新型EVバス、インバーターを極めたメーカーから登場…特殊複合素材で軽量化

九州を拠点とする「EV Motors Japan」(EVMJ)が自社開発のEVマイクロバス「F8シリーズ4ミニバス」の試乗会を開催するというので取材させてもらうことにした。同社のミニバスはどんな特徴があるのだろうか。

参入障壁が低い

一般に商用車とEVの相性はよいとされるが、日本国内ではまだまだの印象がある。都内を走るFCVバスが先行しているが、水素インフラの整備が簡単ではないため、コストやビジネスとしての実用性に課題がある。実験的かつシンボル的な東京都以外では導入ハードルは高いと言わざるを得ない。

そうこうしているうちに、BYDは日本法人を立上げEVバスの日本市場展開を開始している。HW ELECTROは多目的小型EV『ELEMO』の出荷を始めようとしている。日本では、2021年トヨタを中心として日野自動車、いすゞグループ、ダイハツ、スズキがトラック・バス・軽商用車の分野でコンソーシアム(CJP)を立上げた。動きは大手OEMだけではなく、佐川急便とASFは軽ナンバーのラストマイル用トラックを開発した。タジマジャイアンやFOMMは以前からEVトラックを手掛けている。

EVのメリットのひとつは、内燃機関やハイブリッド車より、ファブレスメーカーが成立しやすく参入障壁が低いことだ。今回EVミニバスを公開したEVMJは、HV、EVのインバーター技術に定評がある企業。パワー半導体とその制御技術を生かし、急速充電器、ソーラー発電システム、バッテリーのリユース技術にも通じている。

インバーターで車の性能が決まる

EVの性能を決めるのは一にバッテリーだが、次に重要なのはインバーターの制御技術だ。この制御いかんによって、他が同じ条件でも航続距離や最高速度、過渡性能などが決まる。EVを0-100km/h加速性能に特化させるか、航続距離を優先させるかはインターバーの制御しだいだ。貨物など商用車の場合、トルクやパワーも重要だが、生産財としての性能=電費、航続距離とのバランスが難しい。

同社は、すでに中国EVバス、EV乗用車の多くに自社インバーターを供給している実績がある。中国では、毎年、車種ごとの「Ekg」という指標のランキングを公開している。Ekgは、1トンの重さを100km移動させるのに必要な電力だ(Wh/g・m)。この数値が低いほど電費はよいことになり、航続距離も延びることを意味する。EVMJのインバーターを搭載した車両は、毎年このランキングの上位に入っているという。

公開されたミニバスの仕様は以下のとおりだ。

全長:6.990m
全幅:2.100m
全高:3.050m
車両重量:5.75t
総重量:7.345t
乗車定員:29
バッテリー容量:114kWh
走行距離:230km
最高速度:80km/hEV Motors Japan:新型EVマイクロバスEV Motors Japan:新型EVマイクロバス写真をすべて見る

バッテリーはリアに搭載

バッテリーはCATL製のLFPのパックを、床下ではなくリア部分に搭載する。リアにはモーター(最高出力135kW)とインバーターなど制御ユニットも収められる。最近のバスはバリアフリーで低床またはエアサス等による乗降時の車高調整が求められる。F8シリーズ4もこの機能が搭載され、バッテリーは床ではなくリアアクスル近くになった。

車重を軽くするためボディ素材はスチールではなくFRPをベースとした複合素材によるモノコック構造となっている。フレームは角型パイプを利用し剛性を確保している。

事業者向けに急速充電器を推奨

充電はCHAdeMO 2.0に対応し、750V、120kW出力なら5分で50km分の充電が可能だ。自治体や交通事業者、運送事業者向けなので、充電は外充電を想定していない。一般的な20~50kWのCHAdeMO(1.2)でも充電可能だが、出力が低い分効率が落ちる。そのため、EVMJでは事業所や車庫に、120kWの高出力急速充電器の設置を推奨している。

国内の急速充電器網を整備しているe-Mobility Powerは、高速道路を中心に90kWのCHAdeMOの整備を初めているが、圧倒的に設置数が少なく、最高出力での充電時間に制御がかけられることもある。

急速充電の高出力化は、高性能EVの普及とともに市場ニーズが高まっている。ポルシェはCHAdeMO対応(国内)ながら、90kW、150kWの独自網の整備を進めている。アウディも150kW充電器のディーラー配備計画を発表した。輸入車の多くが、本国では100kW前後の高出力に対応しているが、国内モデルだけCHAdeMO(1.2)に合わせて50kW対応に制限している。各社が正規ディーラーに高出力モデルを整備し出したのは、国内に合わせた低出力充電器では、十分な顧客満足度が得られないと判断しているからだろう。

EVJMが事業者向けに高出力充電器の設置を勧めるのは時代の流れであり、運行計画が決まっている商用車にとっても合理的である。

なお、試乗は台風接近の中行われたが、EVバスは大雨の中、じつに軽快に加速していく。路面のうねりやギャップはサスが拾うものの、走行中はまさに電車感覚だった。撮影時にはリアハッチを全開にしていたが、当然漏電や感電はなくその後の走行にも問題はなかった。水没も想定して設計されているEVなので当然といえば当然だ。

《中尾真二》
【画像】新型EVバス、インバーターを極めたメーカーから登場…特殊複合素材で軽量化(9枚)

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