【ルノー ルーテシア 0.9Lターボ 試乗】素のヨーロッパ車は、走りの面白さを伝える伝道師だ…中村孝仁

試乗記 輸入車

ルノー ルーテシア ゼン 0.9Lターボ
  • ルノー ルーテシア ゼン 0.9Lターボ
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マニュアルミッション車が減っている。日本車の場合はほとんど売れないらしい。しかし、ヨーロッパ車の多くのメーカーは少なからずマニュアルを残している。新たに投入されたルノー『ルーテシア ゼン 0.9Lターボ』はマニュアルの設定しかない。

あまり知られていないかもしれないが、メルセデスだって、BMWだってちゃんとマニュアルミッション車を残している。これがルノーとなると主力の『カングー』をはじめ、『メガーヌ』などにはすでに設定があり、ルーテシアにも今回その設定が出来た。

マニュアルミッションにだってちゃんと利点はある。それはドライバー自らがすべてをコントロールするから、アクセルを踏んだだけで発進してしまうATと違って誤発進はまずない。ぼーっとしてブレーキを離し、前車に追突…なんてこともない。

しかも最近は非常に進化していて、多くの人が苦手であろう坂道発進が苦も無く出来る。理由はヒルスタートアシストという、ブレーキを離しても後ろに下がらない機構が付いていることと、万一エンストしてもクラッチを踏んだ瞬間にエンジンが再始動するから、事実上エンストをしない。とまあ、昔と比べたらはるかに扱いやすいものになっている。

「ゼン」というモデルは以前からルーテシアに設定があるが、それは1.2リットル直4直噴エンジンを持つモデルで、こちらは6速のDCTとの組み合わせである。今回のゼンは排気量が正確にいうと897ccのターボチャージャー付き。そして4気筒ではなく3気筒、さらに直噴ではなくポート噴射という違いがある。ズバリ言ってしまえば廉価版であり、省燃費車という仕様だ。

ヨーロッパのベーシックエントリーグレードはホントに何にも付いていない、雑な作りだし、エンジンも非力。だからついつい思いっきり引っ張ってトルクの美味しいところをマニュアルミッションで引き出しながら走るのが通例。そんな走りをすれば決して燃費が良いわけはないのだが、特にフランスに行くとそうした傾向が強いことが、走ってみればわかる。

では日本に雑な作りのモデルが入ってきたのかというと実はそうではなくて、このエントリーグレードのゼンは、16インチのブラックアロイホイールを履き、ボディサイドは1.2リットルのゼンとは違ってちゃんと塗装したプロテクションモールとクロームフィニッシャーが付く。つまり見栄えは上級の1.2リットルゼンよりもよい。室内だって、シートを除けばあとは上級モデルと変わらないから安物感はまるでない。

1リットルにも満たない排気量ながら、最近はターボのおかげでずいぶんと活発に走るようになり、いわゆるリッターカーと呼ばれた時代の性能的悲哀を感じることはない。F1で初めてのターボカーに手を染めたのは、実はルノー。それだけにターボ技術には確かなものがあって、加速感はNA風である。最大トルクを発揮するのは2500rpmだが、90%のトルクは1650rpmで発揮される。それに最近のターボカーのようなテーブルトップ型トルクカーブではないから、余計NAらしい印象を持つのかもしれない。

燃費指向派のためにエコスイッチがシフトレバー手前に付く。これを押してエコモードに入れると、12%ほど燃費が改善される一方で、シフトアップ指示も2000rpmで出るようになる。勿論パワーも絞られるのだが、極端に遅くなる印象はない。しかし、これはあくまでもエアコンを入れない状態。エアコンが回りだすと、さすがにノーマル状態とエコモード状態ではその差を感じてしまう。だから、エコモードにしてエアコンを加速中に切ると一気に加速するようになる。まるでブーストアップスイッチのようで面白い。冬場なら一瞬エアコンを切っても問題ないので、飛ばしたい時のこの操作をすると面白いように加速する。

ルノー・スポール(RS)をチョイスするまでもなく、ルノーのハンドリングはどのクルマに乗ってもいつも感心させられるが、このゼンも例外ではなかった。適度にシャープで非常に正確である。パワーはたったの90ps。しかし、90psだからこそ思い切って使い切れるし、そこに5速MTと相まった操る楽しさが生まれる。その気なら一日中レーシングドライバーになった気分を味わえる。まっ、スピードには気をつけて欲しいが…

■5つ星評価
パッケージング ★★★★
インテリア居住性 ★★★★
パワーソース ★★★★
フットワーク ★★★★
おすすめ度 ★★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来37年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。
《中村 孝仁》

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