バブル期の反省から復活再生…車名ブランドを統合したマツダの国内営業戦略

プレスカンファレンスで戦略説明をする福原和幸氏(常務執行役員)
  • プレスカンファレンスで戦略説明をする福原和幸氏(常務執行役員)
  • MAZDA6
  • バブル期から現在までのマツダの営業戦略
  • 年次モデルによるブランドの維持
  • オーナーのライフステージごとの提案ができる残価保証クレジット
  • 5年以内に買い替えるユーザーが追加で増えている
  • 今後の展開
  • MAZDA6の内装

7月4日、マツダは『アテンザ』を改良とともにその名前を『MAZDA6』とし、 『ロードスター』を除く、車名ブランド命名方の統合を発表した。これは単なるブランド戦略ではなく、同社が大幅に経営戦略の転換を図った2012年からの取り組みが一段落したことを意味する。

MAZDA6が正式発表される1週間ほど前、東京本社にて報道陣向けのプレスカンファレンスが開催された。このカンファレンスは主だった自動車媒体の記者向けというより、経済誌記者やジャーナリストに向けて行われた。そこでは、MAZDA6についての言及はあったが、ブランド名統合の背景となる国内販売戦略について詳しく解説された。

カンファレンスでは、最後の『デミオ』も次期新型が『MAZDA2』として市場投入されることもアナウンスされた。これによりマツダ車のブランドは「MAZDA」の後に数字がくるラインと「CX」のサフィックスとして数字がくるラインの2系統となる。ロードスターは、この統合ブランドの例外となるが、すでに確立されたブランド価値と、本来車種カテゴリーを示すワードで国内商標登録された特別な車両ということで残される。

バブル期の反省で生まれた中期経営計画

マツダは2019年3月期決算の中期経営方針において、ブランド価値向上への投資、ブランド価値を低下させる支出の抑制、人材・効率化・労働環境への投資の3つ掲げている。このうち前二者については、一定の年齢層以上は思い当たる節があるのではと思う。

バブル期、クルマは順調に市場を拡大し、マツダ車も売れていた。が、当時「マツダ地獄」という言葉も存在した。意味するところは、マツダ車はマツダ以外のディーラー等の下取りが安く、一度マツダ車に乗ると他社への乗り換えができないということだ。マツダは、90年の国内販売台数が59万台、店舗数で2600、販社も5系列(マツダ、マツダオート、ユーノス、オートラマ、オートザム)あり、連結販社を含めると69社を誇っていた。

当時の販売戦略は価格訴求とそれによる台数重視を基本としてた。しかし、バブル崩壊とともに国内需要の減少とともにマツダの販売台数もじり貧となっていく。販売台数を重視し、価格や下取りを優遇した結果、中古車市場でのマツダ車の低査定も逆風となり業績が上がらない悪循環も引き起こした。

環境サスティナブルから人間中心哲学へ

転機は2012年だ。マツダはこれまでの販売台数重視の戦略から価値訴求販売へと切り替えた。マツダでは「現行世代商品」と呼んでいるが、車両としては「SKYACTIV(スカイアクティブ)」テクノロジーを全面的に採用した『CX-5』以降の車両は、ある共通コンセプトを持っている。ひとつは、ことあるごとに同社が強調する「人間中心の開発哲学」だ。

バブル期の延長上にある戦略で苦戦していたマツダが、時代の変化に対応しニーズに応え続けるクルマ作りと、過去の戦略を見直すことで生まれたポリシーともいえる。マツダは、これ以前、2007年に「サスティナブルZoom-Zoom宣言」を発表しているが、おもにSKYACTIVエンジンによる環境性能の訴求キーワードだった。サスティナブルを社会的な問題だけでなく、個人の生活環境やライフスタイルまで拡張することで、人間中心という新しい視点が導入された。

具体的な施策には、最新技術の継続的な投入とクルマの資産価値を守る取り組みの2つを設定した。

従来の車両開発は4年、6年周期といわれている。これは、新車投入から次のフルモデルチェンジまで車両の価値は下がっていくことにもなる。マツダは最新技術を年次モデルとして継続的に投入することで車両の価値を下げない戦略をとった。

資産価値の維持には、グループ内の情報共有基盤を構築し中古車価格、下取り価格の適正管理を行う試作、残価設定クレジットの導入と3年の残価保証を55%とするプラン(マツダスカイプラン)、メンテナンスパッケージプランやボディリペアの免責引き下げなどのメニューで対応した。

55%保証が若い世代のライフステージを支援

55%保証の残価設定クレジットは、例えば7年間、同じクルマを購入してかかる費用(車両購入費、車検やランニングコストを含む)と3年ごとに買い替えるプランでは、3年ごとに3台を乗り換えるほうが安くなる。これは、若い世代にとって、結婚、子育てなどライフステージにあわせた車両のグレードアップを後押しすることにもなる。

残価保証ができるのは、前述の情報共有基盤による広域な価格管理の賜物だが、これによりマツダ車の3年後の残価率は1.2倍(2012年、2018年比較)となった。また、マツダユーザーが5年以内に代替する台数は1.6倍(2010年、2017年比較)。5年以上の乗り続ける層は増えていないので、純5年以内に乗り換えるユーザーが純増している。

総じて、マツダブランドへの好感度も上がっているのだが、2013年以降に調査を開始した輸入車と国産車を同時検討している消費者のマツダブランドの評価が大きく伸びている。輸入車を検討している層にとってマツダ車も検討対象に入っているということだ。

正しい「選択と集中」の例

世間では、「選択と集中」が叫ばれて久しい。しかし、多くの企業はただのリストラ、経費削減の口実にしか使っていない。選択によって浮いた部分を注力分野に効果的に投資しなければ意味はないのだが、損失の補てんやコストカットだけで終わっている。これではビジネスは縮小するだけで、業績回復など見込めない。

マツダは、バブル期の反省から闇雲な拡大路線から、販社統合、販売店縮小など痛みを伴う改革を実行した。ただのリストラではなく、SKYACTIVテクノロジーへの投資、プラットフォームの共通化、3Dモデリング設計の導入など攻めの姿勢も維持。結果、業績をみごとに回復させている。そして、今後は集約した店舗のブランドおよびサービス機能強化に取り組むという。サービス機能強化では、クラウドを活用したコネクテッド機能でユーザーエンゲージメントと車両品質管理を改善する。

これらの新しい戦略は、電動化やMaaSにも通じるものだが、CASE車両ありきではなく、マツダの人間中心の哲学の延長に自然に乗ってくるものとしている。いかにもマツダらしい。

《中尾真二》

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