【BMW 5シリーズ 試乗】改良で一層引き上げられたエグゼクティブセダンの資質…萩原秀輝

試乗記 輸入車
BMW 550i(マイナーチェンジ後モデル)
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現行型のBMW『5シリーズ』は2010年にデビューした。従来型までの5シリーズは、スポーティ・セダンとしての評価が高かった。その価値はすでに市場に認知されただけに、現行型はスポーティかつエグゼクティブ・セダンとしての価値を磨きあげている。

リデザインされたヘッドライトは精悍さと先進性を感じさせる

そして2013年、5シリーズはマイナーチェンジを実施した。エクステリアでは、新たにデザインされたキドニー・グリルとヘッドライトを採用。上級モデルは、精悍な印象を与えるアダプティブLEDヘッドライトを装備する。フロント・バンパーも変更され、空力特性が向上する機能も含まれている。新デザインのリヤ・コンビネーション・ライトを装備し、シャープに輝くLEDエレメントによりBMW伝統のL字型デザインが浮かび上がる。リヤ・バンパーも変更になり、軽快で躍動感のあるエクステリアにまとめあげている。インテリアでは、上級モデルにフル液晶表示のマルチ・ディスプレイ・メーター・パネルを採用し走行モードにより文字盤のデザインが変わる機能を備えている。

さらに、スタンダード・モデルに加えエクステリアとインテリアの装備類をパッケージ化したデザイン・ラインとして「Modern」と「Luxury」が用意されている。従来型でも好評だった「M Sport」もパッケージオプションから新たにグレードとして独立した。中でも、ModernとLuxuryは新型5シリーズのエグゼクティブ・セダンとしての価値を際立たせるモデルとして注目できる。

◆「ドライビング・アシスト・プラス」が全車標準、アクティブセーフティがさらに向上

また、通信モジュールの搭載により乗員の安全とクルマの状態を見守ることで、走行中の安心感が増すBMW コネクテッド・ドライブ・スタンダードを標準装備。なおかつ、カメラとミリ波レーダーによるドライバー支援システムとしてドライビング・アシスト・プラスも全モデルに標準装備となった。

ドライビング・アシスト・プラスには4つの機能がある。前車接近警告は、前車との車間距離が不足した場合にメーター・パネル内とヘッド・アップ・ディスプレイ(装備車を設定)に警告を促すアイコンを表示。続いて、音による警報を発する。衝突回避・被害軽減ブレーキは、前記の警告と警報でもドライバーが回避操作をしなかった場合に自動的にブレーキが介入し、追突の回避または被害の軽減を図る。歩行者検知機能も備え、接近時には警告後にブレーキが介入する。

アクティブ・クルーズ・コントロール(ストップ&ゴー機能付き)は、前車との車間距離を維持しながら自動的にアクセルやブレーキなどを制御し速度調整をする。レーン・ディパーチャー・ウォーニングは、車線を逸脱するとステアリングに振動を与えドライバーに注意を促す。その他にも、車線変更の際に左右後方から急接近してくるクルマがある場合にドライバーに警告をするレーン・チェンジ・ウォーニングを装備するなど安全とかかわる機能の充実度がきわめて高い。

◆V8エンジン刷新、先代M5を超えるパワー

走行性能については、専用のボディを持ちクラスの常識を超える室内スペースと荷物スペースの多彩な使い勝手を備えるグランツーリスモに、2リットルの直列4気筒にツインスクロール式ターボチャージャー、高精度ダイレクト・インジェクション・システム、ダブルVANOS、バルブトロニックといった技術を採用するBMWツインパワー・ターボを組み合わせたエンジンを積む528iが追加された。大柄なボディに2リットルエンジンでは性能的に物足りないように思われそうだが、ターボチャージャーを持たない自然吸気式エンジンであれば3リットルクラスを超える最大トルクを発揮するだけに力強さの余裕さえ実感できるはずだ。

セダンとツーリングも550iのエンジンが強化された。4.4リットルのV型8気筒エンジンにBMWツインパワー・ターボを組み合わせることで最高出力は450ps、最大トルクは66.3kgmに到達。とくにトルクについては、F1に直結する技術を投入した5リットルのV型10気筒エンジンを積む先代のM5の性能を何と大幅に超えてしまった。

とはいうものの、性能を持て余すのでは……といった心配はいらない。実際に、今回の取材で試乗をした550iのM Sportはアクセルの踏み込み量が少ない日常的な場面では操作に対してエンジンの力強さが素直に立ち上がる。エンジン回転数に頼って力強さを得る必要もないので、周囲の流れに合わせて走らせると8速ATが自動的に早めのタイミングでシフトアップを繰り返し1500rpm以下に保たれる頻度が多い。

それだけに、超高性能なエンジンと搭載していながら優れた効率を発揮する回転域の維持が可能なため好燃費が期待できる。さらに、信号待ちなどで停車中の燃料の消費を削減するエンジン・オート・スタート/ストップ機能の採用。なおかつ、走行モードをECO PRO(エコ・プロ)にすればアクセル操作に対する余計な気遣いなしに高効率な走りを実現。発表データによると、従来型と比べ最高出力と最大トルクが約10%向上しているにもかかわらず、JC08モード燃費は約20%改善されている。

◆しなやかな乗り心地、一体感味わえるハンドリング

もちろん、550iの魅力は日常的な場面での扱いやすさや高効率なエンジン特性だけではない。アクセルを踏み込むと、スポーティ・セダンとしての本領が現れる。各シリンダー内で強烈な爆発エネルギーがピストンを押し下げている様子が思い浮かぶような鼓動感を示しつつ、高回転域まで一気に吹き上がる。8速ATがシフトアップを繰り返す際のエンジン駆動力の制御が小気味良く、メリハリの効いた加速が楽しめる。

しかも、こうした走りをこなしながら4輪はバランス良く路面をつかみ続けるので安定性の高さが確かめられる。コーナーを駆け抜ける場面では、ステアリング操作に対してボディが一回り小柄になったのでは……と錯覚するくらいに軽快な操縦性も獲得。それでいて、サスペンションが過剰に引き締められているわけではない。むしろ、走行モードをコンフォート+にすると乗り心地のしなやかさの方が印象に残るほどだ。

BMWというとスポーティ・セダンとしての価値が注目されがちだが、新型5シリーズの投入により安全性や環境性能にも高度な配慮をしたエグゼクティブ・セダンとしての評価も今後は上昇するに違いない。

《萩原秀輝》

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