フルモデルチェンジしたノア/ヴォクシーで、最も気になるのが新たにラインナップされたハイブリッドモデルだ。このクラスではセレナが先んじたが、モーター走行ができる本格的ハイブリッドはこのクラス初。“5ナンバーミニバン”初の本格ハイブリッドの走りを試した。
エンジンとミッションのシステムは、パワーユニットをプリウス系と基本的に同じにする。シフトレバーを電子式のエレクトロシフトマチックとし、モードスイッチは「EVドライブモード」「エコドライブモード」「パワーモード」の3つから選べるのも同じだ。ハイブリッドのシステムインジケーターはメーター内に表示され、ここでハイブリッドシステムの出力や回生状態をリアルタイムで知ることができる。メータをエコエリアに保つことで、より省燃費に徹した走りに貢献するというわけだ。
用意された試乗コースは、会場敷地内ということで日常領域を想定しての試乗となった。イグニッションをONにし、シフトレバーを「D」に入れるとクルマはモーターによってそろりと動き出す。エンジンが冷えているとか、エアコンやヒーターの関係でONしなければいけない時を除けば基本的にこの状態で動き出す。この辺りがEV走行に対応していないセレナとの大きな違いだ。
クルマが動き出し、アクセルを少し踏み込むとエンジンが自動的に始動。上り坂にさしかかってエンジンに負荷がかかる際もエンジンが始動し、この動作スケジュールはほぼプリウス等と同等と思っていい。ブレーキのフィーリングも自然な感じで、回生による違和感もほとんど感じなかった。
平地での発進はそれほどパワーは感じなかったが、上り坂にさしかかってアクセルを踏み込むと、モーターのアシストも加わってより力強い走りになる。パワフル感を感じるほどではないが、多人数乗車ではプラス効果として働くだろう。軽快感もイマイチで、この辺りは車重の軽いガソリン車の方が勝っているように感じた。
一方、ハイブリッド車がEV走行に入れば当然エンジン音は聞こえない。夜間でも近所に迷惑を掛けることなく帰って来られるのはメリットと言える。それとハイブリッド車にはエンジンフードにサイレンサーが取り付けられ、遮音性の高いガラスを採用するなど、全体としてガソリン車よりも騒音対策は高いようだ。また、リア用エアコンがフルオートが標準となり、ヒーターもより強力なタイプが装着されている。これはハイブリッド車にありがちな暖房の弱さを補完するためだ。
とはいえ、これらを得るためのガソリン車との価格差は40万円前後ある。より充実した装備で相殺される部分はあるものの、ガソリン車も免税となった状況下では価格面でそれほどメリットは感じないのも事実だ。むしろ、この価格差を活かして充実装備に回考え方も出てくるだろう。
ハイブリッドを選択する場合、オススメとなりそうなのは、車重の関係で落ちがちな燃費を少しでも改善しておきたいという人。年間走行距離が多くハイブリッドの効果をより高く享受できるという人にもオススメとなる。ただ、ガソリン車との差は思ったほど大きくない可能性はある。ハイブリッド車はその辺りを念頭に置きつつ選択したい。