新しいフリーゲージトレイン試験車、そのスペックは?

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フリーゲージトレイン新試験車両先頭車の前頭部。「FGT」のロゴが目立つ。前頭部の流線型の部分の長さは8mある
  • フリーゲージトレイン新試験車両先頭車の前頭部。「FGT」のロゴが目立つ。前頭部の流線型の部分の長さは8mある
  • フリーゲージトレインの新試験車両。今後3年間で60万kmを走行し、耐久性などを検証する
  • フリーゲージトレインの新試験車両。今後3年間で60万kmを走行し、耐久性などを検証する
  • フリーゲージトレイン新試験車両の先頭車。やや前から見上げると運転室部分が突起した形状がよくわかる
  • フリーゲージトレイン新試験車両の先頭車。やや前から見上げると運転室部分が突起した形状がよくわかる
  • 4月20日に始まった試験走行で、九州新幹線熊本駅に入線したフリーゲージトレインの新試験車両
  • フリーゲージトレイン新試験車のヘッドライト
  • フリーゲージトレイン新試験車両の先頭車、FGT-9001(1号車)
4月20日から走行試験を開始した、軌間可変電車(フリーゲージトレイン)の新試験車両。従来の試験車と比べ、より新幹線車両らしいスタイルが印象的だ。2022年度の開業を予定する九州新幹線長崎ルート(西九州ルート)での実用化を目指し、今後3年間走行試験を行う。

フリーゲージトレインの技術開発では、従来の試験車両を使ったこれまでの走行試験の結果、専門家による技術評価委員会で「基本的な走行性能に関する技術は確立している」と評価されており、残る課題は耐久性の検証・分析となっている。新試験車両はフリーゲージトレインの実用化に向け、耐久性や保全性などを分析・検証する目的で2012年度に設計・制作に着手し、今年3月25日に熊本総合車両所(熊本市)に搬入された。

【車体・内装】
4両編成で、鹿児島中央方が1号車、博多方が4号車。これまでの第1世代、第2世代試験車が3両編成だったのに対し4両編成となったのは、機器を編成全体で分散し軽量化を図ることと、実際の営業運転で使う車両に近づけることが目的という。

メーカーは1・3・4号車が川崎重工業、2号車が日立製作所で、それぞれ1号車から「FGT-9001」~「FGT-9004」のナンバーが記されている。車体幅は2945mm、高さは3.65m。全長は中間車(2・3号車)が20500mm、流線型の先頭部の長さが8mある先頭車(1・4号車)は23075mmとやや長い。カラーリングは「火の国・九州」をイメージしたというシャンパンゴールドとディープレッドの塗り分けで、先頭車の両側側面には「FGT」のロゴを描き、外観のアクセントとしている。

車体はアルミダブルスキンの気密構造で、機器類を除き1・4号車、3・3号車でそれぞれほぼ同様の構造。先頭車のライト周りの一部には炭素繊維強化プラスチック(CFRP)を使用し軽量化を図っている。パンタグラフはシングルアームタイプで、2号車の博多寄りに搭載している。2号車の車内には44人分の座席を設置。シートは2+2の配列で、インテリアも外観と同様に赤を基調にデザインされている。

各車の最大重量は46t。車体構造や内装、台車など各部の軽量化を図ることにより、従来の試験車両に比べ1両あたり約2tの軽量化を実現した。

【メカニズム】
新試験車両は交流区間専用(新幹線2万5000V・60Hz、在来線2万V・60Hz)で、最高速度は新幹線区間が270km/h、在来線区間が130km/h、新幹線・在来線を結ぶ接続線では50km/h。軌間変換装置の通過時は10km/hで走行する。

動力・ブレーキ性能は新幹線区間では九州新幹線800系、在来線区間では885系特急電車と同等という。制御方式はVVVFインバータ制御で、九州新幹線の35‰勾配に対応するため4両全てにモーターを搭載した全電動車方式。軽量化のため編成で機器の分散を図っているため、4両1ユニットの構成となっている。

制御装置は各車に搭載され、PMSM(永久磁石同期モーター)を個別に制御する1C1M方式。駆動装置は平行カルダン駆動を採用している。台車はこれまでの試験車両用に開発されたものをベースに、耐久試験に備えてメンテナンス性、信頼性に配慮した構造。軸距(ホイールベース)は2500mmで、高速での走行安定性のために二つのヨーダンパーを備えているのが目立つ。軸重は最大11.5t。中間車2両にはそれぞれセミアクティブ、セミアクティブの左右動ダンパーを装備しており、各車体間にもダンパーを備えている。


(4月20日、初の試験走行で熊本駅に入線するフリーゲージトレイン新試験車両)

【その他】
新試験車両の制作費は約43億円で、全額が国費。車両は鉄道・運輸機構が保有し、維持管理をJR九州に委託する。新幹線と在来線を結ぶ「接続線」に設けられる軌間変換装置は5月半ばにも完成する予定という。

今後3年間、新幹線~軌間変換~在来線を繰り返し走行する「3モード耐久走行試験」を通常の新幹線の検査周期と同じ60万km分行う予定。検査データなどは技術評価委員会に諮り、耐久性などの評価を踏まえ営業用量産車の設計・製作に入る計画だ。

フリーゲージトレインの最高速度が270km/hであることから、山陽新幹線区間への乗り入れに関してはJR西日本が慎重姿勢を示していると報じられているが、車両公開時に行われた概要説明の際、国土交通省鉄道局の岸谷克己技術開発室長は報道陣からの質問に対し「まずは270km/hをしっかり検証するのが最優先」で、乗り入れに関しては「開業までにJRの関係者間で決めていただくことになると考えている」と述べた。
《小佐野カゲトシ@RailPlanet》

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