【トヨタ カムリ(米国仕様)5000km北米試乗】乗り心地の滑らかさ、静粛性の高さ、シートの秀逸さの「三位一体」

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トヨタ カムリ 5000km北米試乗
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トヨタ自動車のミドルクラスセダン、新型『カムリ』(米国仕様)で2017年北米皆既日食を追いつつ、5000km以上を走破した。高速道路、一般道、山岳路、時にはラフロードと、さまざまな道路での走りを通じて得られたインプレッションをお届けしたい。

◆歴代で最もドラマチックなフルモデルチェンジ

北米市場で15年連続、乗用車カテゴリーにおける年間販売台数第1位(※)の座を守ってきたカムリ。今回テストドライブを行った新型の2018年モデルは1992年にワイドボディ化されたモデルが初登場してから米国では8代目に相当する。(※2002年1月~2016年12月。トヨタ自動車調べ)

日本モデルの発表会で、カムリの開発陣は「フルモデルチェンジでの変化は歴代のなかでも最もドラマチックなものと自負している。デザイナーが思い描く理屈抜きにカッコいいデザインをそのまま実車の形にした。走りにも徹底的にこだわり、ファンな操縦性を実現した」と語っていた。テストドライブを通じてそれが自惚れでないことは十分に伝わってきた。
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まずはデザイン。新型カムリの全高は旧型に比べて25mm減の1445mmと、今日のミドルクラス4ドアセダンとしてはきわめて低い。その低さは歴代モデルにはない、独特の攻撃的なテイストのデザインを生むのに貢献している。

デザインは見る人の主観によるところが大きく、絶対的な良し悪しを論じることはあまり意味がない。皆既日食を追う長大なドライブを通じ、そのデザインについてひとつ印象に残ったのは、新型カムリは都会だけでなく大自然にも似合うクルマになったということだった。

カムリはもともと都市型のモデルで、郊外に持っていくと存在感が失われる傾向にあったが、新型はそのような無難さとは無縁だった。ワイオミングの岩山、針葉樹林帯の広がるシェラネヴァダ山脈、ネヴァダの砂漠など、大自然の中でも埋没することも悪目立ちすることもなく、ナチュラルでありながら高い存在感を発揮するデザインであった。

◆乗り心地の滑らかさ、静粛性の高さ、シートの秀逸さの三位一体
トヨタ カムリ(北米仕様)
ロングドライブを通じて得られた新型カムリの美点を3つ挙げるとするならば、「あらゆる路面で保たれる乗り心地の良さと静粛性の高さ」「圧倒的な疲労の少なさ」「経済性の高さ」であった。

前述のように新型カムリは車高が1445mmと、プレミアムミドルサイズ(中型高級車)の4ドアセダンモデル並みに低い。これは単にルーフをカットしたりサスペンションのストローク(上下動の幅)を小さくしたりといった小手先の技で車体を低くしたのではなく、トヨタの新世代開発・生産技法「TNGA(Toyota New Global Architecture)」を適用しつつ、クルマ全体を低重心化することで達成したものだという。

実際にドライブをしてみると、新型カムリは良路だけでなく、老朽化が進んだコンクリート舗装やフラットダート(平らな未舗装路)でも乗り心地がきわめて良かった。車高は低いが、サスペンションストロークはとても豊かで、路面の凹凸を上下の動きでほとんど吸収した。これだけサスペンションを柔らかく設定しても操縦性が崩れなかったのは、TNGA設計による低重心化の恩恵と言うべきだろう。ボディシェルも強固に作られているとみえて、路面から大きな入力があっても余計な振動を室内に伝えることがなかった。

静粛性も優れていた。最高速度80マイル時(約130km/h)のハイウェイクルーズでも、オーディオの音を高める必要性は感じられなかった。運転席と助手席の間、および前後席間の会話も小声で事足りた。タイヤはアメリカのクルマらしくマッドアンドスノー(未舗装路やごく軽い積雪であれば走行可能な全天候型タイヤ)が装着されていたが、ロードノイズはそれを感じさせないほど低かった。室内への騒音透過を極小にした代償として、ドアミラーまわりで風を巻く音が少し目立ったのが小さな不満点として記憶に残った。

振動・騒音がきわめて小さいことは疲労軽減に大きく役立つが、それだけではロングドライブは快適なものにならない。新型カムリで傑出していたのは、フロントシートの出来だった。日食を観望するため、サンフランシスコからワイオミング州中部まで1日で1000マイル以上を走行したが、それでも身体の違和感はまったくと言っていいほどなかった。過去のカムリにはなかった特徴であるばかりか、カムリよりさらに上位のモデルよりも優れていると思われるほどだった。乗り心地の滑らかさ、静粛性の高さ、シートの秀逸さの三位一体が、新型カムリを格好のロングツアラーたらしめていると感じられた。

◆オールニューTNGAのパフォーマンス
トヨタ カムリ(北米仕様)のガソリンエンジン
今回の皆既日食ツーリングの足となった個体は米国仕様で、日本では販売されていない2.5リットル4気筒直噴エンジンと8速ATからなるパワートレーンを搭載するものだったが、エンジン、変速機とも日本のハイブリッドモデルと同様、TNGAによる完全新設計のユニット。そのパフォーマンスは十分に満足の行くものだった。

エンジン出力は旧型の同排気量エンジンに対して25馬力アップの203馬力。1馬力あたりの車両重量は7.4kgと、かなりスポーティな数字だ。さすがに301馬力を発揮する3.5リットルV6と肩を並べるほどではなく、パワーフィールのチューニングも穏やかにしつらえられているため、特別速いようには感じられなかったが、いざフルパワーを発生させてみると、ベースエンジンとしてはかなり良い加速力を示した。最高速度80マイル時の高速道路への流入でも、合流地点までにきっちりと本線の流れと並行する速度まで持っていくことができた。

◆まとめ

TNGAによってほぼすべてが完全新設計となった新型カムリは、アグレッシブなデザインを軸とした大幅な若返りと、カムリをベストセラーモデルに押し上げてきた手堅く良心的な作りを両立させたようなモデルだった。

実質4日で5000km超を走っても疲れ知らずでいられること、路面を選ばない乗り心地の良さ、低重心設計による安定性の高さ、広大きわまりない室内とトランクルーム、高い経済性等々…日本市場においても、アクティブなツーリングを楽しみたいというカスタマーにとって、新型カムリは「本当にいいクルマ」と感じられるであろう。

◆テストドライブ車の仕様
車名:トヨタ カムリ LE(米国仕様)
モデルイヤー:2018年
エンジン:2.5リットル直列4気筒直噴DOHC
車体寸法:全長4879×全幅1838×全高1445mm ホイールベース:2824mm 空車重量:1495kg

日本仕様は、2.5L ダイナミックフォースエンジンと、新世代ハイブリッドシステム「THS II※」を組み合わせ、優れた動力性能と低燃費を実現。※Toyota Hybrid System II
日本仕様について詳しくは画像をクリック!

カムリ

《井元康一郎》

井元康一郎

井元康一郎 鹿児島出身。大学卒業後、パイプオルガン奏者、高校教員、娯楽誌記者、経済誌記者などを経て独立。自動車、宇宙航空、電機、化学、映画、音楽、楽器などをフィールドに、取材・執筆活動を行っている。 著書に『プリウスvsインサイト』(小学館)、『レクサス─トヨタは世界的ブランドを打ち出せるのか』(プレジデント社)がある。

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