ルマン24時間優勝! F.C.C. TSR Honda France 藤井正和総監督コロナ禍の想い「来年は鈴鹿で戦いたい」

.C.C. TSR Honda France 藤井正和総監督
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2019-2020 FIM世界耐久選手権(EWC)第3戦ルマン24時間で2度目となる優勝を果たし、年間ランキング3位を獲得したF.C.C. TSR Honda Franceの取材会が11月7日、東京のHonda青山本社でおこなわれた。

ルマン24時間耐久レースでの優勝トロフィとTSR-EWC耐久仕様『CBR1000RR-R Fireblade』が展示された会場には、藤井総監督が登場。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響により、全4戦で争われた2019-2020 FIM世界耐久選手権(EWC)を振り返った。

●実績のないマシン、後悔はしていない開幕戦

まずは、トップ走行中のエンジンブローによるリタイアとなった開幕戦については、「ホンダとの話で、開幕戦から新しいバイクになったんです。そのため、実績のないオートバイだったので、蓋を開けてみないとどうなるか分からない状況での投入でした」と明かす。

「しかし、前年までの物と比べても馬力もあるし、色々な制御系もかなりアップデートされていたため、決勝レースを引っ張るぐらいのイメージで走っていたのですが、残念ながらエンジンブロー。バルブスプリングが折れました」

「バルブが折れて、ピストンに穴が開き、コンロッドが折れて全損。修復不可能な段階になってしまったので、開幕戦を落とす結果となりました。後悔はしていません」

続いて、残り1時間での痛恨の転倒によりポジションを落とすも、素早い復旧作業により13番手まで追い上げ、チェッカーを受けたセパン8時間耐久レースで見せたチーム力について、語った。

「我々のチーム構成としては、日本を母体に会社を経営しているこちら側の集団と、1年ごとの契約で働いてくれるスペイン人とフランス人を中心とした傭兵部隊のような集団で戦っています」

「そして私は今バルセロナに住んでいて、向こうに帰ると彼らの家に行き、定期的に集まって意思疎通を図っています」

「そういった流れで、向こうも少しは日本語を話せるようになってきたし、私自身もつたない英語やスペイン語を話せるようになりました。そういう部分を含めて、チームの中での作業的な部分も上手く機能するようになってきています」

藤井総監督「スタッフのレベルやチームワークなどが、今年はさらにアップデートできたと思います」と振り返った。

●無観客は悲しかったが、開催が嬉しかったルマン24時間

当初予定されていた4月から8月に延期され、史上初の無観客で開催されたなか、優勝を果たした第3戦ルマン24時間については、まず「無観客は嫌ですね。寂しい!」と言ったものの、「レースをできた喜びの方が大きかった」とも言う。

「通常はスタート前に、スタンドが揺るぐぐらいの怒号のような声でみんなが歌い、レースが始まるのですが、その雰囲気が全くなかった。まさか、こんな風になるとは思いませんでした」

「ただ、落胆したというよりは、レースができた喜びの方が大きかったです。半年から1年沈黙して、8月のレースが今年最初のレースだったので、ここまでずっとこのCBRをチューニングして暖めていたんですよ」

「だから、悲しい部分もありましたけど、レースができた喜びの方が大きかったです」と振り返る。

さらに、コロナ禍のヨーロッパについても様子を説明した。藤井総監督は3月の前半に日本に帰ってきたという。

「私が住んでいるのは人口の少ないバルセロナ州なんですが、子どもが学校に行くと、街が騒めきだしたんです。普段は無いような交通量で、これは何かあるなと思ったら、ロックダウンでした。そこからピタッと外出禁止。企業も学校もすべてが閉鎖されました。出ちゃダメなんです。散歩もなにもかも。マスクをしていなかったり、外を出歩いていると罰金です」

「そんな状況になって、日本も必ずおかしくなると思い、実際にレースをやるにはお金が必要だし、会社を守らなきゃいけないと、すぐに帰国しました。日本に帰ってきたら、マスクをしている人は多いですが、外食もできるし出かけられるし、天国のように感じましたね」

「新型コロナウイルスの感染拡大が始まった頃はそういう感じでしたが、今は日本もヨーロッパも何も変わりません。確かに、今でもヨーロッパの地域によってはロックダウンでバルやレストランが閉鎖になったりはしていますが、ご存じの通りルマンはやりましたし、外出は禁止じゃない。学校にも普通に行っています。この状況が、今後は進んでいくと思います」

