【インタビュー】合併シナジーでソリューション強化、自動車メーカーへの提案力伸ばす…ZFジャパン 中根義浩社長

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ZFジャパン 中根義浩社長
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ZFジャパンは、2015年に買収を完了したTRWオートモーティブ・ジャパンの本社機能を統合。新本社を、この春横浜に開設した。その“新生ZFジャパン”の舵とりをするのが、社長の中根義浩氏だ。

中根氏は、自動車部品サプライヤーの叩き上げとして、TRWおよびZFジャパンの社長に昇り詰めた人物。ZFの考える自動車と自社の未来像を語ってもらった。

----:ZFがTRWを買収したことで、どのようなシナジー効果が得られるのでしょうか。それに際し、そもそもZFとTRWはどのような強みを持っていた会社であったかを確認させてください。

中根義浩社長(以下敬称略):お客様(自動車メーカー)の面でまず言いますと、ZFはプレミアムクラスのクルマ、たとえばドイツの高性能車への技術的先進性を備えた装備を得意としてきました。それに対し、TRWは、先端というよりはファーストフォロワー(最初の追従者)として量産車種にアフォーダブル(手頃)な価格で提供ができる強みを持っていたと思います。

技術の視点では、ZFはテクノロジーがキーワードの会社であり、トランスミッションやダンパーなどの製品に強く、さらにEモビリティ(電動車両)の側面では電気的なモーターやインバーターなどを取り扱っています。TRWは、駆動系の取り扱いがなく、曲がる、止まるの部分で、たとえばシートベルトやエアバッグといった守るための製品が中心でした。ほかに、電子制御やセンサーなどで日本のお客様と何十年も広く取引をさせていただいてきた実績を持ちます。

ZFとTRWが一緒になったことで、走る、曲がる、止まるのすべてに対応できるようになりました。

----:メガトレンド(安全・効率・自動運転)の要求が高まるなか、ZFの特長はどこにあるでしょう。

中根:See(見る)、Think(考える)、Act(動かす)というキャッチフレーズを作って、センサー系、制御系、アクチュエータ機能の3つすべてを一貫してお客様にご提供でき、システム化できる要素技術を持っているところが、ZFの強みだと思っています。

一方、お客様のなかには、ソフトウェアは自社開発したいといったご希望もあり、それに対しては、トランスミッション、ブレーキ、パワーステアリングなど個別にお応えすることができます。その際にも、我々自らシステム制御を知っていることが、お客様の考えるソフトウェアに最適な要素技術をご提供できる強みにもなっていると思います。

お客様とお話しするなかで、そうしたZFの特長に期待を持っていただけていると実感しています。同時にまた、一緒に取り組むことによって何ができるのかという我々からの提案を待ってくださっています。

----:自動運転へのロードマップが示されています。日本の例では、2020年までに自動車専用道路での自動運転を実現するなどが挙げられますが、ZFは、それらに対してどのように取り組んでゆくのでしょう。

中根:2020年や2025年を節目とする自動運転機能の導入について、その時期を視野に技術要素の準備をしています。

ただし、永年にわたり安全に取り組んできた弊社としては、信頼性を持ち、お客様が安心して使って戴ける確実なものにしていかなければならないと考えています。時期の目標はあっても、そこに何か課題が残されているなら、確実にお客様の命を守ることのできるシステムを提供することを第一に取り組んでいます。それが、ZFのやりかたです。

----:自動運転へ向けては、機能開発の進捗が早くなっていますが、ZFの持ち味はどのように活かされていかれるのでしょう。

中根:情報量が増え、ロジックが複雑になっていくなかで、人工知能が必要になってくるのではないかとの話も出てきています。その際、いろいろな技術を持つ企業とのパートナーシップが活かされていくことになるでしょう。それがないと、時代に乗り遅れかねないと思っています。

では、どのようなパートナーと組んでいくか…その選択肢の最大化のため、ZFのドイツ本社は、昨年、ツークンフトベンチャー社を立ち上げ、技術を持つ会社を発掘し、投資することをはじめています。そして今年2月には、ピッチナイトという催しを行い、そこに海外15か国50社ものスタートアップ企業に集まってもらいました。新しい技術やその知見をプレゼンテーションしてもらい、とても好評だったと聞いています。初の催しでしたが、今後も続く可能性があります。

----:See、Think、Actの取り組みの中で、ZFらしさを知ることのできる具体例はありますか。

中根:運転支援や自動運転に向けて、センサーや画像解析、制御など、SeeやThinkのさらなる進化と重要性が話題になりがちですが、実は、それを実行するActが大きな比重を占めていると認識しています。いくら認知や画像解析、判断が優秀に行われても、それをクルマの挙動として動かすことができなければ確実な成果は得られません。

ZFが、昔から得意としてきたトランスミッション、ダンパー、ブレーキ、パワーステアリングの知見が、最終的に信頼性を保証していきます。

たとえば、ダンパーについて、CDC(電子制御減衰力連続可変ダンパー)と呼ばれる電気制御により減衰力を調節するダンパーがあることで、カメラの画像解析によって路面に穴があるといった情報が得られれば、減衰力を素早く最適に変えて乗り心地を高める発展性が生まれます。そのように、自動ブレーキ以前に、乗り心地や操縦安定性を向上させる基本性能のところで、ドライバーが意図した通りに走れたり曲がれたりすることが、日常的な安全に直結します。また、無理な挙動を抑えれば燃費の向上につながり、効率も高められます。

----:今後の事業における可能性や展望を教えてください。

ZFが、TRWの買収により包括的なサプライヤーとなったことで、クルマの次元をいっそう高めるお手伝いができればいいと思っていますし、お客様のためになる企業でありたいと考えています。

センサー(See)、ソフトウェア(Think)、アクチュエータ(Act)それぞれの相互関係における最適化も、またあると思います。そこに、目指す性能に向けた選択肢が広がります。たとえばセンサーやソフトウェアをおごらなくても、アクチュエーションに冗長性がある(余裕を持てる)ことにより、ECUをダウングレードしてもシステムが成り立つといった選択肢の広がりを持たせることができるのではないでしょうか。そのように、ZFは、高い性能や機能とコストとの調和をはかった提案ができると考えています。

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《御堀直嗣》

御堀直嗣

御堀直嗣|フリーランス・ライター 玉川大学工学部卒業。1988~89年FL500参戦。90~91年FJ1600参戦(優勝1回)。94年からフリーランスライターとなる。著書は、『知らなきゃヤバイ!電気自動車は市場をつくれるか』『ハイブリッドカーのしくみがよくわかる本』『電気自動車は日本を救う』『クルマはなぜ走るのか』『電気自動車が加速する!』『クルマ創りの挑戦者たち』『メルセデスの魂』『未来カー・新型プリウス』『高性能タイヤ理論』『図解エコフレンドリーカー』『燃料電池のすべてが面白いほどわかる本』『ホンダトップトークス』『快走・電気自動車レーシング』『タイヤの科学』『ホンダF1エンジン・究極を目指して』『ポルシェへの頂上作戦・高性能タイヤ開発ストーリー』など20冊。

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