超高齢社会のモビリティはどうなる?…リビングラボと自動車技術会がコラボイベントを開催

パネルディスカッション風景
  • パネルディスカッション風景
  • 秋山弘子センター長(左)と鎌田実教授
  • 左から田中昭彦氏、谷隅英樹氏、青木清副理事長
  • 会場の様子
  • 懇親会の様子

高齢化が今後さらに進む日本では、どんなモビリティがあり得るのか。そんなテーマのパネルディスカッションが11月27日、東京大学で開催された。

このイベントはユーザー参加型共創活動「リビングラボ」を展開する高齢社会共創センターの研究交流会と、自動車技術会デザイン部門委員会のコラボレーション企画として開催。長寿社会、高齢社会においてどのようなモビリティ、どのようなデザインが求められるのかについて講演とパネルディスカッションがおこなわれた。

まず高齢社会共創センター長で、東京大学高齢社会総合研究機構の秋山弘子特任教授が「長寿社会の課題とリビングラボの可能性」という題で講演。在宅ワークのための折りたたみデスクの開発では、オフィス機器メーカーが段ボールでモックアップを作成し、実際にリビングルームに置いて使い勝手を検証したことなどを紹介。「長寿化、高齢化、人口減少など課題はたくさんある。でも課題が多いということは、イノベーションの宝庫であるということ」と秋山センター長。

続いての講演は、東京大学大学院新領域創成科学研究科人間環境学専攻の鎌田実教授による「自動運転の現状と展望」。超小型モビリティやゴルフカートをベースとした低速モビリティなどによるさまざまな実証実験と、その成果を紹介。「技術面や事業化に向けてのハードルは高く、国際競争を勝ち抜けるような体制づくりが急務。とにかく戦略が重要だ」と訴えた。

その後は、タウンサポート鎌倉今泉台リビングラボ担当の青木清副理事長と、自動車技術会デザイン部門委員会メンバーの田中昭彦氏(ヤマハ発動機)、谷隅英樹氏(ダイハツ工業)を加えた5人によるパネルディスカッション。秋山センター長をコーディネーターとして「超高齢未来の移動とライフスタイル」という題で討論した。

ここでは「移動手段」やその実態について、作り手と使い手それぞれの視点からさまざまな意見が出された。「いろいろな自動運転の実証実験をやっているが、本当の意味でのラストワンマイルというのはない。乗合モビリティでは、停留所から自宅までがハードルになっている」(鎌田)

「自動運転は目的ではなく、豊かな暮らしのための手段。だからラストワンマイルという言い方は嫌い。考えなきゃいけないのは、ファーストワンマイル。家から出たら、どれだけ生活が面白くなるか。どんな乗り物だと面白くなるか。便利さ以上の魅力を考えていくべき」(田中)

「いままでは産業の発展のために道路整備するという考えだった。これからはどうやって生きてゆくかを考えた、生活する人のための道作り、街作りが必要」(谷隅)、「自動運転でもマニュアル操作に切り替えられるものがあってもいいし、車内ではどう楽しめるかということを考えてほしい」(青木)

また鎌田教授は東日本大震災後の、バス停留所から高台にある仮設住宅までの移動ボランティアの実例を紹介。年配者は徒歩で坂道を登るのが大変で、買い物する食料品も軽いパンなどになっていた。しかし移動手段ができたことで肉や魚などを買って調理するようになり、どんどん前向きな気持ちになっていったという。「移動手段を確保することによって、人の気持ちも変えられるということを実感した」とのこと。

パネルディスカッション後は懇親会が催されたが、ここでは電機メーカーや車両メーカー、デザイン会社をはじめとするさまざまな企業の異業種交流会として、終了時間まで交流と議論が展開された。

《古庄 速人》

【注目の記事】[PR]

編集部おすすめのニュース

特集