幅広いラインナップを揃え、あらゆるユーザーに対応できるカーナビゲーション。それこそがカロッツェリア『楽ナビ』が持つ最大の強みだ。今回はそのトップエンドモデルでトヨタ/ダイハツ車にジャストフィットするワイド2DINサイズを採用する「AVIC-RW09」を『ムーヴ』に装着して試してみた。
市販ナビ中随一のワイドラインナップ
楽ナビのラインナップはとにかく幅広い。大きくインダッシュ型とオンダッシュ(ポータブル)型の2つに分けられ、インダッシュ型は画面サイズで8型と7型が選べ、7型は幅180mmの2DINサイズと幅200mmのワイド2DINサイズが選べる。以前ポータブルナビの専用ブランドとして展開していた「Air Navi(エアーナビ:2代目)」の商品展開を2012年に吸収し、現在につながるラインナップ構成となった。
現行機種の機能面では、新採用の「スマートコマンダー」を付属したハイクラスと、通信機能に対応したミドルクラス、シンプルにローカルでナビ機能を楽しむベーシッククラスがあり、インダッシュ型だけでラインナップは10機種にも及ぶ。
一方、ポータブル型は画面サイズで7型と6.1型の2タイプ3機種を揃える。地デジは12セグとワンセグで機種ごとに分けられており、これらを総合すると13機種という、まさに『楽ナビ』は“市販ナビ随一”のラインナップを揃えているのだ。
そんな『楽ナビ』で注目すべきモデルが「スマートコマンダー」を付属した上位3機種である。一般的な「リモコン」とは呼ばず、「コマンダー(指揮者、司令官の意)」と名付けられているのがポイントだ。操作は「回す」「傾ける」「押す」といった動きにより、運転中であっても、地図のスクロールや縮尺変更、AVのボリュームアップ/ダウン、曲送り/戻しなどの操作ができる。
◆走行中でも快適に操作できる「スマートコマンダー」
これまでカーナビゲーションのほとんどはタッチパネルでの操作が一般的だった。その場合、操作する度に画面まで手を伸ばす必要があり、操作時は必ず画面を視認しなければならない。つまり、走行中の操作は自ずと制限されてしまうのだ。
そんな時、この「スマートコマンダー」があれば、走行中でも視線を移動することなく手元で操作が可能。周囲のダイヤルを回転すると地図スケールが切り替わり、ジョイスティックを動かして地図をスクロールできる。スクロールした先でジョイステックを押せばそのまま目的地として設定可能で、ルートガイド中は立ち寄り地点の登録にも対応している。ルートガイドをしていない時は、自宅までのルートをワンタッチで設定でき、コンビニやガソリンスタンドといったドライブでよく使うアイコンのON/OFFも可能だ。
◆ユーザーカスタマイズにも対応
また、ユーザーが好みで設定できる「1」「2」のコマンドも用意されているのも嬉しい。設定できる項目数は全43項目にも及び、ワンタッチで時計表示をはじめ、シティマップのON/OFF、到着予想時刻の切り替えなど、ボタン操作一つで操作できるようになるのだ。使えば使うほどに「スマートコマンダー」があることの便利さを実感できるだろう。
ただ、AVモードでに切り換えた場合、今回のムーヴのようにステアリングリモコンを備えていると、スマートコマンダーの役割は薄くなる。ダイヤルでボリューム、ジョイステック操作でトラックサーチとなるのだが、これはステアリングリモコンでできてしまうからだ。「MODE」ボタンでソース切り替えもできるし、長押しすればAVソースのOFFとしても機能する。
◆音声検索も抜かりなく
今回の取り付けでは楽ナビに通信モジュールもプラスしている。渋滞情報を通信で取得できる「スマートループ」をはじめ、「e燃費」から提供されるガソリン価格や天気予報、そして駐車場の満空情報といった、通信機能を備えていなければ得られないサービスに対応できる。
また、もう一つ見逃せないのが「フリーワード音声検索」への対応だ。他メーカーの市販ナビでも音声入力に対応する機種は続々と登場しているが、カロッツェリアもこの機能への対応は抜かりない。
思いついたキーワード、たとえば「近くのコンビニ」でも、「ラーメンが食べたい」といったコマンドにも対応できるようになるのだ。従来の音声検索ではカーナビゲーション本体内で行っていたため、認識能力に限界があった。それが通信を使ってクラウド上でキーワードを一致させるようになったことで認識率は大きく向上している。
残念ながらiPhoneの「Siri」ほどの柔軟性はないようだが、走行中でも目的地をリストアップするぐらいの能力は十分確保されている。クラウド上から探すので、新規オープンの施設なども検索対象に含まれるのがいい。この使い勝手は一度使えば手放せなくなること間違いなし。この機能をぜひスマートコマンダーにプリセットしておくと便利さはさらに増すと思う。
◆最適な音場設定で快適なリスニング環境を実現
AV機能では 新設計のDSP、最適な音場を設定する「タイムアライメント」、きめ細やかな音質設定に対応する「13バンド グラフィックイコライザー」を搭載した。残念ながらムーブについている純正スピーカーを組み合わせているため、音質面で本来の実力は発揮できていない。
それでもタイムアライメントを使って追い込むことで、音声の定位感は得られた。調整が難しいという人向けに「カンタンベース設定」を用意している気遣いも評価できる。また、停車すると2秒後にボリュームが自動的に10dB下がる新採用の「アイドリング アッテネーター」も便利に思えた。
一つ気になったのは、iPodの動作がやや不安定なこと。時折、エンジンを切る前にOFFにしても再スタートさせると時折、再生が勝手に始まってしまうのだ。これはAVがOFF状態でも発生することがある。パイオニアのサービス窓口に問い合わせると、iPod側のフル充電完了時やiPod内部で何らかの動きがあると動作してしまうことは確認済み。現状でアップル側の具体的な仕様開示がないため、これを防ぐにはiPodをあらかじめ外しておくしか対策はないのだという。
とはいえ、全体として見れば上位機「サイバーナビ」と比べても不満を感じないほどの出来映えだ。むしろ動作のスムーズさについては、メディアがメモリーである楽ナビの方が良好であると感じたほど。サーバーナビが持つスカウター機能などのリアルなナビ環境を求めないのであれば機能的には楽ナビで十分と言っても過言ではない。スマートコマンダーを追加した新型「楽ナビ」は、使い勝手の上でもパフォーマンスの上でも納得いく仕上りと言える。