【池原照雄の単眼複眼】水素ステーションの遅れ挽回…推進母体「ジェイハイム」が始動

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トヨタ MIRAI と水素ステーション(参考画像)
  • トヨタ MIRAI と水素ステーション(参考画像)
  • 日本水素ステーションネットワーク(JHyM)発作の記者会見
  • 日本水素ステーションネットワーク(JHyM)の菅原社長
◆自動車、エネルギー、金融などオールジャパンの体制構築

燃料電池車(FCV)向け水素ステーション(以下、ステーション)の整備を促進するため、自動車メーカーやエネルギー、商社、金融事業者が設立した「日本水素ステーションネットワーク」(略称・JHyM=ジェイハイム)が3月5日に都内で記者会見を開き、事業に着手した。ステーション運営事業者の投資負担などを軽減する新たなスキームを導入、設置が遅れ気味だったステーションの展開を加速する。

ジェイハイムは、トヨタ自動車、ホンダ、日産自動車の自動車3社、JXTGエネルギー、岩谷産業、日本エア・リキードなどのエネルギー・ガス企業6社、さらに豊田通商、日本政策投資銀行を加えた11社による合同会社として2月に設立されていた。オールジャパンによるステーションの整備とFCVの普及を通じ、国家戦略でもある「水素社会」構築の一翼を担っていく。

国内のステーションは現在、近く完成するものも含め101か所となっている。まだ50か所に満たない欧米の主要国との比較では先頭を走っているものの、「100か所」は本来、2015年度中の目標であり、2年ほど遅れをとった。政府が17年12月に策定した「水素基本戦略」の目標では、20年に160か所(FCVは4万台普及を想定)、25年に320か所(同20万台)、さらに30年には900か所(同80万台)―の数値を掲げた。こうした目標実現のためには、20年代の後半にはステーションの運営が補助金などに頼らなくても可能になる「自立化」が必要としている。

◆事業者が運営に専念できる新スキームで設置を加速

新発足したジェイハイムは、地域ごとのステーション整備方針を策定したうえで運営事業者とともにその新設を進めていく。設置スピードを加速させるために、資金面のサポートなどメリハリの効いた整備スキームを立案している。ステーションの建設には国から半額相当の補助金が支給されるが、これに加えジェイハイムが金融機関や投資家から調達した資金も投入する。ジェイハイムの菅原英喜社長によると、建設総額の10~20%程度を調達資金で賄う方針という。

建設投資は、ステーションを設置するエネルギー会社などの負担となるものの、完成したステーションはジェイハイムが資産譲渡を受け、運営を元々の設置会社に委託していく。ここが新スキームのミソであり、設置会社は早期に初期投資を回収し、運営に専念できるようになる。資金調達はジェイハイムへの参加企業以外からも広く募ることになるが、「すでに数社から話しをいただいている」(菅原社長)そうだ。

◆建設、運営ともに早急な規制緩和を

一方、ジェイハイムは各ステーションから事業内容や顧客など運営に関する情報を集約。これらの情報を規制の見直しや機器の標準化などにつなげ、コストダウンを通じてステーションの「自立化」も推進していく。こうした取り組みにより、ジェイハイムは21年度までの4年間で、新たに80か所のステーション開設を目標に掲げ、「現在の点から線へ、線から面へと全国にネットワークを広げていく」(同)構えだ。

もっとも、その実現にはステーション当たり4億~5億円を要する建設コストの速やかな低減や建設・運営に関わる規制緩和などが不可欠だ。ジェイハイムに参画した岩谷産業の谷本光博社長は、「設備の材質の品質は、欧米より高いものが求められるし、ステーションの運営でも欧米では不要となっている国家資格者の配置が必要」と、規制の実情と緩和を訴えている。

◆“花とミツバチの関係”へFCVもコスト低減が課題

さらに、インフラを利用するFCVの普及努力もカギを握る。今のところ、国内のFCVはバスなども含め約2400台にとどまる。現在、国内で販売されている乗用車はトヨタの『MIRAI(ミライ)』と、ホンダの『クラリティ フューエルセル』だが、いずれも700万円台であり、約200万円もの国の補助金を差し引いても500万円を超える“高級車プライス”だ。

トヨタは20年ごろの発売が見込まれるMIRAIの次期モデルでは、心臓部である燃料電池システムのコストを現行モデルより半減させ、車両価格の引き下げにつなげるという。また、20年代には現在の乗用車やバスに加え、商用車などの車種バリエーションも拡充する計画だ。ホンダも米GM(ゼネラルモーターズ)との合弁会社で開発を進めている燃料電池システムを20年くらいには商品化し、コスト低減を図る。

トヨタが15年2月にMIRAIのラインオフ式を元町工場(愛知県豊田市)で行った際、豊田章男社長は車両とインフラの普及には「ニワトリと卵の関係でなく、 “花とミツバチ”の関係を構築できるようにしたい」と話していた。FCVの普及が先か、ステーションの整備が先かというのではなく、「お互いが不可欠な存在として共に前へ」(豊田社長)というわけだ。ジェイハイムの設立によって、ようやくそうした推進機運が高まってきた。
《池原照雄》

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