光岡 ヒミコ 新型の剛性アップに貢献したデザイン…デザイナー[インタビュー]

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光岡 ヒミコ
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光岡はベース車両のモデルチェンジに合わせ『ヒミコ』を2代目に進化させた。そのデザインは初代を踏襲しながらも、さらに抑揚を持たせアグレッシブに見えるようにしているという。

◇海外でも人気のヒミコ

ヒミコは2008年12月にマツダ『ロードスター』をベースに発売され、2017年まで約9年間製造された。同社ではホイールベースを伸ばし、またリアのスプリングを交換するなど、「光岡のラインナップの中でもかなり手間暇、作業工程のかかるクルマのひとつで、1か月の間に2から3台しか作れない車両だ」と紹介するのは光岡自動車営業企画本部執行役員の渡部稔氏だ。

初代ヒミコは9年間で271台の受注があり、国内市場で158台、海外では113台販売され、「海外でも人気の高いモデル」という。現在光岡はマカオ、マレーシア、イギリス、モナコを含め5カ国6拠点で展開しており渡部氏は、「新型ヒミコもフラッグシップカー的な扱いで海外のマーケットにも投入し、市場を拡大させたい」と意気込みを語る。

◇光岡3つのポイントを具現化

さて、同社企画開発課課長の青木孝憲氏は、光岡のクルマ作りには絶対に外せない3つのポイントがあるとし、「他の誰もが乗っていないクルマであること。国産でデザインが他よりも際立っていること。最後はそれでいてナショナルブランドよりも安価だということだ」と話す。

青木氏は、「ナショナルブランドのオープンツーシーターを選ぼうとした時に、独自の感性を持っている人であれば他の誰かが乗っているものよりも、自分だけの商品、自分の個性にあったものが欲しいのではないか」とし、実際にヒミコユーザーにもそういった価値観を持った人が多く見られるという。そして、「現在これだけのロングノーズで美しいクルマはなかなかない。それでいて国産の安心感があるのはこのヒミコだけだ」と述べる。

また、「自分たちでこのヒミコを作って乗っていると、大量生産車では味わえない特別な価値観を得ることが出来る」という。それは、「一般道や高速道路を問わず走っていると必ず声をかけられ、写真を撮られる。そして、このクルマはどこのクルマかとか、綺麗なクルマだとかいわれると、まるで自分が褒められているかのような嬉しい気持ちになる」と自らもヒミコへの愛情を表す。そして、「何よりもこのスタイリングで心に余裕を持って、優雅にクルマを流す、ドライブしていると心が開放されたような気持ちの良い体験をすることが出来る」とした。

◇初代を踏襲しながら抑揚をより激しく複雑な面構成に

その特徴的なデザインについて、同社企画開発課デザイナーの渡辺清和氏は、「初代ヒミコのフォルムは踏襲。しかし、初代ヒミコは綺麗なデザインと面で作られていたのに対し、今回は思い切って抑揚を激しく、形状を複雑にすることで、より個性的なデザインを目指した」という。

もっとも特徴的なのはフェンダーラインだ。渡辺氏は、「戦前のクラシックカーなどのフェンダーラインをどのように光岡流にアレンジしようかを考えた」と話す。さらにそのフェンダーは、「ボンネットより高くし、フロント周り(グリル周辺)は形状を深くし、流れるようなラインを採用している」と述べる。

なぜあえて複雑な造形を採用したのか。渡辺氏は「自分の好み」と笑いながら、「そちらの方がヒミコに似合うデザインだと考えた。先代はホイールベースを700mm延長していたが、今回は600mm延長に留めながらも、全長は同じ。そのぶんグリルを後ろにすることでより形状を深くし、個性的に表現した」と説明する。

また、フロント部分は、「単に綺麗というだけではなく、もっとアグレッシブに見せてもいいと思った」と話す。

◇パネルのつなぎ目にもこだわり

形状の複雑さについて渡辺氏は、面と面のあわせ部分を例に挙げ、「先代ヒミコの場合は、パネル同士をつなげ、その部分に曲率を持たせて仕上げているが、新型ではそういう単純な面の構成ではなく、例えば一度膨らませてから面同士をつなげたり、あるいは削ぎ面からつなげて曲面にしたりなど、凝った面構成にしている。そういった小さいこだわりの積み重ねで、より完成度を高めている」とこだわりを語る。

また、ヒミコのリアには黒い箱状のものが取り付けられている。これは法規上の問題で、ナンバープレートをより起こして取り付けなければいけないことから考えられたもので、「単にナンバーのためだけに形状を作ると、ナンバー周りのみ膨らみが大きくなってしまい格好が悪い。そこで、古いヨーロッパのオープンカーなどは、荷物を積むところがないのでキャリアを付けてそこにトランクを載せていたので、そのイメージでデザインしている」と話す。

◇ボディ構造にも大きな変化

特徴的なフェンダー周りでは構造に関わるいくつかの工夫が見られる。実は初代ヒミコではボディとフレームをフェンダーあたりで留める場所がなく、剛性を出しにくかったのだ。

そこで新型では、「フェンダーの奥まった部分にフレームとボディを留めるところを作り、ボディ剛性を上げている。ただしその留める部分を表に出してしまうとネジが見えてしまうので、別パーツを作り、その上からパネルを被せた」と説明。

さらに、ホイールハウスの中に溜まった負圧が逃げやすいような形状を取り入れた。その結果、「初代から比べたら高速走行なども不安なく走れるだろう。またアンダーパネルも空力を考慮し、走りにも安定感が出るようにしている」とコメントし、実際の走りにもデザインが貢献していることを強調した。

《内田俊一》

内田俊一

内田俊一(うちだしゅんいち) 日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かしデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。また、クラシックカーの分野も得意としている。保有車は車検切れのルノー25バカラとルノー10。

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