「CASE」事例、知る人ぞ知る…CEATEC 2018

プリファード・ネットワークス ブース
  • プリファード・ネットワークス ブース
  • 片づけロボットは、ゆっくりながらも安全確実に稼働していた
  • ロボットの筐体はトヨタHSRを利用
  • PFNのAIによって物体を識別している様子
  • ニチコン ブース
  • トライブリッド蓄電システム
  • トライブリッド蓄電システム
  • トライブリッド蓄電システムのデモ

2018年のCEATECから、自動車関連ということでCASEに関連した出展をいくつか紹介したい。この記事では、名の通った企業ではないものの、際立った技術力をもつ“知る人ぞ知る”企業を紹介しよう。

プリファード・ネットワークス…AI開発で日本トップの頭脳集団


プリファード・ネットワークス、通称PFNは、未上場ながら、トヨタ自動車、ファナック、博報堂、三井物産など名だたる企業から巨額の出資を集めたことで注目を集めた。知らない人はぜひ一度、”PFN”で検索をしてみて欲しい。AI開発で日本トップの頭脳集団と言われている理由がすぐに分かるはずだ。

そういった成り立ちや、とっつきにくい社名もあって、なんとなくミステリアスなイメージの同社であるが、今年のCEATECでは、トヨタの隣に大きなブースを構えて技術力をアピールしていた。

人だかりの絶えないブースに近づいてみると、TOYOTAのロゴを付けた小柄なロボット(生活支援ロボット=HSR)が、散らかった部屋を片付けているデモが行われていた。

「部屋をただ片付けるだけでなく、そのモノが何であるかを認識しながら、適切な場所に片づけていますので、例えば”リモコンはどこだっけ?”と聞くと、ロボットがどこに片づけたか教えてくれます。つまり、ウェブで知りたいことを検索するように、家のなかの”モノ”を検索することができるようになるということです」
ロボットの筐体はトヨタHSRを利用ロボットの筐体はトヨタHSRを利用
「ロボットは、言葉だけでなくジェスチャーを使ったコミュニケーションも理解できます。指をさしながら”それをそっちに片づけて”と言えば、その意味を理解して振舞うことができます。こういったコミュニケーションを実現することで、家庭にロボットがある、ということを当たり前にしていきたいと思っています」

実際にロボットの動きを見ても、人や障害物とぶつからないように上手く動きながら、おもちゃや洗濯物、ゴミをひとつづつ識別して持ち上げ、決められた場所に上手に片づけていた。

PFNはトヨタと連携して自動運転用のAI開発も手掛けているが、「今回は家庭用ロボット向けの成果を展示」したとのことだ。余談だが、トヨタはAI研究の世界的権威であるギル・プラット博士を引き入れて設立したTRI(トヨタリサーチインスティテュートート)でもAI開発を進めている。PFNとどのような関係にあるのかは今のところ不明だが、相当のリソースを投下していることは間違いない。トヨタのAI開発に掛ける強い意志が透けて見えるようだ。

FIT卒業生向け家庭用蓄電システム…ニチコン


ニチコンの旧社名は日本コンデンサ工業。コンデンサの大手メーカーだが、CEATECにおいては、コンデンサの親戚であるバッテリーを活用したFIT(電力の固定価格買取制度)卒業生向けの「トライブリッド蓄電システム」をアピールした。

トライブリッド蓄電システムは、蓄電池とパワーコンディショナー、V2H(ビークルトゥーホーム)スタンドがセットになった製品で、太陽光パネルとEVを持つ家庭用に開発されたものだ。太陽光パネルや蓄電池からEVを充電したり、逆にEVから家庭用の電力を賄うこともできる。まさにエネルギーの地産地消を実現するものだ。「最近は特に災害対策の目的で導入されることが増えている」(担当者)とのこと。
トライブリッド蓄電システムのデモトライブリッド蓄電システムのデモ
FIT導入世帯は少ないように感じるかもしれないが、毎年数十万世帯のペースで増えている。FITが始まった最初の年だけでも50万世帯あり、この年の発電量だけでも約200万kWと言われる。これは一般的な発電所2個分にも相当する電力だ。

自然エネルギーを有効活用するための家庭用蓄電システムは、だからこそ求めらているのだ。

量産LiDARを提供する世界唯一の会社…ヴァレオ


自動運転レベル3を考慮する市販車、アウディ『A8』が日本でも先日発売され、話題になった。レベル3に必須と言われる「LiDAR」(物体を検出するためのレーザースキャナー)が装備されている。そのLiDARを提供するのが、フランスの大手電装部品メーカー、ヴァレオだ。
アウディA8に搭載されているLiDAR「SCALA」アウディA8に搭載されているLiDAR「SCALA」
LiDARは高価な部品であるが、これから市場の成長が見込まれるため、大きなビジネスになると見られており、世界中の部品メーカーやベンチャーがこぞって参入している。そんな状況のなか、世界で最初にLiDARを量産したのがヴァレオ。生まれつつある巨大市場に先鞭をつけたことになる。

ではなぜヴァレオがLiDARの量産で先行できたのか。「イベオ(ドイツのLiDAR技術会社)の要素技術の利用について独占契約を結んだこと、その技術とヴァレオの量産化技術を組み合わせることによって、光学部品が回転するという量産が難しい部品(LiDAR)を量産化することに成功した」(担当者)とのことだ。

イベオは、LiDARの世界では米ヴェロダインに並ぶ2トップと言われている企業である。その技術と、大手部品メーカーならではの量産技術を組み合わせることで、世界に先駆けることに成功した。

そして第二世代となるLiDAR「SCALA 2」がCEATECで世界初公開された。筐体の大きさを変えずに、垂直方向の視野角を3倍にした。世界中の自動車メーカーが注目する新製品である。

《佐藤耕一》

日本自動車ジャーナリスト協会会員 佐藤耕一

自動車メディアの副編集長として活動したのち、IT企業にて自動車メーカー・サプライヤー向けのビジネス開発を経験し、のち独立。EV・電動車やCASE領域を中心に活動中。日本自動車ジャーナリスト協会会員

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