デザインのインパクトは強烈である。前から見ていると、このクルマのカテゴリーがなんだったのかわからなくなるほどのアバンギャルドなキリリ顔。横っ腹に太く入れられたシルバーの一直線も大胆で、デザイナーの思い切りのよさと、それを受け入れるプジョーの首脳陣の豪快さがうかがえる。でも、背が低めに抑えられコンパクトではあるものの、横からのシルエットはたしかにSUVだ。タイヤのまわりに黒い樹脂がほどこされているのも、安定のSUVなのである。運転席に座ると、体のラインにぴたりと張り付く硬めのシート。エアコンやハザードランプ、カーナビのスイッチは、飛行機のコックピットを連想させるように一直線に並んでいる。そして、このところのプジョーのマイブームである、直径の小さなハンドル。正直なところ、私はこのハンドルが苦手だ。小さくて街中や高速を走らせると心もとないのである。そもそも小さくした理由が、以前、確認したところによると、その奥にある計器を見やすくするためというのだが、私のドラポジだと、なにかしらハンドルが邪魔になって見えなくなるし。相も変わらずこのハンドルか…と気落ちしながら走らせると、やはりどうもしっくりこない。都会をちょこちょこと走っていると、落ち着かないのである。ところが、ワインディングに持ち込んだとたん、その印象が一気に変わる。なんだこの飛ぶような走りは。もともとプジョーの1.6リットル+ターボエンジンの、瞬発力のある軽い走りは肉食系世代の私のお気に入りではあったけれど、このボリューム感あふれるSUVでも健在だったのだ。軽い。とにかく軽い。そしてそれを支える足回り。ひょいひょいとコーナーをクリアしていく感覚は爽快である。それを可能にするのが、このハンドルの「小ささ」だ。さんざん、ボコボコに叩いておきながら恐縮だが、この小さいハンドルだからこそ操作がしやすく、ワインディングが楽しめるのである。ウィンカーを出したときの手ごたえや、ウィンカー音は昭和の匂いがしたり、レーンキープシステムは、白線をはみ出したら警告もなしに、いきなりぐぐっとハンドルをもとに戻すように介入したりと、自由な動きはフレンチだからなのか。でも、なんか憎めない、SUVの自然児なのである。■5つ星評価パッケージング:★★★★インテリア/居住性:★★★パワーソース:★★★★フットワーク:★★★★オススメ度:★★★岩貞るみこ|モータージャーナリスト/作家イタリア在住経験があり、グローバルなユーザー視点から行政に対し積極的に発言を行っている。主にコンパクトカーを中心に取材するほか、最近は ノンフィクション作家として子供たちに命の尊さを伝える活動を行っている。レスポンスでは、アラフィー女性ユーザー視点でのインプレを執筆。