【インタビュー】BEWITH中島社長…正攻法を貫き、“御用達”カーオーディオブランド目指す

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ビーウィズ 代表取締役 中島俊晴氏
  • ビーウィズ 代表取締役 中島俊晴氏
  • ルームミラー型リニアPCMプレーヤー「STATE MM-1D」
  • ビーウィズ 代表取締役 中島俊晴氏
  • 偏心コーン採用の Confidence II C-130II
  • ルームミラー型リニアPCMプレーヤー「STATE MM-1D」
  • ルームミラー型リニアPCMプレーヤー「STATE MM-1D」
  • アンプ群をインストールしたデモカー
  • ルームミラー型リニアPCMプレーヤー「STATE MM-1D」

市販の高級カーオーディオ製品を取り巻く環境は、この10年ほどで大きく様変わりした。言うまでもなく、カーエレクトロニクスの中枢に深く組み込まれた最近の純正AVシステムは単独での交換が難しく、また音質や機能の面でも相応のレベルアップを遂げている。

だから市販の高級製品も、最新の純正システムへのアドオンに柔軟に対応できる先進性と、それを圧倒的に凌駕するだけの魅力や個性を兼ね備えていなければ生き残れない。そうした時代背景から生まれた高級カーオーディオ界のニューウェーブを代表するブランドのひとつが今回取材したBEWITH(ビーウィズ)だ。

メーカーとしての創業は2002年。世界初のオール偏芯コーンを採用した13cm2ウェイスピーカーシステム「Confidence(コンフィデンス)」でデビューしたBEWITHは、翌2003年にパワーアンプとオーディオレギュレーター(安定化電源(可変タイプ))を、2005年にルームミラー型リニアPCMプレーヤー「ミラーメディアMM-1」を、そして2007年にはデジタルプロセッサーを発売し、音の入口から出口までをワンブランドで揃えることのできる総合メーカーへと急成長した。

伝統がモノを言う高級オーディオの分野に同社が敢えて参入し、短期間で成功を収めた理由はどこにあるのだろうか。BEWITHブランドの創業者にして代表取締役である、中島敏晴(なかしま としはる)氏を訪ね、創業のエピソードと製品作りに対するポリシー、そして将来の構想について話を聞いた。(本文中では敬称略)

◆輸入商社の経験が理想のカーオーディオへの原動力となった

中島:当社はもともと、アメリカやヨーロッパのカーオーディオ製品を輸入販売する商社として1994年に創業しました。海外製品には見習うべき点もたくさんありますが、品質などについては正直苦労させられることも多いと感じていたのです。

----:カーオーディオは、クルマに取り付けた後で交換や修理をするとなるとユーザーも大変ですからね。それに当時の海外製品はいきなりモデルチェンジしたり、音が変わってしまったり、ということも結構あったような……。

中島:それなら自分たちで理想のカーオーディオをつくることはできないか、と考えるようになりました。実は私たちの創業時からのポリシーとして、“御用達(ごようたし)の精神”というのがありまして……。

----:“宮内庁御用達”とかのアレですか?

中島:はい、それと同じです(笑)。本物がわかる特別なお客様に良さを認めていただき、製品ともども末永くお付き合いしていただける。それが私たちの夢なのです。ですから、コンセプトは常に先進的で、機器としての信頼性も高くなければならない。それから安易にモデルチェンジしないとか…。

----:なるほど。確かにBEWITH製品はどれもロングライフですよね。たとえば、今年ついにモデルチェンジして新型の「STATE MM-1D」になりましたが、先代(初代)の「ミラーメディアMM-1」も随分長く売っていたでしょう。

◆iPod nanoより早かったメモリーオーディオ「MM-1」

中島:そうですね。初代MM-1は2005年6月に発売したので、2012年の暮れに新型のMM-1Dを発表するまで7年半モデルチェンジせずに売り続けたことになります。MM-1のシリーズはCF(コンパクトフラッシュ)を使った非圧縮のメモリーオーディオプレーヤーですが、当時はカー用でもホーム用でも固体メモリーを使ったオーディオというのはほとんどありませんでした。

----:固体メモリーを使ったオーディオが世の中に普及するきっかけになったのは、確か初代iPod nanoあたりが最初で、その発表が2005年9月ですから、MM-1はまさに時代の最先端を走っていたことになりますよね。また、当時は高級車を中心にデッキを簡単には交換できない車種が増え始めた頃だったので、既存のオーディオと共存できるルームミラー型のコンセプトも評判でした。

