【土井正己のMove the World】世界人口の爆発と日本の技術、そして地方創生…10・16「世界食料デー」に想う

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写真提供:FAO
  • 写真提供:FAO
  • 人口増加が社会問題となっているマニラ(資料画像)
  • 常温保存が可能な最新のテトラパック容器
  • 広がる貧富の差(資料画像)
  • 世界人口は2050年には90億人に達すると言われている(資料画像)
日本では、人口の減少が問題になっているが、世界では、むしろ人口の爆発が問題と言われている。1961年には30億人だった世界の人口は、50年後の2011年には70億人となり2倍以上に増加した。さらに、国連の推計では、2050年には90億人に達すると言われている。

人口の急増といえば、まず、第一に「食糧や水の不足」を引き起こすということは誰もが想像することだ。しかし、それだけではない。「環境問題」や「失業による都市のスラム化」も引き起こす。社会が不安定になると、いわゆる「テロリストの巣」もでき易い。人口が急増すると、色々な問題が起きてくるということだろう。

こうしたことに対し、元国連難民高等弁務官で、現在JICA(国際協力機構)の特別顧問を務める緒方貞子氏らが提唱した「人間の安全保障」という考え方がある。人口が増えても、人間が安全に生きていくことを保障していくことこそが、世界平和を維持する重要な手段であるという考え方だ。「人間の安全保障」は国連の重要な活動テーマとなっており、また、日本の外交政策の主要な柱となっている。


◆「世界食料デー」…日本に期待するのは、「食料を長持ちさせる技術」

2050年にかけての人口の爆発は、新興国で起きていくが、国連のデータを見ると特にアジアでの人口増加比率が高い。我々、日本人にとっても他人事ではなく、地域の安定のために貢献できることを考えていくべきであろう。

あまり、知られていないが、10月16日は、国連食糧農業機関(以下、FAOと記載)の定める「世界食料デー」だ。世界の飢餓や食料問題の解決にみんなで取り組もうというキャンペーンが、世界各地で展開される。食料は、「人間の安全保障」においても最も重要な要素だ。

「世界食料デー」を前にFAO日本事務所のボリコM.チャールズ所長にお会いする機会があったので、日本人へのメッセージをお願いした。「世界には、8億0500万人もの慢性的栄養不足に苦しんでいる人がいる。世界では、飢餓との戦いが続いている。日本の皆様にも飢餓撲滅の活動を一層支援していただきたい」。さらに、日本に期待することとして、「日本で少なく見積もっても年間500万トンもの食料が食べられないで捨てられている。この食料廃棄を減らし、食料を無駄にしないで頂きたい。もう一つ、日本に期待するのは、食料を長持ちさせる技術力。食物や飲料の長期保存技術は、開発途上国での食料ロスを減らすことに役立つ」と述べられた。


◆紙パックの技術進化で牛乳もアフリカ奥地まで

テトラパックという紙パックの会社がある。創業はスウェーデンで、現在スイスに本社がある紙パックの世界大手である。その会社の日本テクニカルセンター(御殿場)を先日訪問した。テトラパックといえば、子供の頃、学校給食に出てきたミルクの三角紙パックを思い出す。あの三角紙パックが、現在では、常温で半年から1年の保存が可能という。エンジニアの方に聞いてみると、紙パックとはいえ、全部で6層になっていて、中には、アルミ箔やポリエチレンなどの層もあり技術の集積だという。そして、その技術の一部は日本の素材メーカーと共同開発したとのこと。腐食を防ぐ条件は、「太陽光を遮ることと空気を通さないことだ」と聞いた。なるほど、そのために、6層もの加工をしているということである。

この技術のお蔭で、紙パックの牛乳は、アフリカの奥地まで、冷蔵しないで運ぶことができるようになった。よって、輸送コストも大幅に安くなり、より多くの貧困地帯の子供たちに牛乳を届けられるようになったということだ。「人間の安全保障」に貢献する素晴らしい技術だと思う。結果として、この会社の新興国ビジネスは成功している。(また、テトラパックは、FAOの活動に協賛するなど食料問題への社会貢献活動も行っており、ビジネスの成功だけが新興国対応とは考えていないようだ。)

◆「地方創生」もアジアの「人口問題」や「食料問題」をテーマにしては

今、日本では「地方創生」が話題になっている。政府は、石破茂地方創生担当大臣を配し、地方に産業を興して、人口減少を食い止めようと動き出した。地方においても、アジアの「人口問題」、「都市化問題」、「食料問題」などに対応した産業をつくり出すことができれば、海外からも注目され、元気付くのではないだろうか。テトラパックの技術は、決して、超先端技術ということではない。既存技術の組み合わせで、世界の社会ニーズに合致した開発をしていけば、大きなヒットも生み出すことができるということだ。

「地方創生」のために、世界に目を向け、社会ニーズがどこにあるのか、どんな技術の組み合わせやシステムが「世界の課題解決に役立つ」のかを考えるのも必要であろう。日本の技術で世界の飢餓撲滅に貢献する。「世界食料デー」を前に、そんな想いを巡らせてみたい。

<土井正己 プロフィール>
クレアブ・ギャビン・アンダーソン副社長。2013年末まで、トヨタ自動車に31年間勤務。主に広報分野、グローバル・マーケティング(宣伝)分野、海外 営業分野で活躍。2000年から2004年までチェコのプラハに駐在。帰国後、グローバル・コミュニケーション室長、広報部担当部長を歴任。2010年の トヨタのグローバル品質問題や2011年の震災対応などいくつもの危機を対応。2014年より、グローバル・コミュニケーションを専門とする国際コンサル ティング・ファームであるクレアブ・ギャビン・アンダーソンで、政府や企業のコンサルタント業務に従事。山形大学工学部 客員教授。
《土井 正己》

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