経産省からみたCASEとMaaS…経済産業省製造産業局自動車課課長補佐眞柳秀人氏

経産省からみたCASEとMaaS…経済産業省製造産業局自動車課課長補佐眞柳秀人氏
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MaaSとは何か。自動車産業から見たMaaSとは何か?自動車は日本の基幹産業であるため、CASEとMaaSの関係について認識しておく必要があるだろう。経済産業省製造産業局自動車課課長補佐の眞柳秀人氏に聞いた。

6月19日、20日に東京オリ・パラとCASE・MaaSのキープレイヤーが一堂に会するセミナーが開催されます。詳細はこちらから。

2030年に向けて、戦略的に対応する必要性
---:自動車産業の課題は?
眞柳氏: いわゆる“CASE”(Connected、Automated、Shared&Service、Electricified)の潮流が、自動車産業構造を大きく変革すると言われています。日本の自動車産業が引き続き世界をリードし、日本経済の屋台骨を支えられるよう、CASEの潮流をチャンスと捉えて、積極的に対応していくことが重要です。

CASEに対する日本の動きは必ずしも世界からみて劣っているわけではありません。むしろ着実に結果を出し先行していることもたくさんあります。

例えば、「A」については、海外勢のいわゆるロボットタクシーを見据えた取組に注目が集まっていますが、日本では、今国会で成立した法制度の整備に加えて、足下の技術における社会実装という意味でも、新車販売に占める“サポカー”の割合、レベル2までの量販・低価格帯への搭載、レベル3の実現タイミングなど、いずれにおいても、欧米に先駆けていると言えます。「E」についても、EVだけでなく、HVやFCVなど多様な電動車(xEV)を世界に先駆けて実用化するとともに、電池をはじめとする電動化に関する技術力、産業、人材の厚みでも世界トップレベルにあります。

自動車産業にとってCASEへの対応は非常にチャレンジングです。構造変化により、デジタルプラットフォーマーなど異業種も積極的に参入し、ハードからソフトへ、車の中から車の外へ、所有から利用へと付加価値がシフトするリスクがある中で、業種を超えた競争に打ち勝っていく必要があります。その中で、異業種のプレーヤーと戦略的に連携を進めることも重要になるでしょう。

CASEの本格化は2030年台との見方が一般的ですが、その移行期にあたる2020年台が非常に大切です。不確実性が高く、収益性も見込みにくい中、新たなテクノロジーやサービスの開発と市場獲得に対して先行的に大きな投資が必要となるわけですから体力勝負です。既存ビジネスでの収益性を一層高め、それを積極的に将来投資に振り向けることが重要です。

CASEの一部としてのMaaS
---:経産省が考えるMaaSの定義を教えてください
眞柳氏:MaaSは、CASEの「S」に相当するものですが、経産省では、特にIoTやAIなどの新技術により、地域の移動課題を解決し、地域経済を活性化させていくものという視点でMaaSを捉えています。

そうした意味では、フィンランドの「whim」に代表されるマルチモーダルサービスを“狭義のMaaS”とするならば、経産省が捉えているMaaSは「IoTやAIを活用した新しいモビリティサービス」として、カーシェア・オンデマンドバス・マイクロトランジット・相乗りタクシー、そして貨客混載・ラストマイル配送無人化などもスコープに入れた“広義のMaaS”と言えるでしょう。

自動走行社会の実現に向けてもMaaS市場の活性化が非常に重要です。自動運転レベル4はサービスカー領域から先行し、MaaSと融合した形で社会実装が進むと考えられます。したがって、クルマの最適配車など「IoT・AI×クルマ」のサービスが拡がることが、自動運転の社会実装に係るある種の環境整備になり、その活用が進むと考えられるからです。そして、「自動運転×MaaS」を支える基盤が「C(Connected)」となるわけです。

結局のところ、CASEの潮流はそれぞれ独立したものではなく、相互に密接に関連し合いながら、本格普及に向かっていくものです。それに伴い、クルマの準公共的役割の拡大、ひいてはクルマと社会の融合が進んでいきます。その意味で、MaaSの分野においても、自動車産業が果たす役割は大きいですし、積極的に取り組んでいくことが重要と考えています。

また、MaaS市場を活性化するためには、移動サービスのみで考えるのではなく「移動サービス×その他の産業(モビリティ×非モビリティ)」で考える必要があります。一般的に、移動サービスのみを単体で捉えると収益化は容易ではなく、エネルギー、医療、小売り、物流、観光、公共サービスなどの地域の多様な経済活動をつなぎ、これと連携することにより、マネタイズの道が開けると考えています。

---:6月19日、20日のイベントの取材を通してMaaSの定義は各ステークホルダーによって異なることがわかりました。国交省のMaaSの定義は「出発地から目的地までの移動ニーズに対して最適な移動手段をシームレスに一つのアプリで提供するなど、移動を単なる手段としてではなく、利用者にとっての一元的なサービスとして捉える概念」です。経産省は、新技術の活用、地域活性化に加え、CASE全体の文脈からみているのですね。自動車産業からみたMaaSはどのように見えているのか、公共交通からみた場合はどのように見えているのか、日本でMaaSを語るためには押さえておく重要なポイントだと感じます。

6月19日、20日に東京オリ・パラとCASE・MaaSのキープレイヤーが一堂に会するセミナーが開催されます。詳細はこちらから。

国交省と連携した“スマートモビリティチャレンジ”
---:広義のMaaSの活性化に向けた具体的な取組は?
眞柳氏:CASEの本格化に伴い、クルマは「個人の移動手段」という役割を超えて「社会インフラ」の一つになっていくと考えています。そうした将来モビリティ像の実現に向けた取組の柱の一つとして、本年4月に開催した「第3回自動車新時代戦略会議」では、“スマートモビリティチャレンジ”を打ち出しました。

“スマートモビリティチャレンジ”は、IoTやAIを活用した新しいモビリティサービスの社会実装を通じ、移動課題の解決及び地域活性化を目指す「地域×企業」の挑戦を総合的に支援するプログラムとして、経済産業省と国土交通省が連携して今年度からスタートするものです。

併せて、その推進母体として、自動車メーカー、交通事業者、通信事業者、ディベロッパー、ベンチャー、商社、地方自治体、大学・研究機関などが幅広く参画する“スマートモビリティチャレンジ推進協議会”を立ち上げ、具体的なニーズやソリューションに関する情報共有を促すとともに、先進的な取組を進める地域において事業性分析等を実施し、ベストプラクティスの抽出・ヨコ展開や、横断的課題の整理、地域と事業者のマッチング促進などを行うこととしています。

こうした取組を地道に重ねることによって、一つ一つ課題をクリアし、社会実装に近づけていくことが重要と考えています。

---:自動車産業を抱える日本。CASEと地域生活への課題解決の対応。モノとサービスの関係。そして受け皿となる市場の育成や自治体との連携など。かなり全体を捉えながら進めることが大切なのだと思います。

6月19日、20日に東京オリ・パラとCASE・MaaSのキープレイヤーが一堂に会するセミナーが開催されます。詳細はこちらから。

《楠田悦子》

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