恒例となった、フィアット『パンダ』をこよなく愛する人たちが集うパンダリーノが、今年も26日、静岡県浜名湖畔の渚園キャンプ場で開催された。
フィアットのもっともベーシックなモデルとして、1980年に登場したパンダ。ジウジアーロがデザインを手掛けて、小さいながら必要にして十分な性能とスペースを最大限に活かすことができるシンプルな構造と豊富なシートアレンジで、根強いファンが多いクルマだ。ユーザーの創意工夫次第でいかように使えるこのクルマは、もはやコンパクトカーというより、ミニマム・マルチ・パーパス・ヴィークルとして、ファンに親しまれている。
現在は3代目のパンダが新車で販売されており、初代モデルよりはかなりサイズも大型化しているものの、依然、ステータスとしてではなく、イタリアの実用的な道具的な使い勝手も含めて幅広いユーザーに好まれている一台だ。
そんなパンダを愛する人たちが年に一度全国から集まり、初夏の訪れを感じさせる5月に浜名湖の渚園キャンプ場に集い、気ままな一日を過ごすパンダリーノが今年も開催された。事前エントリーでも300台近くにのぼり、当日参加も含めて早朝から会場の入り口には大変長い列ができていた。
会場ではリアハッチを開け、ピクニックのようにのんびりと過ごす参加者や、シャボン玉を片手にパンダで一杯になった会場の中を駆け回る子供たち、パーツの入手やトラブルの対処法について情報交換をする人など、皆思い思いの時間を過ごしていた。
また、会場に出展する協賛企業に加え、貴重なミニカーやパーツ、さらには自分で作成したパンダ好きだと思わず手に取ってしまいたくなるようなアイデアの詰まった商品をクルマの前で販売する参加者も。トークショーやじゃんけん大会などの他はそれほどスケジュールに組まれたプログラムなどはないものの、のんびりとした時間ながら、あっという間に閉会・撤収の時間を迎え、参加者は名残惜しそうに家路に就いていた。
初代のパンダを34万km以上にわたって乗り続けてきたというオーナーの男性は「5桁メーターなので、最初は10万kmごとに0キロに戻るメーターを見て写真に納めたりしていましたが、もうそんなのをするのも飽きてしまいました」と語る。
「パンダの魅力は、使っている中で使い方を創意工夫できるところ。初代の初期モデルはハンモック状のシートなので特に自由度も高く、これで大好きな海沿いをひたすら走ってきました。いろんな人に会ったり、海の見える場所で中を平らにして寝てみたり、見よう見まねから初めてパスタを作ってワインを楽しむ。ワイン飲んだらもちろんそのまま運転するわけにもいかないので、そういうのも、こういう風に僕なりのクルマ旅のペースに合わせてカスタマイズできるパンダだからできたことなんじゃないかな。屋根を開けて月がきれいに見えたりすると、(距離的には)もうぼちぼち月に行ったくらい旅をしたんだのだなあ、と思ったりすると、感慨深いものがありますね」
最近では車中泊やバンライフを楽しむ人が増えてきたが、そんなのが流行る前から、パンダ乗りの中ではそういうことをしていた人も少なくなかったのだそうだ。
ほかにもファミリーで参加している人が多く、一人の趣味車ではなく、家族の一員として愛されているクルマが多いイベントだ。
「来年2020年はパンダ発売40周年の節目の年。是非ますます多くのパンダ好きに集まってもらいたいものですね」と主催者では話していた。