【インタビュー】プローブの先駆者、ホンダは「インターナビポケット」でスマホ戦略をどう描く

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本田技研工業 グローバルテレマティクス部 鷲津公洋氏
  • 本田技研工業 グローバルテレマティクス部 鷲津公洋氏
  • インターナビポケットの表示されるプローブ情報
  • ディーラーオプションのディスプレイコンポ「WX-135CP」とインターナビポケットを接続
  • ディーラーオプションのディスプレイコンポ「WX-135CP」とインターナビポケットを接続
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  • 本田技研工業 グローバルテレマティクス部 鷲津公洋氏
  • ホンダ インターナビ ポケット
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アップルは、先日のWWDCで「iOS 6」の一機能として地図とナビゲーションを提供することを明らかにした。先行するGoogleのAndroidスマートフォンなど、最新の地図やプローブによる膨大なデータと、リアルタイムの交通情報からルートを導くクラウド型カーナビゲーションサービスは次世代カーナビの姿として止めようのない流れだが、車載機メーカーのみならずOSとハードウェアのプラットフォーマーが先を争って自動車分野に参入し、技術開発にしのぎを削っている。

そんな中、フローティングカーデータでプローブをいち早く実用化したホンダは、iOS向けアプリ「インターナビポケット」で本格的にスマートフォンでのナビゲーションを実現し、同時にディーラーオプションのディスプレイコンポ「WX-135CP」を投入することで車載器の7インチディスプレイでの表示と操作も可能としている。車載機で培ったサーバ運用の実績とノウハウは、どうスマートフォンに生かされているのか。

自動車メーカーが自らカーナビゲーションアプリを提供する狙いについて、「インターナビポケット」の開発担当者、グローバルテレマティクス部サービス開発室の鷲津公洋氏に聞いた。

◆軽カーシフトへの対応

----:これまでインターナビでは「ドライブロケーター」という、google map上にプローブによるインターナビルートを表示するだけの音声ガイダンスをおこなわない簡易サービスをスマートフォンで提供していましたが、「インターナビポケット」へのブランドチェンジに伴い、交差点拡大などの道案内と音声によるリアルタイムガイダンスを車載器カーナビレベルで提供するアプリをついに提供しました。ナビアプリを出すに至った経緯について、まずお聞かせください。

鷲津:自動車購入時にオプションのカーナビを装着していただくお客様の伸びが頭打ちになり、とくに低価格車に対してインターナビをどう提供してゆくかという課題がありました。よって、ドライブロケーターの提供前から本格アプリの計画がありました。しかし、スマートフォンアプリのUIや開発に慣れていなかった我々は、最初に簡易なドライブロケーターを提供し、後にフルナビを投入することにいたしました。その間に本格的なナビアプリを提供して欲しいというお客さんの声が大きくなり、ディスプレイオーディオにスマートフォン画面を表示して車内でも安全にスマートフォンナビを利用していただく環境が整いました。

----:インターナビ・プレミアムクラブとしてプローブをスタートしてからの10年の歴史において、これまでは純正ナビに付加価値を与えて劇的に装着率を上げてきたわけですが、それにちょっとブレーキがかかってきたということでしょうか。

鷲津:コンパクトカーへのトレンドシフトに伴い、ナビに24万円を出せるお客さんが少なくなってきて装着率が伸び悩んできているというのは事実です。ハードウェアを買った人以外にもスマホアプリという形で提供することで、インターナビの交通情報サービスによる精度が高いルート案内を、より多くのホンダユーザーに使っていただきたいという思いがありました。

----:今回、インターナビポケットとディスプレイコンポの登場は軽自動車『N BOX』のヒットとタイミングが重なっています。クルマ、車載器、ソフトウェアの大きな変革を同時に行い、それがスマートフォンの普及というタイミングと見事にシンクロしましたね。

鷲津:間に合ってよかったと思っています(笑)

◆リンクアップフリーの恩恵でVICS無しでも高精度

----:このインターナビポケットを使っていて感じるのは、今更ながらルート精度の圧倒的な品質です。特に、到着予想時刻の正確さは抜群です。これまでのカーナビ車載器よりもナビとしての品質に優れていると感じています。

鷲津:インターナビの進化に終わりはなく、ルート品質向上への取り組みは続けています。アルゴリズムだけでなく、交差点ひとつひとつを洗い出してピンポイントでチューニングしています。部分的なチューニングを施すことで全体のアルゴニズムも進化する、理論と現実との比較検証で精度を高めています。このあたりは、いくらアップルやGoogleが膨大なプローブを元にルート案内しようにもなかなか追いつかれるものではないと自負しています。

----:インターナビポケットでは、オプションでVICSの「あり」と「なし」が設定されているのですが、ルートに差はあるのですか?

鷲津:まず車載ナビを購入していただいたインターナビ・プレミアムクラブの会員は、3000円でアプリをご購入いただければVICSも同時に付属します。車載ナビのご購入者ではないインターナビポケットのみのスマートフォンユーザーには、VICS情報は700円のオプション設定となっています。

ご質問のVICSのあり・なしでルート品質に差が出るかと言う点については、「ほとんど変わらない」と考えていただいて結構です。フローティングカーデータだけでも十分なルート精度を出すことができています。ただし、工事や事故の交通規制情報についてはVICSの情報を得られる場合にのみ出すことができますので、規制情報が欲しいという方はVICSオプションをお選びください。

----:これまでインターナビは、VICSを含めた情報をもとにルートを計算していたかと思いますが、VICSなしでもVICSありと変わらないルート精度を出せるようになったということですね。

鷲津:VICSの長所はリアルタイムの情報が集まってくるところなのですが、リンクアップフリーによってインターナビにもリアルタイムのデータが沢山集まるようになりました。プローブだけでリアルタイムの交通情報に対応できるようになったというのは大きいと思います。

◆スマホプローブ情報の利用は慎重に

----:スマートフォンアプリでも車載のインターナビと同様に走行情報をサーバへアップロードをおこなっていると思いますが、アプリの場合は徒歩で使っているかもしれないし、あるいは家の中でアプリを立ち上げているかもしれず、走行情報以外のいろいろなノイズが混入していると思います。それはこれまで車載機でサービスを提供してきたインターナビとしては初めての経験かと思いますが、こうしたノイズをどのように排除しているのでしょうか。

鷲津:実は(インターナビポケットの前身である)ドライブロケーターの時代からプローブの収集はやっておりまして、今はデータを見ながらノイズを弾くようなアルゴリズムの検討をしている段階です。まだ交通情報として反映はさせていません。“これは車だね”という風にアルゴリズムとして処理できれば、さらに精度を高めることができるようになると思います。

----:インターナビポケットと接続できるディスプレイコンポもほぼ同時に登場しましたが、スマートフォンと車載ディスプレイという組み合わせは、世界展開しやすいパッケージと感じます。鷲津さんはグローバルテレマティクス部ということですが、インターナビの仕組みを世界に展開していくことも視野に入れているのでしょうか。

鷲津:考えてはいます。しかし、グローバルテレマティクス部が4月に発足したばかりの部署ということもあり、具体的にどうする展開するかはまだお話しできる段階にありません。

----:最後の質問ですが、Android版の予定は。

鷲津:夏頃のリリースを目指して開発の詰めの段階に入っています。もちろんiPhone版も引き続き進化させていく予定です。

《聞き手:三浦和也》

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