ファーウェイ問題などを引き起こした米中貿易戦争の本質…クレアブ 土井正己 代表取締役社長[インタビュー]

ファーウェイ問題などを引き起こした米中貿易戦争の本質…クレアブ 土井正己 代表取締役社長[インタビュー]
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ファーウェイ問題などを引き起こした米中貿易戦争の本質は何か。中国を狙い撃ちにするトランプ政権の狙いはどこにあるのか。米国と中国の政治・経済状況から、現在の貿易戦争の本質は何か。トヨタ自動車で海外広報の担当部長として世界各国を飛び回り、トヨタの企業参謀として活躍した。現在は、企業や官公庁への国際広報コンサルティング業務を行いながら、山形大学特任教授として教鞭もとるクレアブ代表取締役社長の土井正己氏に話を聞いた。

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米中貿易戦争の本質 中国の投資環境は抜群に改善する?

---:米中貿易戦争の本質は何でしょう?

土井氏:米中貿易摩擦の本質は、米国と中国の21世紀後半に向けての覇権争いです。経済、技術、そして軍事まで含めて、これまでアメリカが世界の覇権だったものを中国に取られかねないので、米国は必死で守ろうとしています。それが表立ったのがファーウェイです。5Gを握られれば軍事まで握られるのでは、という懸念です。

米国は、中国に対して貿易赤字の削減だけでなく、中国におけるビジネス慣行が世界のルール(グローバルスタンダード)に合致していないことを攻撃しており、是正を求めています。具体的には知財権の保護、中国との合弁企業に対する技術移転の強制、中国政府が行う自国産業への補助金などです。

米中貿易交渉はまとまる方向性を見失っており、米国は中国からの輸入品の約半数に25%の関税をかけています。中国も米国から輸入している農産物などに対して25%の関税を課しており、まさに“貿易戦争”の状態です。そこにファーウェイへの制裁が始まり(G20 でファーウェイへの販売を一部許可するなどの緩和は見られたものの)、貿易戦争は激化しており、世界経済は大混乱の状況です。

しかし、もう少し先を見通すと、この米中貿易戦争により、中国は世界標準のルール(グローバルスタンダード)に則ってビジネスをするようになると、他国から中国への投資環境が改善することになります。中国には、こうした構造改革を喜ぶ勢力もあります。

これまで中国の産業構造は労働集約型で賃金が安いうちは成長するものでした。人件費の高騰と共に成長が鈍化していましたが、公共政策などの刺激策で成長を保ってきていました。中国はこれまでも産業構造の変革に迫られていました。そこで出てきたのが国内消費とイノベーションなどで産業の高度化を図る「中国製造2025」です。中国の改革派経済学者もこの必要性を以前から指摘していました。米国は、この「中国製造2025」が技術、経済、軍事で米国を脅かすものとして、敵視してきたわけですが、本当は産業の高度化を目指す経済政策で、米国が求める「グローバルスタンダート化」は、「中国製造2025」の考え方にそったものです。

トランプ政権は「中国製造2025」を叩いているのですが、これにより中国のマーケットのグローバルスタンダード化、オープン化が進み、アメリカや世界からの投資環境が改善する可能性があります。もしかすると米中の“蜜月”期を迎えるかもしれません。

GMが中国のEVマーケットをねらって動くか

---:注目している自動車メーカーの動きは?

土井氏:ゼネラルモーターズの動きに着目しています。GMの最大のマーケットは約14億人の中国で、なくてはならない生命線です。既に、GMの中国での販売台数は、米国での半場台数を上回っており、中国マーケットなしではGMは成り立ちません。中国の投資環境がグローバルスタンダードに改善された場合、同社は中国にEV工場をつくるのではないかと予測しています。

これまで中国に工場をつくる場合は中国の企業と合弁会社をつくることがルールでした。中国政府はEVの普及を推進しているため、EVメーカーであるテスラモーターズに関してはそのルールを緩和し、単独資本を認めました。次にGMが、そして世界中の自動車メーカーが中国市場を狙って、単独進出する可能性があります。

このように色々な分野で世界最大のマーケットである中国ですので、経済界としては本気で中国と対立することは望んでいないと思います。

また、中国の貿易赤字の原因をつくっているのはアメリカだったりします。ウォルマートなど生活の消費財をはじめ中国に発注して輸入しているわけです。

ミクロとマクロの視点で分析を

---:日本のメーカーはどうすればよいでしょうか?

土井氏:米中貿易問題により投資環境が抜群に改善される可能性があります。GMを始め、米国や欧州のメーカーが中国マーケットを競って取りに行く可能性があるので、日本は出遅れないように気を付ける必要があるでしょう。

また、これは米中問題とは直接関係ないですが、自動車メーカーは、“為替”に大きく影響を受けます。“為替”は、世界の政治経済の縮図ですので、「マクロとミクロの交差点」にあたるものです。たとえばトヨタは年間の生産台数は約1,000万台です。そのうち日本国内の生産台数は300台、海外生産して売っているのが700万台です。したがって為替の変動があったとしても700万台でカバーできてしまいます。一方、日本国内で生産しているマツダやスバルは、輸出比率が高いので為替の影響を受けやすく、ヘッジできるものが少ないです。

また、日本の自動車メーカーの場合は米中貿易問題より、アメリカ、カナダ、メキシコの北米自由貿易協定(NAFTA)の改訂問題の方が、影響が大きいでしょう。

このように米中貿易問題をミクロとマクロを行き来しながら議論すべきです。しかし、どちらか一方の議論になってしまっている場合も多いのではないでしょうか。

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《楠田悦子》

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