「CES 2020」あらゆる分野で、さらなる融合や連携、再編が進む…みずほ銀行 産業調査部 太田アナリストが見た[インタビュー]

「CES 2020」あらゆる分野で、さらなる融合や連携、再編が進む…みずほ銀行 産業調査部 太田アナリストが見た[インタビュー]
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自動車業界関係者がチェックすべきカンファレンスや見本市に、CESが加えられて久しい。主だったOEMやサプライヤーも、出展するだけでなくワールドプレミアをCESにもってくることも珍しくない。

CES 2020では、トヨタのスマートシティ構築、アマゾンとランボルギー二の協業、ソニーの自動運転カー(試作車)といった大きなニュースも発表され、家電・IT機器・自動車の垣根がさらに低くなった印象もある。

実際のCESはどうだったのか。アナリストとしてCES 2020に参加し、帰国したばかりの太田英彦氏(みずほ銀行 産業調査部 テレコム・メディア・テクノロジーチーム)に現地の様子や業界の動向について話を伺った。

太田氏は 1月27日開催セミナーでCES2020の報告を行う。自動車業界について、主要OEM、Tier1サプライヤーの個別の状況、スタートアップは分野ごとにカテゴライズして方向性や特徴、投資の動向などを詳しい話を取り上げる。

――ラスベガスから帰国直後にお時間いただきありがとうございます。早速ですが、今年のCESはどうでした?

太田氏:2020年のテーマは「IoT」となっていましたが、IoTのIは「Internet」ではなく「Intelligent」であると強調していました。Intelligence of Things、すべてのものがネットワークでつながり、そのデータを解析し、結果を実社会やビジネスに生かす時代だというわけです。これからは、つながるだけなくつながりとそのデータをどう生かすかが問われます。データに、AI・機械学習による処理や意味付けを行い価値を生み出すという意味です。

技術的なトピックとしては、5Gが挙げられると思います。5Gの商用サービスは、北米と韓国ですでに始まっていますが、今回のCESで関連のサービスが多くみられました。SKテレコムはアイドルグループの映像をマルチカメラで配信するサービスをデモしていました。AT&Tは医療分野への応用としてロボットの遠隔操作による治療のデモでした。他にも、インフラ連携型のITS、高精度地図のアップデートなどコネクテッドカーやV2Xの展示も目立ちました。

もうひとつはAIエージェントに代表される音声認識サービスです。昨年までは、アマゾンとグーグルが、AlexaとGoogle Assistantが家電領域での覇権争いが繰り広げていましたが、今年は両者から規格を統一するという話がでており、各社のアライアンス勢力争いから、AIプラットフォームと家電の相互接続とオープン化へのシフトが始まりました。似たような機能の差別化で消耗するより、共通化によって相互のビジネスを拡大する戦略です。

中国や北米の家電メーカーがコネクテッドやAIでコンシューマ市場に注力する中、パナソニックは、LUMIXとメガネ型VR以外、コンシューマ系の製品で目立ったものはありませんでした。代わりに、業務用冷蔵庫のメーカーと協業し、ネットスーパー用のデリバリカーを発表したりと、B2B2C領域への進出をアピールしていました。

――車載機器や自動車関係の動向はどうでしたか。

アマゾンがランボルギーニと提携し、Alexaをビルトインで搭載したモデルを発表しました。OEMメーカーがアマゾンをサプライヤーとして採用したという見方もできます。AWSのエリアでも、パートナーによるAWSを使った自動車関係のユースケースが多数展示されていました。

車載用のAmazon EchoといえるAmazon Autoもブースを自動車業界が集まる北ホールに出展し、いよいよ、自動車業界へのコミットが強くなってきた印象です。

トヨタのスマートシティ構想は、日本でも報じられましたが、モビリティの概念が車単体のサービスから都市計画や街づくりに広がってきたことが伺えました。また、Uberとヒュンダイは有人の空飛ぶタクシーを発表し、その事例として、成田から東京までの移動を空飛ぶタクシーと従来の交通手段を比較していました。

その一方で、ドライバーモニタリングなど車内向けの技術も、スタートアップを中心に増えていました。シェアリングカーやタクシーのパーソナライズやサービス連携を広げるものですが、例えば、前のお客さんがたばこを吸っていたかどうかがわかる、それによって料金を変えるといった提案がありました。

――CES2020から見える市場のトレンドをまとめるとどうなりますか。

まず言えることは、家電にしろ車にしろクラウドなしでは語れなくなったということです。アマゾンやグーグルが家電を経由してリビングに浸透し、生活データを吸い上げている他、車というハードウェアの機能は、モビリティ機能に加え、AWSやAzureといったクラウドプラットフォームを前提としたものが増えています。

そして、アマゾンが自動車業界に本格的に進出し、トヨタが限定的ながら街づくり構想を発表し、ソニーが自動運転カーを発表するなど、業界の垣根がさらに低くなった印象を受けました。2020年は、業種、サービスレイヤ、技術といったあらゆる分野で、さらなる融合や連携、再編が進みそうです。

クラウドサービスが自動車やモビリティに広がる中で、サブスクリプションモデルの振り返りもありそうです。それは本当にサブスクリプションである必要があるのか? といった視点で見直すタイミングです。必要のないものも何でもサブスクにしがちな世の中になってきてしまっています。

全体としては、技術的な大きなイノベーションがあまりない中、VR、ドローン、家庭用ロボットの市場は期待がピークアウトした感じがあり、ハイプサイクルでいう幻滅期にはいったといえるでしょう。EVやシェアリングビジネスは普及してきていますが、自動運転とコネクテッドは、ちょっと足踏み状態といえます。理由は、法規制や業界の問題、社会受容性の問題、インフラの問題と、技術の本質とは違った外部環境の問題で普及が進んでいないからです。トヨタの裾野市の取組みも、一企業がすべて管理できる環境での実験で、汎用性は未知数です。

――なるほど。CASEやMaaSといった動きの中でも、個別分野での違いがあるようですね。本日はありがとうございました。

太田氏が登壇する 1月27日開催セミナー「CES2020と自動車市場」はこちら。

《中尾真二》

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