【ニュル24時間】「レースは人間を作るために」STI 平川社長…ニュルに挑戦する理由とは?

モータースポーツ/エンタメ モータースポーツ

STIの平川良夫社長
  • STIの平川良夫社長
  • STI/SUBARU(ニュル24時間レース2018)
  • STI/SUBARU(ニュル24時間レース2018)
  • STI/SUBARU(ニュル24時間レース2018)
  • STI/SUBARU(ニュル24時間レース2018)
  • STIの平川良夫社長
  • STI/SUBARU(ニュル24時間レース2018)
  • STI/SUBARU(ニュル24時間レース2018)
まもなくスタートする2018年のニュルブルクリンク24時間耐久レース。STIとSUBARU(以下スバル)にとって今回で11回目となるチャレンジとなるが、同社はどうしてこのレースに挑むのか? STIの平川良夫社長に聞いた。

----:スバルとSTIがレースを続けていくことにどのような意味があるのでしょうか?

平川社長(以下敬称略):24時間のレースをおこなうためには、とても手間とお金がかかります。費用は億単位。それを販促促進活動と考えると、とても経済合理性はありません。しかし我々は、大きなテーマを持ってニュル24時間耐久レースに挑みます。それを考えると経済合理性が成り立つし、もっというと費用対効果は高いです。それは、人の育成。そして成長です。

----:具体的にはどういうことでしょう?

平川:モータースポーツと量産車の開発を比べると、量産車は設計や実験と並行しながら会議室で話し合って開発が進みますよね。だからものすごく時間がかかるし、長い期間を経ての作業なのです。ところがモータースポーツの場合は、会議室で会議をしているとレースが終わってしまうんですよ。

では何が必要か? 自らが広い視野と洞察力が必要になる。その場で一人ひとりが建設的な決断を下さないとレースが成立しない。そういうことは一般的には研修センターや社外の講習などで学んだりするのですが、それでは頭で理解できてもなかなか行動が伴わない。レースではそれを身に着けることができます。

----: 人を大きく育てる、と。

平川:レースはドライバーがよければ勝つというわけではなくて、監督がよければ、クルマがよければ、メカニックがよければ勝つわけでもない。すべてが最高の状態にからみあわないと勝てません。ということはだれか一人の人間がすごくてもダメなのです。レースの現場では誰もが常に結果をともなった動きができるように成長している。だから能力育成にはもっとも効果的といえるでしょう。

今回も開発から若手をつれてきて、ここで学ばせて今後の量産車開発生かすように考えている。こういう場にどっぷり浸からせることで人材形成ができるのです。スバルからSTIに出向させ、そういう経験をさせてプロセスを学ばせる。そしてスバルに戻って量産車開発をリードしていく人物を育成している。それがニュルに挑戦する理由のひとつです。

----:いつからそう考えるようになったのでしょうか?

平川:かつては「いいクルマをよりよく作ってお客さんとの間のコミュニケーションを作る場」という、ありがちなプロセスでモータースポーツを使っていました。参戦11年目の今年からは人物形成のフェーズにしていこうということで、本格的に次の一歩を踏み出したのです。

----:フェーズが変化した理由は?

平川:スバルグループとしてもっと真摯にお客様と向き合わないといけない。自分たちがやっていることが正しいのかをきちんと見直す必要がある、という考えに至ったからです。

----:ファンやスバル車オーナーに対してはいかがでしょう?

平川:それはSTIという会社が生まれた経緯から話すと伝わりやすいと思います。STIは『レオーネ』から『レガシィ』に商品が切り替わるのとほぼ同じタイミングで生まれました。

その目的のひとつが、「お客様がスバルのクルマに誇りをもって乗ってほしい」ということ。それまでのスバル車は、正直なところお客さんが誇りをもって乗っていただいているクルマではなかったでしょう。STIの歴史の中でWRC(世界ラリー選手権)活動がありますが、誇りを持ってもらうための一つの手段がWRCだったのです。

----:誇りを与えることが大切な役割と。

平川:量産車と競技車両が離れていてはいけません。

----:一般のユーザーさんの乗っているクルマの延長線上に競技車両があるべきだ、ということですね。

平川:そうです。ありがたいことに、今のスバルはお客さんが歩み寄ってくださる。だから私たちとしてもしっかりコミュニケーションをとっていく必要があると考えています。スバルはそういうお客さまに支えられている。私たちはマジメに真摯に技術と向かいあっていかないといけない。そうしないとスバルは前へ進めないのです。


平川氏はスバル(富士重工業)の開発部門に長年席を置き、排ガス規制、衝突安全、軽量化プロジェクト、アイサイト開発、そして経営企画とさまざま経験を踏み、現在はSTIの代表取締役社長として会社を率いている。そんな平川氏だからこそ、スバルやSTIがどうレースに関わるべきかを冷静に見ていることを実感した。ちなみに、平川氏がSTIとかかわった最初のプロジェクトは世界最高記録を樹立した「レガシィ10万キロ速度記録チャレンジ」だという。
《工藤貴宏》

編集部おすすめのニュース

特集