●最終戦は総合力が不足、だが来年につながる

2位で終えた最終戦エストリルについては、「もう、優勝は眼中になかったです。ルマンですべてを使い切りました。ルマン一本に絞ってやったと言っても過言ではないです。だから、エストリルの事は、とてもじゃないけど考えてられなかった」と言う。

「本来であれば、その後にボルドールがあって鈴鹿があるので、決着を付けるぞと考えていたのですが、まず鈴鹿が中止になって、ボルドールもなくなって……。でも、EWCがエストリルでのレースを作ってくれた」

「でもね、エストリルって行くのが大変なんですよ。パリから3000km。トラックは規制がうるさくて、80km/hとか90km/hしか出せない中で、1日何時間しか運転できないなどの決まりもあって…。もちろんルマンを走った全てのエンジンはダメになっているし、載せ替えて調整し直すなど、色々な用意が必要です」

「その全ての状況に対応する体力はもうなく、消化試合のつもりで行こうという感じで臨んだので、申し訳ないし情けないとも思いますが、総合力の力不足でした。残念だけど、準備ができませんでした」

そんな中でも2位だったので「来年にはつながるなと思っているし、来年の楽しみにしていてください」と振り返る。

●今シーズンから新型を投入、押し切った

今シーズンから新たに新型CBR1000RR-R Firebladeを投入した事については、「実際には昨年の8耐の時に、この新型を投入することを決めました」と言う。新たなモノを投入するのか、旧型でやるのかを迫られる場面があったそうだ。

「それは、見たことも無いし触ったことも無い、詳しい話は聞けていないけど、CBRの新型が出るという段階でした。しかし、実績のあるものを使うというのが耐久レースのセオリーです。しかも私たちには、使ったことも無いマシンをいきなり24時間走らせたことによる、ボルドールでの痛手や失敗がありました」

「だから、うちのチームもみんな、旧型を使おうと言っていたのですが、僕が押し切りましてね。『今度は違う。ホンダは本気になって新型を開発したから、ちょっと変えただけじゃない』とみんなを説得し、新型に運命を賭けようと決めました」

「その段階で、ファクトリーマシンは使わない。我々が、このマシンを開発してみんなに渡すんだと決め、一つづつ積み重ねてやっていったのが、逆に言うとコロナのおかげで加速しました」

「4月にあったはずのレースが8月に延びて、4か月間の開発期間ができました。これは我々にとっては、とても大きかったです」と、振り返った。

●鈴鹿8耐は開催して欲しかった、チャンピオンにして欲しかった

そして最後に、ホームコースである鈴鹿8耐などが中止となった事についても「フランスはフランス人を守ろう、スペインはスペイン人を守ろう。スペイン人のために開催しよう、フランス人のために開催しようという方針がハッキリ見て取れるんです」

「ところが、私は日本人で日本のチームで、MFJの登録で、しかしこの国になると『公平』とか『均等』とか、みんな仲良くという風になるんです」

「ルマンを開催する、しないの瀬戸際に向こうでは、『お前らが来ないなら構わなよ、俺たちはやるから』、世界選手権なのに、そういう態度なんです。中には国の事情などによって、来れないような人たちもいるんですよ。しかし、そんなことはまったく関係ない。『来ないのはお前たちの自由だ。俺たちはやる』と言って開催したんです」

「これを鈴鹿は、誰かに文句を言う訳ではありませんが、『みんなが来れないからやめる』って言うんです。『藤井の為にやる』って言って欲しかったですよ。『ホンダをチャンピオンにするんだ!』って」

「我々は日本人で日本国民で、日本を応援している訳じゃないですか。最後のチャンスだったんです。だけどそれが、ものの見事に戦う場もなければ戦いようもなく、最後の勝負ができなくなってしまった段階で、エストリルに変わるのですが、もう力尽きたような感覚でした。仮に勝っていたとしても、チャンピオンにはなれませんでしたね」

「だから是非、来年は鈴鹿でやって欲しいです」と、強い想いを語った。

F.C.C. TSR Honda Franceの2021-2022シーズンの参戦体制については、新たなライダーとして高橋裕紀の起用を発表。継続起用のジョシュ・フック、マイク・ディメリオの布陣で、EWCチャンピオン奪還を目指す。

《先川知香》

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