【プリウスPHV 3か月検証】SNSトヨタフレンド、見えてきた成果と課題

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トヨタフレンドではプリウスPHVから日頃の運転状況についての評価や数値がつぶやかれる
  • トヨタフレンドではプリウスPHVから日頃の運転状況についての評価や数値がつぶやかれる
  • 充電状態についてもプリウスPHVからの「催促」が入る事も
  • 充電状態についてもプリウスPHVからの「催促」が入る事も
  • 天気についての質問に解答
  • 走行距離も把握できる
  • 「前回のドライブ」と限定した際は解答が得られなかった
  • エコ運転を支援するデータ、つぶやきがプリウスPHVから届く
  • メッセージ作成画面

日本車としては初の市販プラグインハイブリッドカー、トヨタ『プリウスPHV』。外部電源から車載バッテリーに充電することで、短距離なら電力だけで走行可能というEV的な特性を持つ。この特性を生かすため、クルマ以外の部分についても、使い勝手の良さをサポートしたり、EVライフをより楽しいものにするための試みを盛り込んだソフトウェアを用意している。そのひとつがプリウスPHVオーナーが会員となるクローズドSNS「トヨタフレンド」だ。

アメリカのクラウドコンピューティングファーム、セールスフォース・ドットコムと共同で開発されたこのシステムが提供するコミュニケーション形態は大きく分けて2つ。“ユーザー対ユーザー”と、“ユーザー対プリウスPHV”である。

●巨大SNSとクローズドSNSのあり方

ユーザー同士のコミュニケーションは、つぶやき機能を介して行う。プリウスPHVのホームページには、A:「毎日充電して燃費が67km/リットルだった!」 B:「○○さん、すごいですね!今月は僕も負けませんよ!」といった会話が例として掲載されている。

スマートフォンでトヨタフレンドのトップページを開くと、つぶやきのグループが表示される。6月12日時点では「ちょっと気になる愛車のつぶやき」「トヨタフレンド始めました」「目指せ!ECOトロフィー獲得」の3グループがあり、好きなテーマを選んでつぶやく。メンバーであれば、つぶやきに対して自由にレスをつけることができる。

「グループのなかで最も受け答えが活発なのは、2番目の“トヨタフレンド始めました”ですね。雑談の場なんですが、(Bluetoothを使用したカーテレマティクス)eConnectの接続がうまくいかないという質問など、とくに技術的な質問には、解決策や感想などのレスがたくさんつく傾向があるようです」2月からプリウスPHVをマイカーとして使っている本サイト編集長の三浦和也は、トヨタフレンドの使用感をこう語る。

トヨタフレンドがSNSとして活況を呈しているとは言い難い状況だ。会員数は数百名と、プリウスPHVオーナーの10人に1人程度が登録している勘定だが、アクティブユーザーは少数で、運営や関係者の書き込みがかなりの割合を占めている。

今日、インターネットコミュニケーションの主流はフェイスブックやツイッターなど、不特定多数の膨大なユーザーが一同に参加するタイプのツール。もちろん一部ではマイクロクローズドSNSが積極活用されているケースもある。しかし、プリウスPHVユーザーには、クルマの次世代ソリューション技術であるプラグインハイブリッドカーの情報を、巨大なSNSを用いて広く発信したいという志向があることは想像に難くない。オーナーだけが閲覧、書き込み可能というクローズドSNS活用の方向性には、再考の余地がありそうだ。

●必要なときに必要な解答が得られる利便性

一方、プリウスPHVを擬人化し、ユーザーとクルマがコミュニケーションを取る機能は、使いようによっては便利だという。充電情報、エコ情報、車両情報、自車情報、点検情報の5項目について、イベントが起こるとクルマが「EVモードでの走行が1000kmを超えました!」などとトヨタフレンド上でつぶやく。また、ユーザーが文章でクルマに対して質問することも可能だ。

「なかでも便利なのは、ユーザーマニュアルがデータベース化されていて、クルマの操作などを普通の会話で入力すると、マニュアルを引用して説明してくれる機能。たとえば『EVモードのときにエアコンをかけるとどうなる?』といった複雑な質問にもできる限り答えようとする。分厚いマニュアルの索引を見て四苦八苦する必要はなくなりました」(三浦)

質問可能なのは技術的なことばかりではない。今何km走ったの? 平均時速は? といったドライブ情報から、近くのレストランで美味しそうなお店は? 明日の天気は? といったタウン情報まで、幅広く訪ねることができる。

タウン情報は車載器のローカルディスクではなく、トヨタスマートセンターのデータベースにあるため、内容は日々アップデートされる。案内された店に行ってみたらもうなかった、などということは、普通のカーナビのドライブ情報に比べると格段に少ないだろう。

トヨタはSNSを使ってユーザー同士がつながる“クルマのソーシャル化”を、クルマ離れを阻止するための有効手段と見立てている。トヨタフレンドはその第一弾だが、まだ試行錯誤の段階。アプリもスマホ用はあるが、「iPadではアプリが走らないんです。他のオーナーに聞くと、ぜひ参加すべきというほどのものでもないということなので、あまり気にしていません」(プリウスPHVオーナーのフリーVTRカメラマン、山崎英紀さん)という状況。SNS活用意欲は、個々に温度差がある。今後、このSNSがどのように進化していくか、見モノである。

《井元康一郎》

井元康一郎

井元康一郎 鹿児島出身。大学卒業後、パイプオルガン奏者、高校教員、娯楽誌記者、経済誌記者などを経て独立。自動車、宇宙航空、電機、化学、映画、音楽、楽器などをフィールドに、取材・執筆活動を行っている。 著書に『プリウスvsインサイト』(小学館)、『レクサス─トヨタは世界的ブランドを打ち出せるのか』(プレジデント社)がある。

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