最近このサイズ感のSUV、アツいですね!
この場合の“アツい”は熱いと厚いのダブルミーンなんですけど、欧州各社もこぞってニューモデルを投入することでさらに競争は激化、購買者にとっては迷える選択肢がとっても豊富イコール車種の層が厚い。悩ましくも嬉しい状況になっています。
そもそもSUVというボディタイプはモテという観点において他の追随を許さないキング・オブだと思うんですが、その理由としては「キャンプ・アウトドアなど豊かなライフスタイルを彷彿とさせる」「背の高いクルマがカッコイイ」「若々しい」
など様々ありつつも、結局のところ統括すれば、「デカイからイバリがきく」というところに集約されるような気もします。
でもいくらモテたいからってアメリカの道路をクルーズするかのような馬鹿でかいクルマは、燃費やら維持費やらで現実的ではないし、第一日本の道路事情には不釣り合いだし……と考える近頃の堅実な人々にオススメしたいのがこの『クーガ』。ルックスよし、販売価格もなかなかお手頃で、かつての“アメ車”のルーズなイメージを覆すアグレッシブな走りも備えたときたもんだ。
パワートレーンは、フォードが今後のグローバル展開の要として開発した1.6リッターターボ(その名も“Eco Boost”)+6速トランスミッションというものなんだけど、1.6リットルという一見ショボイ数字に惑わされることなかれ! なんにも知らないで乗ったら、体感1.8リットルは優に超えてるトルクを出してくるのです。勾配の強い登坂でもガンガン加速を生んでいく爽快パワフルエンジンであることは間違いない。
近年ダウンサイジングエンジンの流行によって、どこのメーカーも小排気量エンジン+過給器という形式を採っているけれど、フォードのEco Boostはディーゼルエンジンの技術をもとに125もの特許を武器に独自で開発した直噴+吸排気独立可変バルブタイミング+ターボという気合の入ったもの。メーカーによっては、ときにこの過給ラグが大きく、踏んでもスカっとした感じを生んで軽いストレスになったり、モタっとしたタルさを感じる元になるのですが、さすが特許数をプレスリリースに挙げるほどの自信作Eco Boost、この息切れの無さは本当に素敵でした。
もうひとつ感激したのは三百万円台で日本導入全モデルに搭載されている四輪駆動システム「インテリジェントAWD」とトルクベクタリングコントロールのおかげで驚くほどコーナリングがラクでスムーズなこと。通常はFFベースになっているトルク配分を速度、スロットル開度、ステアリング舵角、路面状況から判断して100:0-0:100までトルク配分するという、その名の通りカシコイAWDと、フロントの左右ブレーキを利用してトルク配分デファレンシャル効果を生み、グリップとステアリングを調整してアンダーステアを防ぐというトルクベクタリングは、思った以上に早く介入してくるのがポイントです。
もちろんクーガにもトラクションコントロールや横滑り防止装置も付いてはいるけど、それらが危機に於いて介入してくるのならば先述のAWDとトルクベクタリングはもっと積極的にドライバーをアシストする感じ。例えばいろは坂的なワインディングでは、法定速度内でのコーナリングですでに介入してきますから、慣れないうちはコーナリング後半できゅっと内側にハンドルを持って行かれ、独特の気持ち悪さを感じるシーンもありました。ただこれは所有すればきっとドライバーがクルマに慣れる機能。慣れちゃえば気合いとど根性の要らないラクラクカーブ攻略に依存してしまうこと請け合いです。
とにかくアメリカ産とかフォードとか、これまでアメリカのクルマに抱いていたネガティブイメージを覆す一台になると思います。そもそも日本に入ってくるクーガはなんとスペインのバレンシア生産。とんでもない時代になったものですね!
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★
オススメ度:★★★★
今井優杏|モータージャーナリスト
レースクイーン、広告代理店勤務を経て自動車ジャーナリストに転向。WEB、自動車専門誌に寄稿する傍らモータースポーツMCとしての肩書も持ち、サーキットや各種レース、自動車イベント等でMCも務めている。AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員。