10日、ホンダ本社での会見に臨んだジェンソン・バトンは、先日の合同テストでの状況から不安視される向きもある新生マクラーレン・ホンダの船出について、「未来をエキサイテングなものとするベースはできたと感じている。あるべき姿へと向かっている」と語った。
2月1~4日にスペインのヘレスで開催されていた今季最初のF1合同テスト。ベストタイムや総周回数という面では、傍目で見る限り“まだまだこれから”と思われた今季型『MP4-30』だったが、歴代3位(現役1位)のF1出走回数を誇る35歳のベテランのコメントからは、“大本営発表”であることを割り引いても、それなり以上の手応えが感じられる。
昨年から施行された新レギュレーション下において、エンジンを含むパワーユニットは「とても複雑なものになっているが、それに対して(他社より後発の)ホンダはファンタスティックな仕事をしている。ドライバビリティがすごく重要になることをホンダは理解してくれているし、ベストなパワーユニットとするためにはチームやドライバーとの緊密な作業が必要なことも分かっていて、実際にそういう仕事をしてくれてもいる」と、バトンは旧知の存在でもあるホンダをあらためて好評価。「テクノロジーはもちろんだが、マンパワー、そして何より情熱が必要であり、ホンダにはそれらがあることを僕はよく知っている」。
ホンダ製エンジン(パワーユニット)で走るのは今季で通算7年目となるバトン。「(ホンダが今季から復帰し)再びホンダのファミリーになれたことには特別な感情がある」。しかも、今度は「僕の心のなかでスペシャルな存在である“マクラーレン・ホンダ”の新時代に加わることとなったのだから」と、大きな喜びと誇りの有り様も示す。1988~92年に80戦44勝という高勝率でF1界に君臨、88年にはアイルトン・セナとアラン・プロストのコンビで16戦15勝の歴史的圧勝を遂げたマクラーレン・ホンダの記憶は、当時まだ幼かったバトンにとって鮮烈なものだったようだ。客観的には間違いなく苦境だったヘレス合同テストでも「我々は、我々の“あるべき姿”へと向かっている」と語るバトン、あるべき姿とは、あのセナ&プロストの頃のマクラーレン・ホンダであろう。
そしてなにより「僕にも、ホンダにも、やり残したことがある」。2003~05年のBAR・ホンダ、そして06~08年のホンダという通算6シーズンの“バトン ホンダ時代”は、バトンもホンダも1勝のみ(06年ハンガリーGP)。今度はより大きな果実を収穫するため、バトンは「簡単ではないが、ハードワーク、ハードチャレンジを重ねていく」。2月後半のバルセロナ合同テストでは「もっと走行距離も稼げると思う」。
そしてバトンは、新チームメイトであるフェルナンド・アロンソについても「とても知的で、一緒に仕事をすることが楽しい」と絶賛する。
今季に向けてのストーブリーグにおける最大注目点だった、新生マクラーレン・ホンダのドライバー人事。昨年12月に決まったそれは、マクラーレン残留のバトン(09年王者)と、フェラーリから移籍のアロンソ(05&06年王者)というチャンピオン同士のタッグだったが、バトンは「僕はチャンピオン経験のあるドライバーと組むのはフェルナンドで3人目だからね」と慣れたものであることを強調、確執等の懸念が無用だと示している(過去にはジャック・ビルヌーブ、ルイス・ハミルトンとコンビ経験あり)。
バトンとアロンソは年齢的にも、F1キャリア的にもほぼ同世代。02年には当時のルノーでバトンが正選手、アロンソがテストドライバーというかたちでチームメイトだったこともあるが、今回一緒に仕事をしてみての実感として、バトンはあらためてアロンソを前述のように絶賛し、「彼のことをとても尊敬している」と語る。アロンソがホンダで走るのは初めてなのに対し、バトンには長くホンダとともに戦っていた経緯もあるなど、日本との付き合い方では先輩にあたるが「(知的な)フェルナンドには日本の人との付き合い方で何か助言する必要なんてないと思うよ」と、その面でも太鼓判を押した。
ちなみにバトン自身とホンダ(日本)の関係については「最初から“イージー”だった」と、生来の相性の良さを窺わせている。新生マクラーレン・ホンダ躍進に向けて、そのあたりの効果にも期待したいところだ。