【日野環境技術説明会】PHVバス、V字パワートレーン採用の理由

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日野自動車では、バス・トラックの新しい動力を試す実証実験をいくつも行っている。電気自動車の小型バスや燃料電池の路線バスなど、どれも意欲的な試みを感じさせるものだが、やはりユニークなモノに目が行く。

現在実証実験中のモノでは、EVトラックが面白い。何故かと言うと、コレが珍しいことにFFなのである。実証実験のパートナーである宅配便業者から、低床で荷物が積みやすい構造を、というリクエストがあったことから、とにかく低床の荷台を追求した結果、こうなったのだとか。その結果、超低床のラダーフレームを開発し、バッテリーを薄いモジュールにすることで床面高さは440mmと、通常のトラックに比べて2分の1の高さを実現できたそうだ。

EVは市街地や住宅地など建物が密集したところで何度もゴーストップするような使い方に向いているから、荷物を出し入れしやすい、荷室に出入りしやすい方が断然便利なのは頷ける。しかし後ろに荷物を積載するトラックの常識からすれば、考えられないレイアウトだ。

普通のトラックをそのままFF化すれば、荷物を積むほどトラクションが逃げてしまうから伝達効率が低下してしまう。その点、このEVトラックは超低床にすることで低重心となっているから、荷物を積んでも重量配分がリヤ寄りになり難い。エンジンよりもコンパクトなモーターがフロントアクスルより後ろにあって、重いバッテリーが車体中央に置かれているから、なおさらだ。まるでミッドシップでフロントドライブのようなレイアウトなのだ。

HV開発部の清水室長に確認してみると、やはり上記の条件からEVトラックはFF化できたそうだ。

それと1.2トン積みと比較的積載重量が少ないことも、このレイアウトを実現できた理由とか。

さらに現在開発中の段階ではあるが、今年の東京モーターショーに参考出品予定であるプラグインハイブリッドの中型バスも興味深い。41人乗りの日野メルファをベースにしたもので、リヤエンジンでトランスファーをミッドに搭載し、そこからリヤタイヤを駆動するというV字レイアウトのパワートレーンをもっているのだ。

しかもエンジンからの出力とトランスファーの入り口と出口の合計3か所にクラッチを備えている。このクラッチを断続することにより、エンジンとモーターで走行し減速時はモーターがジェネレーターとなって回生充電するハイブリッドモード、モーターによるEVモード走行、さらにはエンジンでジェネレーターだけを駆動して発電する給電モードの3つのモードを切り替えることができるのだ。

モードとしてはプリウスPHVと同じものだが、どうしてこんなレイアウトになったのだろう。

製品開発部の参事、鈴木氏に尋ねてみた。

「リヤエンジンのバスではエンジンとリヤアクスルの間にモーターを組み込むスペースがありません。そのため一度エンジンの出力をリヤアクスルより前まで持っていく必要がありました。こうすることで搭載できるモーターの自由度も格段に広がったんです」。

このレイアウトに行き着くまでには、様々なレイアウトを考えてみたそうだ。しかし決め手となったのは被災地からの意見だったとか。

「震災時は電気がなくて不自由したのでハイブリッドバスには発電して、その電力を供給できる給電機能が求められたのです。そのため、このV字型のパワートレーンになりました」。

これは低床のバスでは実現不可能なため、メルファがベースになったそうだ。しかし3つあるクラッチは直列しているので、エンジンで走る際には発進時に大きなトルクが、それぞれにかかる。効率面ではこのあたりが気になるが、これもまだ実験車両の段階。試作車を作るほどに改良されて、まったく違うレイアウトに成長するかもしれないのだ。

《高根英幸》

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