『N BOX +』は、リアシートをやや前方に設置することによって荷室容積を増やし、大きな荷物を出し入れしやすくしている。
N BOX自体は、いわゆる“ハイトワゴン”と呼ばれる各社おなじみのカテゴリーの軽自動車だ。クルマの仕上がりは予定調和的で可もなく不可もない。強いて指摘させてもらうとすれば、切ったハンドルが戻る際のセルフアライニングトルクが少しだけ強過ぎる。背が高い分、重心が上方にあるから、ゆっくりとハンドルを戻さないと揺れが大きくなる。
N BOX +は非常に画期的だ。なぜならば、軽自動車以外も含めるすべての自動車の中で、初めてクルマ椅子のまま畳んだ後席スペースに乗り込むための装備キットがオプショナルで後から付けられるようになったからだ。
これまでは、“特装車”という特別に改造された専用の高価なクルマを購入するしか手立てがなかったのだ。
自分の父親が長年クルマ椅子に乗っていたからよく知っているのだが、彼らはクルマ椅子がスムーズに受け入れられる乗り物や施設でないと、遠慮してしまってただでさえ少ない外出の機会を自らさらに少なくしてしまっている。そんな気遣いは要らないと説明しても内向してしまう。
装備キットはもっと早く世に出て然るべきだったが、これでクルマ椅子に乗る人々の外出の機会が少しでも増えると考えて、まずは喜びたい。そして、他のクルマでも同じようにクルマ椅子装備キットが後から購入できるようになることを強く願う。高齢化時代なのだから急がれるだろう。
5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア・居住性:★★★
パワーソース:★★★
フットワーク:★★★
オススメ度:★★★★★
金子浩久|モータリングライター
1961年、東京生まれ。主な著書に、『10年10万キロストーリー 1〜4』 『セナと日本人』『地球自動車旅行』『ニッポン・ミニ・ストーリー』『レクサスのジレンマ』『力説自動車』(共著)など。