【テスラ モデルS 氷上試乗】高級EVの性能を全開で試す…中村孝仁

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テスラ・モデルS
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現在日本国内で発売または今後発売される電気自動車の中で、文句なく豪華かつ高性能を標榜するのがテスラ『モデルS』である。

そもそも、電気自動車に高級の概念を持ち込んで発売したのはテスラが最初であろう。そしてテスラモータースが設立されたのは2003年と、まだようやく11年目を迎えたばかり。初の市販車となった『ロードスター』を発売したのは2008年だから(日本国内は2011年)、実際に車を販売してから5年しか経っていない。そのテスラ ロードスターですら、価格は1000万円を超えていた。だから4ドアセダンの高級車、モデルSはさぞかし高いんだろうなぁと思いきや、何とベースモデルは823万円。しかも消費税8%を織り込んでの価格だというからビックリである。

まあ、この5年で多くのノウハウを蓄積した結果、価格を抑え込むのに成功したと思うのだが、この価格だと潜在的な購入希望者は誰もが思わず振り向くクルマだといって過言ではない。そして何より、電気自動車の一番のネックである航続距離に関して、最強の85Kwパフォーマンスならば実に502kmのレンジを持っている。これはガソリン自動車と何ら変わるところはない数値だ。しかも最高出力310kw(わかり易く言うと416hp)と600Nmという途方もない最大トルクを持ち合わせているのだから、性能面でも何ら不満はない。おまけにこの600Nm、発進したその瞬間に発揮されるという電気自動車の特性を持っているから、その性能もまた一般道で使う限り途方もないものなのである。

そんな高級電気自動車にして途方もないパフォーマンスを有するクルマだから、おいそれとアクセル全開はなかなか難しい。ところがこれを可能にする試乗会をテスラが催してくれた。それがモデルSの氷上試乗会である。うっすらと雪が載っているとはいえ、その下は氷。履いているのはスタッドレスタイヤだから、思いっきり全開にして多少失敗したところでスピンするだけで、ぶつかる心配はほとんど皆無。そんなわけで、モデルSのアクセルを思う存分踏み込む最高の機会を得たというわけである。

そうはいっても全開にするとほとんどホイールスピンを起こすだけだから、恐らく大いに体がシートバックに押し付けられるだろう強烈な加速や、凄まじいスピードが体感できたわけではない。それでもベタ踏みできる希少な機会だった。

ドアハンドルは車両に近づくとニョキッとボディからせり出す。これを手前に引けばドアは開き、本革の豪華な内装とiPadよりもさらに大型の巨大ディスプレイをセンターコンソールに持つインテリアが目に飛び込む。すでにその時点でready to go。あとはメルセデスと同じ(というかパーツ自体はメルセデス?)ステアリングコラムから生えるレバーをDのポジションに入れれば、あとはアクセルを踏むだけである。アクセルレスポンスはすこぶる良くて、グリップ力のある路面だとさぞやガツンとくる加速を見せるだろうなぁと想像できるが、ここは音もなくするするとスタート。しかし、すでに黒く輝く氷面が顔をのぞかせているコースは、ほんのわずかにアクセルを開けてコーナーを脱出しようとしただけでガガッという音とともにトラクションコントロールが作動してしまうほど路面は滑りやすい。しかし、このトラクションコントロール、非常に安全マージンが大きくて、一般ドライバーがドライブするには非常に重宝すると感じられた。モデルSはエアサスペンションを装備する。車高をロー、スタンダード、ハイ、ベリーハイの4段階からセレクトすることができ、今回はスタンダードとハイをチョイスしてドライブしたが、路面が荒れていたこともあって、あまり乗り心地の明確な違いは分からなかった。

2ラップ目はそのトラクションコントロールをオフにする。操作は例の巨大なディスプレイからコントロールをセレクトし、さらにその中のトラクションコントロールをセレクトするだけ。ただし、本当にオフにしてよいかどうか再度訊ねてくるので、それでOKを出せばよい。この状態だと、威勢の良いアクセルオンでは全くトラクションがかからず、タイヤが氷を掻く音と、モーターの音が空しく響くだけ。ステアリング、アクセル、ブレーキのコントロールをしながらカウンターステア状態に入ってもそう簡単に車両を立て直すことは困難だった。しかしながら、このトラクションコントロールは完全にオフにはならず、スリップアングルの限界に達する少し前に介入してくる。 また、トラクションコントロールをオンの状態でフルスロットルにすると、タイヤがグリップしなくなった時点で、アクセルの方も絞ってくれるから、非常に安全かつ快適に走れるのだ。

朝の9時頃から始まって、予定終了時間は午後3時。この間走り詰めでも、バッテリーは持つ。これはたとえ、バッテリーの容量が単に大きいだけだからといわれても、一般ユーザーが使うには大いに高い安心感を得られる。モデルSは新たにChadeMo方式の充電スタンドにも対応するから、高速上での充電も可能になった。未来が近づいたことを実感できる高級車である。

《中村 孝仁》

中村 孝仁

中村孝仁(なかむらたかひと)|AJAJ会員 1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

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