧社名:リード エグジビジョン ジャパン)

《小松哲也》

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