ホンダ「タイプR」だけのドライビングミーティング、通常より“尖った”内容とは?…鈴鹿サーキットで開催

今回が初開催となった「HSDM-R」の会場である鈴鹿サーキット交通教育センターにて
  • 今回が初開催となった「HSDM-R」の会場である鈴鹿サーキット交通教育センターにて
  • 5代目シビックタイプR(FK8型)
  • 鈴鹿サーキット 国際レーシングコース(フルコース)を走行
  • 5代目シビックタイプR(FK8型)
  • 4代目シビックタイプR(FK2型)
  • 3代目シビックタイプR(FD2型)とNSXタイプR
  • 「ホンダ スポーツ ドライビング ミーティング-R」(HSDM-R)
  • 左から特別講師の岡田秀樹氏、中山友貴選手、参加者をはさんで、伊沢拓也選手

ホンダの歴代「タイプR」オーナーだけを対象としたイベント「ホンダ スポーツ ドライビング ミーティング-R」(HSDM-R)が9月16日、鈴鹿サーキットで開催された。

ホンダでは従来から、タイプRや『S2000』など、ホンダのスポーツモデルを対象とした「ホンダ スポーツ ドライビング ミーティング(HSDM)」や、NSXだけを対象とした「NSXオーナーズミーティング」を開催してきたが、HSDM-Rは対象車両をタイプRだけに特化したもの。初代『インテグラタイプR』が登場した1995年から始まったHSDMとしては、意外にも初の試みだ。

通常のHSDMよりも尖った内容

走りに特化したタイプRのためのイベントだけに、その内容も尖っている。プロドライバーの講師のもと、愛車の特性を知り、楽しみながら運転技術を向上させるという趣旨は通常のHSDMと同じだが、今回は講師陣も通常では1~2名のところ、3名体制に充実。1980年代にワンダーシビック等でグループAで活躍し、HSDMでは設立当初からインストラクターを務める岡田秀樹氏をはじめ、現在はスーパーGTに参戦する伊沢拓也選手、中山友貴選手を迎えるという豪華な布陣だ。

左から特別講師の岡田秀樹氏、中山友貴選手、参加者をはさんで、伊沢拓也選手左から特別講師の岡田秀樹氏、中山友貴選手、参加者をはさんで、伊沢拓也選手

もちろん、走行時間もたっぷり用意。鈴鹿サーキット交通教育センター(STEC)でのジムカーナコースやスキッドコースでの練習のほか、南コースでのスポーツ走行や同乗走行、そして国際レーシングコース(フルコース)も走行するという盛りだくさんぶりだ。

なお、HSDM-Rの対象モデルは、初代/2代目インテグラタイプR、5世代にわたる『シビックタイプR』、シビックタイプRユーロ、そして『NSXタイプR』のみ。今回の参加車両は26台で、現行シビックタイプRのFK8型(9台)が最多。次がシビックタイプRのFD2型(8台)で、いずれも4ドアモデルだ。それ以外はシビックタイプRのEP3型が2台、初代EK9型が1台、シビックタイプRユーロ(FN2型)が1台、NSX-RのNA1型が1台、NA2型が1台。インテグラタイプRは、初代3ドアクーペ(DC2型)の1台のみだった。また、これとは別に、オフミーティングだけの参加車両が5台あった(シビックタイプRが3台、インテグラタイプRが2台)。

開講式では、岡田氏が同イベントの意義について「クルマはどんどん高性能化しているが、人間もそれに合わせて進化しなくてはいけない。普段は体験できないクルマの動きを知ってもらい、自分がどんな性能のクルマに乗っているかを理解して帰って欲しい」と説明した。ちなみに今回のメイン会場である鈴鹿サーキット交通教育センターは、ホンダ創業者である本田宗一郎氏が、「クルマやバイクを売るだけではなく、それを操る人も育成しなくてはいけない」という信念から、鈴鹿サーキットとほぼ同時期(鈴鹿サーキット完成から2年後の1964年)に設立したもの。同センターで最初に行われたのは、白バイ隊員の高速安全運転講習だったという。

