【商用バン 徹底比較】トヨタ プロボックス / サクシード vs 日産 AD / ADエキスパート…突き詰められた使い勝手を検証

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トヨタ プロボックス / サクシード vs 日産 AD / ADエキスパート 使い勝手検証
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  • 高山正寛氏
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トヨタ『プロボックス/サクシード』(以下、プロ/サク)が12年ぶりに大幅な“マイナーチェンジ”を行った。そのプロ/サクにとっての最も身近なライバルとなるのが日産『AD/ADエキスパート』だ。

「プロの道具」である商用車に求められるのは荷物の積載能力や運転席周りのユーテリティ、さらにシートの座り心地も重要だ。もう少し細かく言えば、営業シーンなどではクルマ自体が「移動オフィス」となる。ゆえに仕事空間としての使い勝手も重要な要素となるのである。

◆積み下ろしのしやすさを左右する60mmの差

まず重要な積載能力から見てみよう。プロ/サクの2名乗車時の最大積載量は400kg。それまでサクシードは450kgだったのだが、今回のマイナーチェンジで共通化したことでこの数値に落ち着いた。一方でAD/ADエキスパートは450kgと数値的には優っているが大差はない。それどころか実際使ってみると、商用車というのは本当に荷物を積載することに対してはちょっとした出っ張りなどが積載性を大きくスポイルさせるのだ。

まず荷物の積み下ろしだが、地面から荷室床面の高さはAD/ADエキスパートが525mm(FF車)、プロ/サクは585mmと60mmの差がある。一見、床の低いAD/ADエキスパートのほうが荷物が積みやすく感じるのだが、筆者のような高齢者だと余計に腰を曲げるのが実はかなり辛かったりする。要は適正な数値というものが必要となのだ。確かに台車を横付けすればAD/ADエキスパートも問題はないという声もあるだろう。しかしそれでも荷物の積み下ろしの際に「よっこいしょ」と腰を曲げる角度が多くなるのは日々の作業とするビジネスマンには負担が多くなるはずだ。たかが60mm、されど60mm、荷物の出し入れではプロ/サクに軍配を上げたい。

荷室寸法については両車とも甲乙つけがたい。荷室高は5mmしか違わないが、荷室幅は一番広いところでAD/ADエキスパートの1366mmに対しプロ/サクは1420mm、一方荷室長では5名乗車時でプロ/サクが1040mm、AD/ADエキスパートが1182mmとなる。リアシートを倒した2名乗車時でもAD/ADエキスパートのほうが優れているが、仕事の業務や積載物の内容に応じてその差は縮まる。またタイヤハウスの出っ張りも両車とも極限と言っていいほど抑えており、会社や自分が積載する荷物で実際の使い勝手をチェックすることをオススメする。

さらに、数値だけでは見えにくい部分だが、実用面に大きな違いが出るのがリアゲートの「開口部」の形だ。AD/ADエキスパートがボディデザインの都合からやや台形に近いのに対し、プロ/サクはほぼ真四角。段ボール箱などを実際に積載してみると分かるのだが、しっかり上まで荷物を出し入れし積載できるプロ/サクは、大きなアドバンテージがあるだろう。

◆利便性高いADバンの収納とテーブル

運転席まわりについてもチェックしてみた。結論から言えば、日本の自動車エンジニアは本当に「気が利いている」。仕事で使う商用車ゆえにその使い勝手を究極にまで高めようという、改善の後がひしひしと伝わってくるのだ。

まずAD/ADエキスパートだが「スーパーコンビニエンスコックピット」の名称からわかるように収納やポケットがとにかく多い。例えば運転席側のカップホルダーにはペットボトルなどの蓋を置く「キャップホルダー」が用意されている。これは初代『エクストレイル』に設定された機能だが、外した蓋をどこに置こうかと迷っている間に、ポロッと床下に落とした経験のある人なら「これは便利」と納得するはずだ。

また最大の売りである助手席の背もたれを側面にあるレバーを使って倒すと現れる折りたたみ式の“シートバックパソコンテーブル”はまさにビジネスワーカーの心強い味方だ。ただテーブル自体は斜め前方に出てくるとはいえ、身体をやや斜めにしながら作業をするのでそれほど長時間の仕事には向かない。それでも営業移動時のデータ入力や資料チェックなどでは重宝するはずだ。

もうひとつ売りとなっているのがインパネの中央上部に設置された“ホワイトボード”だ。急な連絡が入ってすぐにメモを取らなければいけない際などには結構役立つだろう。またこの裏側はアッパーボックス、つまり収納になっている点もスペースの有効利用という点で評価できる。ただ実際、停車時に使ってみると右利きの筆者などはペンを持った手を逆方向に動かして書くことになり、イメージしたより面倒くさい。また最近では営業車でも業務の効率化でカーナビを導入している企業も多い中、そもそもインパネの中でも一等地となるこの場所ゆえに、もしカーナビを付けるとしたらトレードオフ、つまりこの機能は外さなければならない点も気になった。

