「ミッドシップ車の専門工場」ともいえる八千代工業四日市製作所。ホンダのMR車が一日150台生まれるこの工場に、新たな技術が加わった。『S660』用の「1G装置」と「インナー治具工法」だ。7月23日、同所が公開した製造ラインでは、作業員と機材の“絶妙なリズム”が見えた。
既存のラインよりもコンパクト化されたS660向け溶接工程では、インナー治具工法による熟練作業者とロボットの“共同作業”が見られた。
作業員はまず、S660の客室空間にインナー治具(上下2つ)を組み入れ、このインナー治具を“下地”としてサイドパネルやフロントウィンドシールドなどの外側パーツを手作業でテンポよく“仮組み”していく。
S660のボディ仮組みが終わると、スポット溶接を行なうロボットのゾーンへ自動で運ばれて、溶接ロボットがパチンパチンという音と火花を発しながら各部を溶接していく。
ロボットによるスポット溶接が終わると、S660ボディは再び作業員の手作業スペースに戻ってくる。作業員がボディに再び近づき、溶接前に取り付けたインナー治具を、客室空間から引き抜いていく。
また、S660の製造工程に新たに加えられた“八千代初”の1G装置(わんじーそうち)は、「自然な完成車自立状態を再現し、事前にチェック。足回りの高い品質と精度を実現させている」と同社。この1G装置のラインでは、ハンガーに吊り下がるS660のサスペンションを奥深くまで縮ませるチェック工程が見えた。