ハイブリッドはすべての環境車に適用できるコア技術【トヨタ プリウス 20周年】

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初代プリウスの主査を務めた現トヨタ会長の内山田竹志氏
  • 初代プリウスの主査を務めた現トヨタ会長の内山田竹志氏
  • トヨタ電動化技術説明会
  • 初代プリウスのカットモデル
  • トヨタパワートレーンカンパニーの安部静生常務理事
  • トヨタHV先行開発部の久保馨チーフプロフェッショナルエンジニア
  • 左からトヨタHV先行開発部の久保馨チーフプロフェッショナルエンジニア、トヨタ パワートレーンカンパニーの安部静生常務理事、ジャーナリストの御堀直嗣氏
  • トヨタ内山田竹志会長(右)と御堀直嗣氏(左)
  • 初代プリウス のカットモデル
「21世紀に間に合いました」のフレーズで、トヨタ『プリウス』が発売されたのは、1997年12月であった。それから20年の歳月が過ぎ、この間に、トヨタは世界累計で1100万台のハイブリッド車(HV)販売実績を残している。

そして2017年11月末、トヨタは、「電動化技術説明会」をメディア向けに開催した。初代プリウスの主査を務めた現トヨタ会長の内山田竹志氏は、「それまでの自動車にはなかった電動化の技術の一つひとつが、この20年間にどのように進化したのか。ことに初代プリウスをご存知のモータージャーナリストの方々はご興味があるのではないかと、それを念頭に催しました」と、語る。

◆大きな技術進化を果たした、2代目プリウス

今日、トヨタは全カテゴリーにHVをラインアップしている。そのうえで、トヨタは、(3世代目プリウス発売後の)2009年12月にプラグインハイブリッド車(PHV)を少量生産し、12年から市販を開始した。(4世代目プリウスリリース後の)17年2月には2代目PHVを発売し、発表会場で内山田会長は、「HVの次のエコカーの本命は、PHV」と話した。また、2014年12月に燃料電池車(FCV)の『ミライ』を世界初の量産車として発売しているトヨタだが、一方で、電気自動車(EV)の量販はまだなく、EV開発でトヨタは遅れているのではないかとの声が出ている。

その点について、パワートレーンカンパニーの安部静生常務理事は、「トヨタがHVを開発して世の中に広めてきたのは、HVだけにとどまらず、その先に続くすべての環境車に適用できるコア技術としてHVをしっかり開発したいという考えがあったということを、まず理解していただきたいです。HVとEVが別々の技術で、EVでトヨタが遅れているというのは誤解です。トヨタは、地球環境のために、環境車を全方位で提供するためにこそ、HVをしっかり開発し、グローバルに展開していることを理解していただくため、この技術説明会を催しました」と、語るのである。

HV技術を20年磨き続けてくる間に、革新的と思われる大きな出来事があったと安部常務理事は続ける。

「初代プリウスは、燃費を通常のエンジン車の2倍にしたインパクトがありましたが、2代目では、お客様にとって購入の大きな動機につながる技術開発がありました。電圧を2倍にする昇圧システムを使い、電気システムを小型化しながら動力性能を高めた結果、HVは燃費の良さだけでなく走りもいいという価値を追加し、飛躍的に販売台数が伸びたのです。このことは、お客様の求める”欲しいクルマ”にHV技術が適合した一つの例です。

もう一つは、コンパクトカーとしてお求めやすい価格で、安心して皆さんにお使いいただける『アクア』を発売することにより、年間100万台のHV販売を実現する足掛かりとなりました。モーターもバッテリーも含めた小型化の技術により、一般のご家庭で普通に使えるHVにすることができたのです。お客様が求めるクルマにいかにしていくかが、環境車の普及の根本にあり、そのようにお客様に好まれる技術開発をしていくのがトヨタです」。

このことは、PHVの開発にも通じると、安部常務理事は言う。

「将来的な二酸化炭素(CO2)排出削減を考えると、外部からの充電を利用した本来の電気利用のクルマとしていかなければなりません。HVのままでは、ガソリン消費量を減らすことはできても、限界があります。その際も、お客様が買い求めやすく、利用しやすく、不自由のないPHVが、もっとも近い存在だと考えます。

内山田会長も、ユーザーの利便性を考えると、小さなバッテリーで、日常の用途ではEVと同様に使え環境性能を発揮できると考え、HVの次のエコカーの本命はPHVと言っています。したがって、PHVを開発のゴールと考え、開発を急いでいるところです」。

◆ユーザーと社会のためのHV

同時に、HVの開発はなお継続されるのだろうか。

安部常務理事は、「2050年までにCO2レベルを下げないと社会的弊害を生じるため、年間で4%のCO2削減を続けていかなければなりません。それをクルマで実行するには、まずHVをグローバルで販売していくことが必要です。それでもCO2削減が足りなくなる時代が来たときには、PHVを広く普及させていく必要が出てきます」と、世界の環境情勢を語る。

CO2排出量を大幅に下げなければならないと安部常務理事が述べた背景は、2009年7月のG8ラクイラ・サミットにおいて、2050年までに先進国は現状から80%のCO2削減をしなければならないということが、主要先進国で支持されたことを指す。

そして、「クルマで走る距離が短くていいというお客様には、EVをしっかり展開していく必要がありますが、環境車はどれか一種類でいいということはなく、適材適所で提供していかなければなりません。量販という点では、PHVが広がっていくのではないでしょうか。環境車を必要とするのは社会であって、ユーザーではありません。ユーザーは、目的にあったクルマを自分の使いたいように使いたいのです。私自身も含め、クルマの利用者は便利だから使うのであって、より便利に、使いやすくしていくのがトヨタの使命です」と、語るのである。

HV先行開発部の久保馨チーフプロフェッショナルエンジニアは、「作り手からすると、EVは大きなバッテリーをどう搭載するかが一番の課題ですので、HVに比べれば作りやすいと言えるかもしれません。一方、初代プリウスを開発するときに困ったのは、モーターが2個、インバーターも2個、そして駆動用バッテリーを搭載しますが、エンジン関連システムが無くなるわけではなく、難しさがたくさんありました。それでも、ユーザーの使いやすさのために頑張って開発しました。それが、20年を経て、より安く、小型になったところを、今回の展示で見ていただけたと思います」と、自らの体験をふまえ語った。

HV用モーターコアは初代から58%の小型軽量化、バッテリーパックは67%小型化、パワーコントロールユニット(PCU)は体積・質量が2分の1で、出力密度は2.5倍に高められている。一目でわかるほど大幅な小型化が、技術開発の大きな躍進を示している。

最後に安部常務理事は、「市場を決めるのはお客様なので、お客様が選んでくださる選択を自動車メーカーが行うのがビジネスだと考えています。HVをコア技術としているのは、ユーザーのためであり、それが社会のためにもなるはずとの信念でトヨタは取り組んでいます」と、締め括った。

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《御堀直嗣》

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