【ランドローバー ディスカバリースポーツ 試乗】ディスカバリーの名に込められた意味を考える…中村孝仁

試乗記 輸入車
ランドローバー ディスカバリースポーツ HSEラグジュアリー
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『ディスカバリー スポーツ』に試乗した。本来2か月ほど前に試乗するはずだったのだが、生憎雪のために中止。それで今回乗ることになった。

『ディスカバリー』という名のモデルが誕生したのは1989年。日本に導入されたのは1990年だったと記憶するが、導入されてすぐにこのクルマのオーナーになった。その理由は使い倒せるSUVとして機能性が高く、ある意味サバイバルツールになると感じたからである。

それから15年たって3代目が登場した時、ディスカバリーの性格は大きく変貌した。簡単に言えば「レンジローバー化」したのである。とても豪華になって、値段的にも高価になり、気軽に使い倒せるようなモデルではなくなった。何せ初代は一番安い時、300万円を切っていたのだ。初代と2代目は『ディフェンダー』のようなプリミティブさと、『レンジローバー』の快適さを持ち合わせた折衷型のモデルだったのだが、3代目はプリミティブさは完全に影をひそめ、豪華絢爛、ハイパフォーマンスSUVに変貌し、その性格は4代目にも引き継がれた。

そして今回のディスカバリースポーツ。ディスカバリーの名は持つものの、その実態はといえば『イヴォーク』のディスカバリー版。ボディだって、ディスカバリー4の4850×1920×1870mmというサイズに対し、4610×1895×1725mmとグッとコンパクトである。メーカー側もプレミアムコンパクトSUVと言い切っているから、その性格も推して知るべきである。

と言って不満があるわけではない。初代のコンセプトは役目を終えて、ランドローバーというブランド自体がプレミアム化を突き進んでいると理解すべきなのだろう。それとディスカバリーというブランド自体も、ランドローバー内でその地位を向上させたようだ。新しいディスカバリースポーツは、『フリーランダー』のリプレイスモデルだ。そして今後、ディスカバリーを名乗るモデルはランドローバー内で増殖すると考えられる。つまりランドローバーはレンジローバーとディスカバリーという二つのブランドで車種展開をしていくということである。

だいぶ前置きが長くなってしまったが、新しいディスカバリースポーツ、前述したようにイヴォークのディスカバリー版である。だからプラットフォーム、エンジンなど主要コンポーネンツはイヴォークとシェアされている。何が違うかというとディスカバリーの名からも想像できるかもしれないが、このコンパクトなボディに7人乗りを実現したところだ。もっとも3列目のシートはオプション設定であるが…。

フォードのエコブーストユニットから派生した2リットル直4ターボユニットは、イヴォーク同様、ZF製の9速ATと組み合わされる。このAT、日本市場では他にジープ『チェロキー』が用いているが、そのキャリブレーションのうまさは俄然ランドローバーが上。ほぼ100km/hのスピードでちゃんと9速が使える。ただし、発進は2速からだから事実上は8速しか使っておらず、1速は牽引力を必要としたり、チャレンジングなオフロードに行った時のためのようだ。もっともこんな豪華なクルマでそんな場所には分け入りたくはないが。パフォーマンスは数値以上の印象を持つもので、4気筒であることを忘れさせてくれる。恐らくは9ATの貢献度もかなり高いように感じる。

果たしてオプションのマグネライド可変ダンパー(すべてのグレードにオプション設定)を装備しているか否か聞き忘れてしまったが、乗り心地はすこぶる良い。適度なフラット感があり、実に落ち着いた印象である。静粛性も納得のレベル。そして後席はリクライニングとスライドが可能だから長距離では俄然効果を発揮し、疲れを癒してくれる。

ランドローバーだから当然ながらオフロード性能には定評がある。だが今や細かい技術的な説明はカタログにも載っておらず、4WDのメカニカルな切り替えスイッチなど、コックピットのどこを探しても見当たらない。すべてはダッシュセンターのマルチディスプレイに集約され、そこから呼び出して操作する。通常は必要に応じ僅か300ミリ秒の瞬速で、FWDから4WDに切り替えてくれるから、ドライバーはその瞬間すら感知することが出来ない。クロスカントリーの必要性がほとんどなくなったということだろうか。

今回試乗した「HSEラグジュアリー」は最上級モデルで、他にベースモデルの「SE」と、中間グレードの「HSE」が存在する。価格差も大きく、ベースグレード492万円に対してHSEラグジュアリーは692万円と、その差200万円だ。しかし、その装備差の大きなことといったらとてつもなく、ベースグレードではすべての安全デバイスを含み、オートエアコンや電動シート、キーレスエントリーなどの機能品も、全部オプションだ。考えられなかったのは、プレミアムメタリックペイント。すべてのグレードでオプションだが、何故かベースグレードはHSEやHSEラグジュアリーに対して2倍の料金を取られる。ボディは一緒のはずなのにどこが違うのだろうか…。

試乗してみて、オールラウンドに使えることは確認できた。イヴォークよりは全長がだいぶ長くなっているが、それでも機能性と考えればこちらが上。個人的にはイヴォークよりも使えるモデルと感じた。

■5つ星評価
パッケージング ★★★★★
インテリア居住性 ★★★★★
パワーソース ★★★★
フットワーク ★★★★
おすすめ度 ★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来37年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。

《中村 孝仁》

中村 孝仁

中村孝仁(なかむらたかひと)|AJAJ会員 1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

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