「生活者が求めるMaaSとは何か」東京は魅力的な市場。日本独自のMaaSの進化を…東京モーターショー2019 / CEATECリレーカンファレンス

「生活者が求めるMaaSとは何か」東京は魅力的な市場。日本独自のMaaSの進化を…東京モーターショー2019 / CEATECリレーカンファレンス
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「生活者が求めるMaaSとは何か」東京モーターショー2019 / CEATECリレーカンファレンスが2019年10月26日に日本自動車工業会(共催イード)で開かれた。

このカンファレンスに先立ち、イードは東京23区の生活者を対象に日常生活における移動の実態と、都市型MaaSに関連する各種サービスの受容性/価格受容性を把握する「MaaS受容性調査」を実施した。インターネットアンケート調査による回答者は、東京23区在住の15~79歳の男女で1998サンプル。調査概要 、移動手段 、車の保有/保有意向 、移動の課題 、MaaS認知 、各種サービス認知/利用意向についての概要を発表し、パネリストとともに日本のモビリティ市場でどうすればイノベーションが起こせるかを議論した。

パネリストは次の6名。東京都戦略政策推進本部戦略事業部特区推進担当部長の米津雅史氏、トヨタ自動車モビリティサービス事業部次世代ビジネスプロジェクトチームプロジェクトリーダーの荒井邦彦氏、東日本旅客鉄道執行役員技術イノベーション推進本部統括(MaaS事業推進部門の得永諭一郎氏、電脳交通取締役COOの北島昇氏、電通ソリューション開発センター主任研究員の澁川修一氏、MaaS受容性調査を担当したイード 5G/MaaSビジネス開発部コンサルタントの吉田凌氏。モデレータはモビリティジャーナリストの楠田悦子がつとめた。

東京・日本という成熟した市場の課題

イードの吉田氏による「MaaS受容性調査」の概要に対し、パネリストは次のようにコメントした。

米津氏(東京都)「東京はMaaSプレーヤーにとって魅力的な都市であると指摘があったように、東京は巨大な人口と経済規模を有する都市で公共交通も高度に発展している。そのような中で新しいサービス、移動手段が生まれようとしている。調査ではラストマイルが足りないことが明確になっており、新しいモビリティの必要性を感じた」

荒井氏(トヨタ)「トヨタにとってMaaSは“利活用”vs“保有”の話があったが、保有も含めてMaaSの一部だと考えている。「Mobility for All」を掲げ、利活用や保有も含めて、すべての方に移動の自由や快適さを提供していきたい。保有が減って利活用にいくとクルマが売れないという話もあるが、個人のお客様は平均で約10年間クルマを保有され、1日の平均稼働率が3%と言われている。利活用が増えるとクルマの稼働率が上がるため、保有のストックが減るが、3年でクルマを買い替えるフローが売れる可能性がある。利活用は敵だと思っていない」

得永氏(JR東日本)「もっと便利な移動手段やサービスが出てくるとJRの利用が減少する。A地点からB地点までニーズに合わせて選択できるようなサービスを、当社以外のモビリティと選択できるようにしていかないと未来はないかと思っている。MaaSは一般的には狭義、広義の定義があり、広義の意味で捉えている。アメリカは自動車社会でヨーロッパは公共交通が発達し環境に対する意向が強い。日本には日本の、23区内には23区内のMaaSがあってしかるべきだと思う」

北島氏(電脳交通)「徳島などの地方と比較すると東京23区はモビリティサービスがすでに満たされる。MaaSに対するニーズが値段に対する言及に集中しているとすれば、市場が飽和している証拠ではないか。新しいペインポイントを探す必要があり、23区の課題はそこにあると思う」

澁川氏(電通)「これまで移動をしている間はメディアが接触できない領域だったが、移動している間にメディアが接触できるようになった。興味深い調査結果が他にもあるが、SDGsとテクノロジーに対する調査を紹介する。SDGsや環境に対する意識が低い。中国はテクノロジーで社会はよくなると思っているが、日本はAIなど先端技術に対して若い人が怖いと思っている傾向にある」

一つ一つの積み重ねと“Urban as a Service”

「イノベーションを起こすには」という問いに対してパネリストは次のように答えた。

北島氏(電脳交通)「タクシーなどの公共交通においては、価値はクオリティをコストで割って出る式があるとしたら、クオリティを上げる努力が足りていないのではないか。ありたい姿にどう飛べるか、小さな改善だけではないアプローチが必要だと思う」

荒井氏(トヨタ)「イノベーションを起こすのは難しい。この先どのようなMaaSの世界になるか分からない。80年前の昔の人は、ひとりでも多くの人が、一台でも多くの国産車を届けたいという思いを積み重ね、今の流通体制となっていると思っている。一つ一つの生活者が困っていることを一つ一つ着実に解決していくことで、振り返ってイノベーションが起こっている状態がつくれるのではないか」

得永氏(JR東日本)「ヘルシンキの人口は6万人で東京23区は900万人で、ヘルシンキの仕組みをそのまま持ってきたらよいものではない」「Suicaをお年寄りが使えるようになったように、これからはお年寄りが使えるサービスかどうかが大切なのではないか。電話よりも便利だと思うようなサービスではければいけない」

澁川氏(電通)「未来予測は占い師のようなもので、予測を外さないものは人口で、20年後の人口のバランスは確定している。日本人は欧州と比較してそもそも意識が高くないので、環境のためというのはドライブにならない。自分の生活が解決してくれた方がいいというのが日本人の感覚だと思う。またテクノロジーに対する期待度が高くなく、現状で何となく満足している。お年寄りにAIスピーカーに話しかけると魂が抜き取られると思っているような状況だ。MaaSがこんなに便利だよと思わせるコミュニケーションやストーリーが立てられないとブレイクスルーしない。たとえば、プロ野球やJリーグ、アイドルグループのコンサートにMaaSのアプリを使うとよいのではないか。このようにMobility as a ServiceといよりもUrban as a Serviceというチャレンジが必要ではないか」

米津氏(東京都)「技術シードの専門家や大学の先生からアイディアを得ることが多い。日本の中にもまだまだ眠っている技術やアイディアがある。突拍子もないもの、連続的な変化を後押ししていきたいと思っている」

イードが実施した「MaaS受容性調査」(東京23区版)のフルレポート詳細は下記の通り。

内容:(予定)
1. 結果概要
2. トピック(発表資料)
3. 移動の実態
4. 移動の課題
5. 各種サービス利用意向
6. 各種サービス 利用したい理由/利用したくない理由、払える金額
納品物:報告書(PowerPoint)、FA集(Excel)
ページ数:(予定)報告書 約100ページ、FA集 17ページ
金額 :100,000円(税別)

お問い合わせは、こちらまで。

《楠田悦子》

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