対象車種では7%から50%超に引上げ
日産自動車と仏ルノーが部品の共用化を大幅に増やすプロジェクトを進めている。日産が導入している新しい車両設計手法に合わせて両社で中長期に取り組むもので、対象となる車種での共用化率は現状の7%から50%程度まで引上げる。両社は2009年に、外部からの購買品すべてについて共同チームを通じて行う態勢を構築しているが、部品共用化の加速で原価低減のシナジー効果を飛躍的に高める狙いだ。
日産が導入した新しい車両設計手法は「CMF」(コモン・モジュール・ファミリー)と呼んでいる。車両の部位(モジュール)を、(1)エンジンやミッションなどの「エンジンコンパートメント」、(2)前部の車体骨格である「フロントアンダーボディ」、(3)インパネやシートなどの「コックピット」、(4)車体の床部分である「センター・リヤアンダーンダーボディ」―の4つに分け、さらに電子部品関係を加えた合計5つのモジュールを構築。これらを車種に応じて組み合わせることで、部品の共用化を促進するものだ。
C、Dセグメントを対象に「CMF1」を展開
日産はまず「CMF1」として、CセグメントおよびDセグメントの車両にこの設計手法を採用している。エンジン排気量では1.5~2.5リットルクラスのモデルとなる見込み。新設計の車両は13年から投入され、同年には世界で販売される日産車のうち12%程度を占めると想定している。さらに16年までには60%まで高める計画だ。
自動車業界は従来、アンダーボディーなど車体の骨格であるプラットフォーム(車台)を共通化して複数の車両を開発し、部品の共用化を図ってきた。しかし、この手法では共用化に限界があるため、CMFのように部品群を一定の塊であるモジュールとして捉える開発手法を採用する動きが、国内外で活発になっている。日産によると、プラットホーム方式では最大4割程度だった共用化率を、CMFでは8割まで高めることが可能という。
日産は「CMF1」の展開に際し、10年度までにルノーとの間で「共用化の対象部品など中期の部品戦略の策定を終えた」(購買部門担当の山内康裕常務執行役員)という。これに基づき、現状では7%程度にとどまっているルノーとの共用化率を、CMF1の実行により50%を超えるレベルまで高める目標を掲げた。実現の時期は、両社の商品改良のタイミングに関るため、明らかにしていない。
部品統合で生産量が10倍になるケースも
共用化により同一部品の発注量を大幅に増加させ、原価低減につなげる。たとえば「ステアリングメンバー」と呼ぶ操舵装置の構成品に付ける部品では、設計の工夫により現状では日産とルノーで7種類ある部品を1種類に統合。これによって、1部品当たりの生産量は約10倍に増やすことが可能になったという。
日産とルノーの11年の世界販売は、前年を10%上回る739万台(ロシアのアフトバズ社分=64万台は除く)だった。日産は16年度に世界シェア8%の確保をめざす中期経営計画を進めており、達成できればルノーと合算した世界販売は1000万台レベルに達する可能性が高い。
両社の原価低減効果は、共用化によるシナジーに成長力(販売量の増加)というシナジーを加えれば、一段と高めていくこともできる。