当初“レザーパッケージ”のみだった『The Beetle』に、ファブリックシート仕様の導入が始まった。
「The Beetle Design」のグレード名で展開されるこのモデルこそ、シリーズのベースモデルの位置づけ。もちろん最大の特徴はシートで、ブラック(またはベージュ)のファブリック地の表皮となる。同時にシート自体も“コンフォートシート”と呼ばれるタイプとなり、スポーツタイプのレザーシートに対し、座面、背もたれとも、ややシェイプが浅くなる。が、乗降性はスムースだし、サラッとした表皮で座り心地はごく快適。普段着感覚で心地いい。
装備がいつくか省略されるのは事実。けれどバイキセノンヘッドランプはオプションで選べる。2ゾーンフルオートではないもののエアコンは標準装備され、純正ナビゲーションもレザーパッケージ同様に、オプション設定されるものが装着可能だ。
タイヤ&アルミホイールは16インチが標準。パワートレーンは1.2リットルTSI+7速DSGと、目下のところシリーズで共通のユニットだ。走らせてみると、動力性能に過不足はなく、乗り味も17インチのレザーパッケージに対し大差はない印象。タイヤサイズ違いでステアリングのタッチに幾分か軽快感があり、サバッとサッパリとした乗り心地になっている…といった程度だ。
思えばもともとビートルは、ゴルフ誕生までのVWの主力車だった。とすると、ゴルフがある今だが、250万円と魅力的な価格設定でプレーンな内外観のこのモデルは、ある意味で“裏ゴルフ”的な、もう1台のVWの実用車かもしれない…と思った。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★★★
島崎七生人|AJAJ会員/モータージャーナリスト
1958年・東京生まれ。大学卒業後、編集制作会社に9年余勤務。雑誌・単行本の編集/執筆/撮影を経験後、1991年より『GOLD CARトップ・ニューカー速報』の取材/執筆を皮切りにフリーランスとして活動を開始。以来自動車専門誌ほか、ウェブなどで執筆活動を展開、現在に至る。 便宜上ジャーナリストを名乗るも、一般ユーザーの視点でクルマと接し、レポートするスタンスをとっている。