午前中の練習プログラムは、交通教育センターのジムカーナコースと、散水によって路面ミューを雪上並みの0.1~0.5まで下げたスキッドコースを走行するもの。後輪駆動のNSXではカウンターを当てながら、前輪駆動となる他のタイプRではアンダーが出ないよう丁寧にスピードと荷重をコントロールしながら旋回する様子が印象的だった。

タイプR開発者による特別レクチャーも実施

午後からは、本田技術研究所から招いた開発者による特別レクチャーを開催。前半は、S2000をはじめ、初代NSXのマイナーチェンジや、幻となったV10スーパースポーツの開発に携わったほか、現行シビックタイプRの開発責任者でもある柿沼秀樹氏が登壇し、タイプR開発秘話を披露。発売時に「スポーツカーとしては生ぬるい」と一部ジャーナリストに評された標準の初代NSXに対して「もっとスパルタンなスポーツカーを作りたい」という社内の“赤派”に応える形で誕生したのがNSXタイプRだったと明かし、初代NSXと同タイプRの開発責任者だった上原繁氏には「スポーツカーで中辛や甘辛を作ったら、激辛もつくらないとだめなんです」と言われたというエピソードも紹介した。

本田技術研究所の柿沼秀樹氏本田技術研究所の柿沼秀樹氏

また、2002年発売の2代目NSXタイプR(NA2型)では「エンジンの抜本的な改良ができない以上、車体側で速くするしかない。ボンネットに穴を空けてでも空力を良くしよう」と決断し、実際にボンネットに開口部を設けた試作車で、照明を落とした夜の鈴鹿サーキットを柿沼氏自らテスト走行したという裏話も。さらに現行タイプRについては、ニュルブルクリンク北コースで当時FF市販車最速の7分43秒80を記録したことにも触れながら、開発時の狙いなどを語った。

レクチャー後半は、S2000やNSX等の開発に携わり、現在はテストドライバーの育成に取り組む木立(きだち)純一氏が登壇し、世界中のメーカーが市販車のテストに使うニュルブルクリンク北コースを紹介。「ニュルブルクリンクを走るのに特別なライセンスは必要なく、免許があれば誰でも走ることができる。現地ではタイプRのレンタカーも借りられるので、基本運転スキルをHSDMで身につけて、ぜひニュルブルクリンクを走ってみて欲しい」と参加者に語りかけた。

鈴鹿サーキットのフルコース走行も

レクチャー終了後は、再び車両に戻り、一周約1.3kmの南コースでスポーツ走行を堪能。また、岡田氏、伊沢選手、中山選手がドライブする車両に同乗走行するチャンスも設けられた。

鈴鹿サーキット 国際レーシングコース(フルコース)を走行鈴鹿サーキット 国際レーシングコース(フルコース)を走行

参加者にも話を聞いてみた。静岡県から現行シビックタイプR(FK8型)で参加した鈴木さんは、これまでも何度かHSDMに参加し、毎年楽しみにしているという。ちなみに普段の足は1987年に購入し、現在は走行距離48万kmの『CR-X』(EF7型)。ほかにもS2000や『CR-Z』を所有する根っからのホンダファンだ。

大阪から参加した土家さんは、2004年にインテグラタイプR(DC2型)を購入。走行距離は12万kmを超えるが、外観はノーマルの雰囲気を尊重している。魅力は「運転してて楽しいこと」だという。

今回最遠となる山口県から参加した長田(おさだ)さんは、2009年にシビックタイプR(FD2型)を新車で購入。現在の走行距離は13万kmで、そろそろエンジンのOHを検討中とのこと。一緒に参加した女性はプロドライバーによる同上走行も体験し、「(参加者や講師陣の)熱量がすごい!」と驚いていた。

そして一日の最後は、グランドスタンド前のホームストレートで記念撮影。さらに練習の仕上げとして、一周約6kmの国際レーシングコースをタイプRらしいハイペースで走行。小気味いいホンダサウンドを響かせながら夕闇迫る鈴鹿サーキットを駆けぬけて、初めてタイプRだけを集めたHSDMが幕を閉じた。

HSDM-Rの次回開催は未定だが、ホンダのスポーツモデルを対象とした通常のHSDMは、11月23日と12月22日に鈴鹿サーキットで開催される。参加枠は各日30台まで。

<協力:モビリティランド>

《丹羽圭@DAYS》

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