◆プロ/サクは“小技が利いた”インパネ周りに

さてプロ/サクだが、マイナーチェンジ前のモデルと大きく変わったのがこのインパネ周りである。旧型も決して悪くはなかったのだが、実際利用者の声などを吸い上げると、灰皿がインパネのど真ん中、それも一番いい場所に設置されているなど、時代にそぐわないこともわかってきたそうだ。これはカップホルダー等も同様でこの時点ではAD/ADエキスパートの同機能のほうが使いやすかった。

しかし今回これらの声を受けて大刷新。正直まったく見違えるようほど変貌を遂げたインパネ周りには驚くばかりだ。コンセプトとしては「自分の手の届く範囲にどれだけ機能を集中させるか」である。収納に関しても“小技が利いた”ものばかり、その中から特に素晴らしいと感じた3つの機能+αを紹介したい。

まず目に飛び込んできたのがセンタートレイである。これは二重の中ぶたがついており、これを外すと1リットルの紙パックの飲み物をそのまま入れることができる。ご存知のように最近のコンビニなどでは自社のプライベートブランドの1リットルパックであれば税抜き100円未満で手に入れることができる。1日中、外回りをしている営業マンなどはなるべく安く、量の多い飲み物が欲しくなるし、実際よく売れている。しかし今までこれを置く場所がなかったのも事実。この機能は本当にビジネスマンの声が製品に反映されたものとして満点を上げたいくらいである。

次に評価したいのがインパネのセンターテーブル。機能としてはそれほど珍しくはないのだが、今までのものはサイズがやや小さく、コンビニ(またもやだが)弁当などを置くと微妙にサイズが足りないのである。そこで従来より幅で80mm、奥行きで35mmサイズアップすることでこれらの問題を解消、実際幕の内弁当+カップ味噌汁を置くことができた。またこのテーブル自体は耐荷重も10kgと優れており、AD/ADエキスパートのようにノートパソコン位であれば置いて簡単な作業位もできる。

そして三番目が前述したセンタートレイ上部に設置されたマルチホルダーである。プロ/サクが登場した2002年頃にはなかったもの…それがスマホである。もはや生活必需品の感すらなるスマホだが、これをしっかりと置く場所として用意されたのがこのホルダーなのだ。もちろんスマホだけでなく、メモ帳を置いておくこともできる。実際に使ってみると保持できる幅は広く、発売されたばかりのiPhone6も入れることができた。またホルダー下部から充電用ケーブル等を出すことができるので、その下にあるアクセサリーソケットと連携することで充電を行うことができる。取付場所に関しても市販のUSB給電器などを購入し、その形状を分析、多くの機器に対応するなどかなり凝っている。ちなみにこのアクセサリーソケットの隣にはAC電源を設置、100V/100Wまで対応するのでパソコンの電源としても使うことができる。

◆疲れにくさと快適性を追求したシート

最後に+αとして伝えておきたいのが、シートの出来の良さとエアコンだ。今回シートを刷新、シートリフトを30mmから60mm、スライドを240mm可動量を拡大、そしてリクライニング角度を従来の44°から76°と大きく増やしている。このシートの良さはズバリ、長時間座っていても疲れにくいことである。「そんなの当たり前だ」と思うかもしれない。しかし仕事で使われる商用車の場合、前述したようにそれ自体が“動くオフィス”である。つまりそのシートはオフィスチェアと同等の快適性や疲れにくさが求められる。さらに言えば、仕事中にシートを倒して休憩、つまり仮眠を取ることだってあるはずだ。実際座っているとやや固めに仕上げられており、腰周辺のサポートも良好、さらにこれはいい! と思ったのがリクライニングにした際、腰や臀部の段差が少ない。多分、この作りであれば体格が変わっても多くの人が快適に座れる(寝られる)はずだ。

エアコンもマニュアルのみの設定だが、可変容量コンプレッサーの採用などにより従来の4kwから4.5kwに冷房能力を向上。何よりもエアコンの吹き出し口が大きくなり、設置場所も最適化されている。インパネ自体を全面刷新したことでユーテリティやエアコン、またナビ(AVスペース)もベストと呼べるほどうまくレイアウトされているのだ。


今回、じっくり試乗する機会を得て感じたのは「12年の進化は伊達じゃない」ということだった。個人的には走りやユーテリティもさることながらシートの出来の良さに感動。商用車というカテゴリーではあるが、見方を変えれば乗用車でも十分通用、いやクラスを超えた出来の良さである。正直、このシートより出来の悪いクルマは意外と多い。トヨタのこのプロ/サクから得た知見や技術を乗用車にフィードバックしてほしい、と感じるくらい、完成度が高い価値ある1台なのである。
《高山 正寛》

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