中島:取り付けのしやすさやデザインの良さでも評価いただけまして、オーディオマニアではない高級車オーナーの方にも数多く買っていただきました。実はMM-1は7年を過ぎてもコンスタントに売れ続けていましたので、新しいMM-1Dも外観は敢えて変えず、中身を最新仕様にアップデートすることにしたわけです。

----:確かに、表面仕上げが少し違うだけで形状は新旧まったく同じに見えます。

中島:見た目はそうなのですが、回路は100%新規開発で、使用パーツも外装を含めて90%以上が新規です。音質を向上させるため、ボディ素材にはマグネシウムを採用しました。マグネシウムは金属の中でもっとも軽い素材で、しかも内部損失がアルミの250倍もあって不要共振を抑えてくれる。加工がたいへん難しいのですが、これによって音の透明感や情報量がさらにアップしました。

◆正攻法を貫いたら、他にない製品ばかりになっていた

----:これまでお話しを伺ってきたMM-1も含めて、BEWITHの製品はどれもユニークですよね。

中島:私たちのような新規参入のメーカーから見ると、「カーオーディオ界の常識は世間の非常識」というように思えてしまうことも多いのです。たとえばBEWITHのスピーカーは、小型のトゥイーター1種類を除いてすべて偏芯コーンです。偏芯コーンで良いものを造るには高い製造技術が必要な上に、音の指向性が偏るため、スピーカーと相対して聴くホーム用としては一般的ではありません。でもカーオーディオというのは、ほぼ間違いなくスピーカーから偏った位置で聴くことになりますから、その指向性の偏りをうまく利用すれば理想的なカースピーカーができる。

----:なるほど。それからパワーアンプのほうも、ずっとモノラル(1チャンネル)にこだわっていますよね。

中島:ホームオーディオの最高峰といえば、間違いなくモノラルパワーアンプ複数台使用ですよね。でも車載用のモノラルアンプでピュアオーディオのメインとして使える製品はほとんどなかったのです。ステレオ再生の本質を追求すれば、やはり1チャンネルにアンプ1台、さらにはスピーカー1本にアンプ1台じゃないかと。

----:そのぶん、どうしてもアンプの数が増えてしまうわけですが、BEWITHのアンプはコンパクトで軽いから、複数台を並べても意外と邪魔にならない。

中島:はい。小型軽量で低消費電力、低発熱という点も大きな特徴です。普通の製品ならトランクルームが埋まってしまうような超弩級のフルマルチシステムも、BEWITHのアンプならクルマの使い勝手や重量増を気にせず楽しんでいただけるのではないかと思います。

----:こうして見てみると、BEWITHの製品はどれも意外に正攻法というか、見た目の印象とは正反対ですよね。

中島:正攻法を貫いたら、他にない製品ばかりになっていた、という感じでしょうか(笑)。

◆海外市場でも注目を浴びる、比類のないコンセプト

----:最近は海外市場での評価も高いそうですね。

中島:はい。生産台数が限られますので全世界に展開というわけにはいかないのですが、ヨーロッパやアジアを中心とした輸出も好調で、むしろ国内市場より元気かもしれません。

----:CES(コンシューマー・エレクトロニクス・ショー、毎年アメリカ ラスベガスで開催される世界最大のエレクトロニクス製品見本市)のイノベーションアワードやEISA(ヨーロッパ20カ国の映像・音響専門誌50媒体で組織する団体)アワードを獲得したり、海外ではかなり前から注目されていたじゃないですか。

中島:最初のMM-1のときは、せっかくだから応募するだけしてみようと日本から製品と書類を送ったのです。続いて翌年にはA-110SパワーアンプとモニタースピーカーのMonitor H-1もイノベーションアワードを受賞しています。

----:なるほど、そうだったのですね。ではEISAアワードのほうも製品と書類ですか?EISAアワードは、書類選考だけではなく、実際の販売実績(販売国数等)等クリアしなければいけない基準がCESのイノベーションアワードより厳しい上、欧州市場はE規格取得等、小メーカーには厳しいハードルが多いと聞きましたが。

中島:そうです。欧米の専門誌は日本と違って、評論家の感覚的な評価じゃなくて必ずデータを測って掲載しますから、その意味ではメーカーの大小関係なく公平なのです。ちなみにEISAアワードはスピーカーシステムのConfidenceで2010年にいただきました。

----:最後は今後の商品展開について伺います。今年は東京モーターショーにも出展されるとのことで、そろそろ新製品も気になるところですが…。

中島:はい。東京モーターショーの出展は今回で3回目となります。BEWITH始まって以来の画期的なプランが発表できるよう準備を進めているところですので、もうしばらくお待ちいただければと思います。

《内藤 毅》

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