「観光電車」に生まれ変わる西武鉄道4000系…隈研吾さんがデザイン

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西武鉄道が来春以降に運行する「観光電車」は建築家の隈研吾さんがデザインする。写真は隈さんがデザインした宝積寺駅舎。
  • 西武鉄道が来春以降に運行する「観光電車」は建築家の隈研吾さんがデザインする。写真は隈さんがデザインした宝積寺駅舎。
  • 宝積寺駅舎の天井。木材をハチの巣のように組んで大きく広げたデザインが特徴的だ。
  • 宝積寺駅の改札口。ここの天井も木材が使われている。
  • 西武鉄道が今回発表した「観光電車」の検討イメージ(4号車)。天井の形状が宝積寺駅とやや似ている。
  • 白地に青・赤・緑の3色帯を配した「ライオンズカラー」が印象的な4000系(2003年)。現在は4両編成12本が運用されているが、このうち1本が「観光電車」として改装される。
  • 西武鉄道が今回発表した「観光電車」(右)の外観の検討イメージ。「秩父」をモチーフに荒川の水の流れを取り入れたデザインにするとしており、従来の4000系のイメージを大きく変える。

西武鉄道がこのほど発表した「観光電車」は、2016年春以降の運行開始が予定されている。完全な新車ではなく、既存の4000系電車の改造により導入されるが、建築家の隈研吾さんが内外装のデザインを担当。そのいでたちは大きく変わることになる。

4000系は、池袋線・西武秩父線から秩父鉄道への直通運転開始(1989年4月)に先立ち、直通列車用として開発された電車。1988年11月と1989年3月、1992年10月に各16両(4両編成4本)が製造され、計48両(4両編成12本)が現在も池袋~秩父鉄道方面の快速急行や飯能~西武秩父間の各駅停車などで運用されている。編成はモーター無しの先頭車2両とモーター付きの中間車2両で構成されており、走行装置は1969年の西武秩父線開業に伴い開発された、101系電車の廃車発生品を流用している。

ただし、車体は新たに製造されており、塗装は白をベースに青・赤・緑の帯を入れた、いわゆる「ライオンズカラー」を採用している。ドアの数は101系の片側3カ所に対し、一つ少ない片側2カ所。車内はドア付近に2人がけロングシートを設けているが、それ以外は4人がけのボックスシートを設けており、通勤通学輸送と観光輸送の両方に対応した。

窓は1ボックスごとに2連続の大型窓を設けて眺望性を向上し、秩父の景色を楽しめるよう配慮されている。このほか、大手私鉄としては初めて押しボタン式の半自動ドアを採用したのも特徴の一つだ。

西武鉄道の発表によると、「観光電車」に生まれ変わるのは4000系の4両編成1本。交通広告企業のNKBが総合プロデュース・オペレーションを担当し、エクステリア・インテリアデザインは隈研吾建築都市設計事務所の隈研吾さんが行う。隈さんはJR東日本の宝積寺駅(栃木県高根沢町)や京王電鉄の高尾山口駅(東京都八王子市)など、鉄道駅舎のデザインも数多く手掛けている。

西武鉄道が今回発表した内外装のイメージイラストは検討中のもので、今後大きく変わる可能性もあるが、内装には「沿線の伝統工芸品や地産木材を一部に使用する予定」としている。木材を大きく広げた天井を持つ宝積寺駅や高尾山口駅のようなデザインが取り入れられることになりそうだ。このほか、シンボル・ロゴデザインはアートディレクターの古平正義さん、ネーミング・キャッチコピー開発は谷山雅計さんが担当する。

編成構成は1号車が多目的スペース、2号車が食事も楽しめる座席(オープンダイニング)、3号車が厨房(オープンキッチンスペース)、4号車がオープンダイニング。全体の定員は4両で52人という、ぜいたくな空間利用だ。まるまる1両を厨房として使用している点は、JR東日本が八戸線で運行しているレストラン列車『TOHOKU EMOTION』のキハ110形改造車に近い。西武鉄道は「乗車駅から下車駅までの景色の移ろいと美味しい料理を味わいながら、忙しい時間から解放された特別で優雅な時間をお届けします」と意気込む。

近年各地で増えているレストラン列車と同様の改装が施され、従来の4000系のイメージを大きく変えるものになることは確実だ。一方、西武鉄道によると「観光電車」への改造に伴う走行装置の更新は行わず、「観光電車」に改造しない他の4000系についても、現時点では走行装置を更新する計画はないとしている。

《草町義和》

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